◯ファーストネーム
「では、貴方達の事、ファーストネームでお呼びしても良いですか?そして、出来れば僕のことも名前で呼んで欲しい。」
ハインラインは少し照れながらもそう言った。
***
ノイマンの誕生日の翌日、ノイマンとチャンドラは当初の予定通りコノエがマスターをしている喫茶店にハインラインを伴ってやってきた。
そこでハインラインに優しくゆっくり傷つけないように誕生日に冷蔵庫はやりすぎだと言う事を伝え、お祝い返しという風習が有るからと言ってノイマンとチャンドラからお返しを贈ることを納得させた。
そして何か欲しいものか、して欲しいことはあるかと聞けば、ファーストネームで呼びたいし呼ばれたい、との事だったのだ。
流石にノイマンもチャンドラも照れた。
そんな様子を微笑ましく見ているコノエにも気づいてさらに照れた。
3人ともアラサーなはずなのにしている事はまるで小学生の様である。
「え、俺“ダリダ”っ呼ばれるの?友達でそう呼ぶやついないぜ?」
「そうなのですか?」
「アルバートさんでも良いのか?」
「出来たら呼び捨てでお願いしたい」
そんな会話を交わし、ノイマンは心良く了承したが、チャンドラは少々渋った。
「俺のことは“チャンドラ”で良くないか?本当に誰も呼ばないぜ?あと、アルバートさんじゃ本当にだめ?」
「ダリダと呼びたいです。…さん付けは譲歩しても良いですが」
「別に良いじゃないか、なんでダメなんだ?」
「いや、…なんか恥ずかしいじゃん?」
チャンドラは、「でもなぁ」とか「うーん」とかまだ悩んでいる。でも、チャンドラはハインラインに甘いところがあるからきっと最後には了承するだろう。
「こんな事で本当に良いのか?」
ノイマンはハインラインに尋ねる。
「良いんです」
ハインラインはほくほくと嬉しそうにしていた。
本人嬉しそうならまぁ良いか、とノイマンは
思った。
***
◯3人がけの大きいソファー
「ノイマン、お前ボーナス出たよな?」
「…出たが?」
「これ、折半して買わないか?」
そう言ってチャンドラがノイマンに見せたタブレットには大きなソファーが映っていた。
「ソファー?」
「そう。サイズ的にも置けると思うし、カバーも洗えるんだけど、どう?」
タブレットを受け取り、ソファーのサイズを確認する。確かに置けそうであるし、カバーが洗えるというのも良い。
今あるソファーは小さめだし、草臥れてきている。買い替えるには良い機会かもしれない。
「買っても良いけど、お前いつも座椅子に座ってるのにソファーなんて必要なのか?」
そう聞けばチャンドラは少し言い淀む。
「…アルバートさん、いつもソファーで寝てる時、はみ出たり丸まったりしてるから大きいの買ったら喜ぶかな、と」
でも急にお前のためにソファー買ったなんて言ったら引かれるか!?
チャンドラはそんな事も心配しているが、ハインラインは十中八九喜ぶだろうし、値段に関してはノイマンもチャンドラも使うソファーだから問題はないだろう。
「良いんじゃないか?」
「そうかぁ?」
「気になるんだったら自分達のために買ったって言っとけば良いだろう」
「それもそうか」
買う事に決心がついたのか、チャンドラはソファーの色の話を始めた。それに相槌を打ちながら、
ハインラインには内緒でチャンドラが言っていた事を伝えておこうとノイマンは思った。