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    sumitikan

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    sumitikan

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    江戸時代の鱗滝さんの話。ピクブラにも公開しています。

    #鬼滅の刃
    DemonSlayer
    #鱗滝左近次
    rinTakitakiSakonji

    鱗滝左近次始末あれは確か慶応年間。一人の盗賊の後をつけていた時のことです。盗人宿を出た足のすばしっこい奴で、一目散に仲間の溜まりに向かっているように思えたもんですから、こいつはしめたもんだと思って、私と仲間で追いかけました。空っ風の吹く月夜でした。相手が後ろを見ないのが運が良かった。

    そこにふらっと、どこからか天狗面の武家が来て、そいつの前に立ったかと思うと、ぽんと生首が飛んだ。あっという間でした。私は怒った。畜生目。なにし晒して呉れてんだ、ってなもんですよ。

    首を切った武家は、刀に拭いを掛けてその場を後にしようとするから、私は声を掛けたんです。

    やいあんた。何てことしてくれやがる。そいつは江戸一番の大泥棒の手下だった。それの塒をこれから見つけてやろうって所だったんだ。

    天狗面の男は打裂羽織に小口の袴、手甲脚絆をつけていました。その佇まいから、どこかの家中のように見えました。私の荒っぽい口上を静かに聞いていましたが、なんていうか、どこ吹く風で。でもじっとそこにいましたね。しばらく、捕物の苦労話をして聞かせました。

    そのうちに仲間が駆けつけてくる。同心の旦那方も来る。人が四、五人も武州の片田舎の道に集まって、提灯の火で天狗面の男の面体を改めたんですが、うんでもすんでもない。

    どういう係でこの男の首を飛ばしたのか。

    そう聞けば、

    朝が来れば分かる。

    とだけ答えるんで、旦那方と一緒に首を捻りました。逃げる様子もありませんし、相手は武家です。なにか仔細があるのかも知れないとは薄々感じちゃおりました。その時の私の胸の中は、首を飛ばされた盗賊の行き先を突き止めたかった。それだけでした。

    何を聞いても朝が来ればとそればっかりで、名を聞いたら素直に答える。鱗滝左近次と。主家の名を尋ねたら、産屋敷家であると言いました。大身旗本の一つですよ。その御家中であることをここで言うなら、鱗滝も覚悟して人の首を切ったのだと納得できました。

    それで朝を待つことになりました。私達はめいめい、仏の側にいたり、仲間と話したりして、手持ち無沙汰なものでした。中に一人疑り深いのがいて、はい。私です。その鱗滝に仔細を聞きました。

    御家中のどちらに。
    鬼殺組に。
    そこではどのようなことを。
    江戸中の鬼の話を集めている。

    そんなことを言う。江戸ったって広いもんだ。鬼ったってうちの嬶がまるで鬼だとか、そんな話がごろごろしてる。鱗滝の言っていることが怪しく思えました。

    一体、産屋敷家に鬼殺組なんてものがあるのかどうか、こちとら全く知らねえもんですから、疑おうと思ったら幾らでも疑えるんです。

    こいつはただの人殺しじゃねえのか。いつまでも天狗面をつけているのが怪しい。一切の弁解をしねえ。鱗滝には、あの盗賊を殺していい理由があるか、あの盗賊を殺して鱗滝も死ぬか、二つに一つだ。そんなことを考えているうちに、じきに夜が明けて参りましてね。逃げないように見張ってました。

    朝に事件があったのが仏の方でした。はい。朝日が出た時、鱗滝が大股に近付いて、仏に掛けていた蓆を開くと、そこには仏の着ていた服だけがあって、仏がいねぇ。あっと全員驚きました。

    これは一体どういうわけか鱗滝に聞くと、鬼殺組の用で出ているときに、なりたての鬼に出くわしたから、その首を切った所だと話してくれました。その鬼が、私の追いかけていた盗賊だと言うんです。

    鬼と言われても馴染みがない。けれど仏が消えたのは事実。これは全く怪異なことです。鱗滝の腰のものを拝見させて貰った同心の旦那が言うには、別に何という事もない刀であったと言います。

    ご用の筋は通ったか。

    そう聞かれて、誰も何も言えねえんですよ。仏が消えちまったから。同心の旦那の一人が、後で産屋敷家に話を聞きに行くかもしれないと話しまして、それで鱗滝は江戸の方に足を向けました。逃げるような足取りじゃありませんでした。

    明けてから、私達で盗賊の出てきた宿を改めますと、皆殺しにされているんです。酷いもんでした。これをやったのが誰かと言うと、あの消えちまった盗賊の仏だろうということになりました。全部一人でやったにしちゃ手際が良くて、二十二、三人、血が天井に飛んでいて。食ったような跡があるのにぞっとしました。確かに鬼が跳梁したような。ええ、なりたての鬼と呼ばれた、あの仏の。

    仲間内で鱗滝さんに訳を聞くべきだと話が持ち上がったんですが、同心の旦那が気味悪がって嫌がったので、私が産屋敷家の裏口から尋ねて行きましてね。鱗滝さんとちょっと話を出来たんです。

    鬼殺組の話をして、ええ。あの時は江戸と言ったけれど、産屋敷家は関東一円の鬼退治をしているそうで。あんな惨劇を起こす奴があちこちにいて、その鬼は産屋敷家の仇なんだそうですよ。詳しくは聞きませんが、そういう話でした。

    同心の旦那方にもその話をしたら、薄気味悪いと言いながら、了解しなすったようでした。与力の中に、鬼殺組のことを知っている者がおりました。もう随分古くから、産屋敷家は鬼殺組を使っているという話でした。

    その産屋敷様ですが、世が改まった今もまだ鬼退治をしていると聞いています。明治が大正になった今でもですよ。ええ。鱗滝さんのお宅も知っています。東京を引き払いなさいまして、今は狭霧山と言う所に。

    そうですか。あなたも鬼をご存じですか。なるほど、鬼退治の、つまりは産屋敷家の仇討ちに加わりたい。それは鬼殺隊に入りたいという事ですか?あなたにはなにか訳があるようですね。いいですよ。鱗滝さんには私から手紙を出しておきましょう。あなたは今からでも狭霧山に行くといいでしょう。

    お急ぎなさいますか。そうですか。日輪刀が手に入ると良いですね。なかなか難しい試練だと聞いています。

    それでは、あなたもお達者で。
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