4人で山へ旅行に行く話現パロ設定
現代の日本みたいな所。まだまだ宇宙に行けない科学力だし戦争もしてないよ。
登場人物
アーノルド・ノイマン 29歳
大学で出会ったチャンドラと8年間ルームシェアしている。普通の会社員。アウトドア派
ダリダ・ローラハ・チャンドラII世 28歳
大学で出会ったノイマンと8年間ルームシェアしている。フリーランスのプログラマー。在宅勤務
インドア派
アルバート・ハインライン 30歳
行き倒れている所をノイマンに保護されチャンドラに餌付けされたため2人に懐いた。
凄く良いマンションを借りているのに週5でノイマンとチャンドラのアパートに通って食事をしている。食費は払っているし、コノエに言われたので手土産もちょくちょく持っていっている。
超大手企業の開発員。特許をいくつか持っている
来年の約束に心がはち切れそう
アレクセイ・コノエ 42歳
ノイマンとチャンドラのアパートの近くにある喫茶店のマスター。ノイマンとチャンドラは常連さん。アルバートとは親戚(弟の義弟)
旅行に誘われて凄く嬉しい
「夏に山の旅館に毎年2泊で行くんだけど、アルバートさんも行く?」
「でも何もない」
「たしか一昨年Wi-Fiが飛ぶ様になった」
「自然は豊かでとにかく涼しい」
「行きます」
その様な誘いを受け、なんの迷いもなくハインラインは同行を願い出た。どんな場所かとさらに詳しく話を聞いても、とにかく涼しい、避暑には最適、でも何もないとの情報しか2人からは得られなかった。しかし、改めてちゃんとその場所について3人で調べてみれば、コノエの好きな文豪が妻と共に逗留した場所だったし、標高が高く高山植物なども豊富で登山なども楽しめる場所だった。
「せっかくだからコノエさんも誘ってみる?」
「そうだな、ダメ元で誘ってみるか」
「アレクセイなら喜んで来ると思いますよ?」
後日、コノエに話を持っていくと、迷いなく行くと言ったので、ノイマンとチャンドラは少し困惑していた。ハインラインにしてみれば当然の反応で、コノエも2人ともっと親しくなりたいと言っていたので良いチャンスだと思ったのだろう。文豪の逗留地に興味があるのも嘘では無いのであろうが。
当初はレンタカーで行く予定であったが、コノエが車を所有しているのでその車で行く事になった。レンタカー代が浮いた事により、ノイマンとチャンドラから少し宿泊費は上がるが旅館の中に一棟貸しの離れがあるのでそこに宿泊してみたい、と提案があり、コノエとハインラインもそちらの方がゆっくり出来そうだからと了承した。
ノイマンはせっかくだからハイキングすると言って道具を揃えていたし、チャンドラは見たかった映画をタブレットにダウンロードしていた。
コノエも逗留していた文豪以外にも、その地にゆかりのある文豪が多くいたらしくその本などをホクホク顔で集めていた。
ハインラインは、仕事以外に 特に何かしたいというものが見当たらず、進めておきたい仕事をいくつかピックアップしておくに留まった。
当日、喫茶店の前で待っているとコノエが車でやってきた。行きは道に慣れているノイマンの運転で向かう事になっていたので、運転席にはノイマンが座る。助手席には車の持ち主であるコノエが座り、チャンドラとハインラインは後部座席に乗り込んだ。
「後ろの席とか気楽すぎて寝ちゃいそう」
「お前、助手席に乗ってても寝るじゃないか」
そんな事を言っていたチャンドラは高速道路に乗って早々にうとうとし始め、その後直ぐに寝てしまった。コノエとノイマンは自動車やこの先の道の話をしている。ハインラインは暇を持て余し(タブレットを見る行為は酔ってしまうからとコノエから止められている)窓の外の移り変わる景色をぼうっと眺めていた。
高速道路に乗って1時間、最寄りのインターチェンジで高速道路を降りる。最寄りとは言ってもここからさらに1時間半ほどかかるらしい。
30分ほどで市街地を抜ければ、直ぐに登り坂となった。途中、美味しいと評判の蕎麦屋に寄って昼食をとった。その蕎麦屋より上は完全に山道となる。つづら折りの急な山道を登り切ると、観光地ではあるがそこまで人がいない、穴場スポットとでもいうのだろうか、静かな湖畔が現れた。
「良いところじゃないか」
「そうなんですよ。静かで、あと何といっても涼しい」
コノエの褒め言葉にノイマンは楽しそうに答えた。車の外気温表示を見れば、確かに住んでいる場所に比べて10度ほど低かった。湖沿いの道を少し行けば、宿泊する旅館は直ぐに現れた。旅館はよく言えば趣のある、悪くいえば少し草臥れたそんな風貌であったが、どこか懐かしさを感じた。
ノイマンがチェックインを手際よく済ませると、本館の目と鼻の先にある離れに向かった。離れは本館とは打って変わって何故かカリフォルニア風の建物であった。
「10年前までここは喫茶店だったらしい」
「なるほど、それを改装したのですね」
ハインラインが外観に疑問を持った事に気づいたのか、ノイマンが外観の経緯を軽く説明する。
確かにそう言われれば納得の外観である。
各自荷物を運び込むと、チャンドラは早速タブレットを持ってベッドでゴロゴロしながら映画を見始め、ノイマンは湖畔を一周散歩してくると外出してしまった。自由である。
ハインラインもベッドの上に座り、仕事をしようと、持って来たノートパソコンを開く。するとそれを見ていたコノエから声がかかった。
「急ぎの仕事は持って来てないんだろう?」
「まぁ」
「じゃあ、のんびりしてみたらどうだい?」
せっかくの旅行なんだ、仕事以外の事もしてみると良い。とりあえず、本を貸そうか?
そう言ってコノエはハインラインに何冊かの本を手渡し、自分も一冊本を手に取ると、カバードポーチに向かい、そこに置いてあったリゾートチェアに陣取ってしまった。
ハインラインは少し迷ったが、コノエに渡された本を読む事にした。
「おい、車の中でも寝てただろ。夜寝れなくなるぞ」
「…まだギリ寝てない」
いつの間にか帰ってきたノイマンがチャンドラを起こす声を聞いて、本の世界から引き戻される。
時計を見ると、本を読み始めてから1時間半ほどたっていた。本を読む事に集中していたハインラインは気づかなかったがチャンドラは映画を見ながら寝そうになっていたらしい。
「…もう夕飯?」
「まだだ、でももう寝るなよ?」
そうノイマンに言われてチャンドラはベッドの上で起き上がり軽く伸びをした。
「散歩でも行ってきたらどうだ?目も覚めるだろ」
「んー、せっかくだし行ってこようかなぁ。あ、アルバートさんも行く?」
「…行きます」
ハインラインはほんの少し迷ったがチャンドラと散歩に行く事にした。本を閉じチャンドラと共に玄関へと向かう。カバードポーチにで本を読んでいたコノエが気持ちよさそうに寝ていたが、日が落ち出したので冷えるから、とこちらもノイマンに起こされていた。
「そんなに遠くまでいかないけど、小川がある方と神社がある方どっちが良い?」
「…小川でお願いします」
小川までは10分ほどで着いた。
小さな橋の下には魚やサワガニなどが居て、なんの魚か議論したが結局結論は出なかった。2人で暫く眺めた後、帰路に着く。
「どう?退屈じゃない?」
「まぁ、退屈と言えばそうかもしれませんが、それもまた楽しいです」
「そっか。なら良かった。何にもない所だからアルバートさんが楽しめるか、正直心配だったからさ」
楽しめてるなら本当に良かった。
チャンドラは嬉しそうに言う。
「夜は星が本当に綺麗だから皆んなで見よう」
「楽しみです」
旅館に戻れば直ぐに夕食の時間となり、本館の食堂に向かう。メニューは地元の名物だという湖で獲れた魚の天ぷらがメインの定食であった。
食べ終わり、離れに戻るところで、&焚き火セットのレンタルを見つけ、せっかくだからとアウトドアチェアと共に借りてみることになった。
離れの直ぐ前のスペースで焚き火を起こす。
夜の山は肌寒く、焚き火をしても暑さは感じられないどころか暖かさが心地よかった。
「マシュマロ持ってくれば良かった」
「焚き火出来るなんて知らなかったんだからしょうがないだろ?」
「そうだけどさぁ」
「…確かに焚き火にはマシュマロは必要だね」
「ですよね!」
甘いものが好きなコノエまでそんな事を言い出し、チャンドラも全力で同意している。
「アルバートは炙ったマシュマロ好きか?」
「…食べた事がありませんね」
「そうなのか?じゃあ来年は忘れずに持って来て一緒に食べよう。家のコンロでも出来るけどやっぱり外で食べると美味しいんだよな。気分の問題なんだろうけど」
「…らいねん」
「ん?来年まで待てないか?」
「いえ、そういうわけではなく」
“来年の約束”にハインラインは嬉しさで胸がはち切れそうになり、言葉が上手く出なかった。
そして赤くなっていくだろう顔を隠すように両手で顔を覆った。
挙動不審なハインラインをノイマンは不思議そうに見ていたが、放って置いて良いと判断したのだろう、焚き火を眺めはじめた。
数分後、落ち着きを取り戻したハインラインが両手を顔から外すと、ノイマンとチャンドラは何か盛り上がって話していて、コノエはそれを楽しそうに聞いていた。
星空は、チャンドラが言っていた通りとても綺麗で、その光景を生涯忘れる事は無いだろうとハインラインは思ったのだ。