十五夜の日の話いつもの様にノイマンとチャンドラが住んでいるアパートにやって来たハインラインは、つい先日受け取った合鍵を使ってドアを開けた。
玄関を抜ければすぐキッチンが見え、そこには夕飯時な事もあってチャンドラが立っていた。
お邪魔します、と声をかけながらチャンドラの元に近づくと、彼は何か白いものを丸めていた。
「団子ですか?」
「そう。今日十五夜だっていうから作ってみてる」
「なるほど」
昼間の番組で見たら食べたくなちゃってさ、そんな事を言いながらチャンドラは団子を丸める作業を続けている。
ハインラインは、満月は明日ではなかったかと思いながら、その様子をじっと見ていた。するとチャンドラから声がかかった。
「アルバートさんもやってみる?」
「良いんですか?」
「もちろん。というか手伝ってくれると助かる」
後から餡子やきな粉をかける予定らしく、ただ丸めるだけの作業である。しかし、団子の生地はまだ沢山あり、一人での作業では時間が掛かってしまう事が伺えた。ハインラインはチャンドラにやり方を教わり(ただ丸めるだけであった)ぎこちないながらも作業に加わった。
二人で黙々と作業を進めれば、食後のデザートにするのには多すぎる量の団子が丸められていた。
「こんなに食べれますかね?」
「…今日の夕飯は団子ってことで」
三人で夕飯として食べるのであれば、まぁなんとか食べ切れるだろうとハインラインは踏んだ。
茹でるのはノイマンが帰って来てからでという事になったので、チャンドラはあとは茹でるだけの大量の団子を端に避け、キッチンを軽く片付け始めた。元々洗い物は少なかった上、ハインラインも手伝ったので片付けはすぐに終わり、チャンドラとハインラインはソファーで一息付いた。
暫くすると、ガチャ、と鍵の開く音が聞こえ、すぐにノイマンがリビングに顔を出す。
その手にはスーパーの袋が握られていた。
「おかえりー」
「ただいま。今日十五夜だろ?月見団子買って来た」
「まじか!」
「え、まさかお前も買ったのか?」
「買ったというか作った」
「まじか」
ノイマンが袋から綺麗な三角錐状に盛り付けられたパックの月見団子を取り出す。
半額シールの貼られたそれは袋の中から3つ出て来た。ハインラインはキッチンにある団子を思い浮かべ、目の前にあるパックの月見団子を見る。
脳内シミュレートをするが、食べ切れるビジョンが見えなかった。
「…食べきれますかね?」
「うーん」
「朝も団子だな」
「アレクセイ呼びます?きっと喜びますよ」
その提案に少し驚いた様にしたチャンドラとノイマンは、一度顔を見合わせてからハインラインに問いかけた。
「コノエさん団子好き?」
「迷惑じゃないか?」
「甘いものは大体好きですし、迷惑なわけないじゃないですか」
そう言うとハインラインはスマホを取り出しコノエに電話をかける。
すぐに電話に出たコノエに事のあらましを伝えれば、すぐさま「行く」と答えたが、店仕舞いもあるので到着は一時間後で、先に食べ始めていて良いとの事だった。
それをチャンドラとノイマンに伝えると、明らかにホッとしていたので、ハインラインはコノエを呼んで正解だったなと思う。
今後の方針が決まったところで、チャンドラはキッチンでお湯を沸かし始め、ノイマンはシャワーを浴びに向かう。
お湯が沸き始めた音が聞こえ始めると、ハインラインも何か手伝おうとキッチンへ向かった。
おわり
※※※
チャンドラ
大きいサイズの団子粉を買ったうえにそれを全部使って団子を作った。いっぱい食べたかった。
ノイマン
半額だったし、自分は1パック月見団子を食べたかったので3パック買って来た。
ハインライン
一息ついてる時に十五夜を調べ、満月じゃない事が多い事を知る。団子を丸めるのは楽しかった。
コノエ
誘われて嬉しい。店仕舞いは高速で済ませた。