季節と忍岳のはなし「なんかスイカ食べたい」と帰り道に向日がぽつりと言ったので、ああ、さっき青果店の前を通った時に切りたての匂いがしたからだなと合点がいく。一緒に歩いていたら、誰でも想像がつくようなことではあったが、本来完璧には知りえない向日の心の中が少し覗けたような気になるので、そういうのを含めて、忍足は向日の思ったことをすぐ口に出しがちな性格が結構好きだった。自分が熟考してから発言をするタイプなのもあり、少し羨ましさすらある。こう、向日が自分とは全然違うタイプの人間なのだと改めて思い知らされる時、忍足は目を細めてそれをゆっくりと咀嚼した。