Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    アンリ

    @MObFmjvQrBUWJ08

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    アンリ

    ☆quiet follow

    昼スペ作業のおかげでここまで出来ました!

    人間曦×人魚澄④その数日後。姑蘇に帰ってから藍曦臣は改めて魚の治療法を調べてみた。
    だが、やはり魚も基本は自然治癒で大丈夫らしい。ならばなぜ江澄の傷はちっとも治らないのだろうか。


    その疑問は、彼が姑蘇に来た日に判明した。


    藍曦臣が御剣をして、碧霊湖の上を旋回しているとどこからかキュルルルゥゥと声が聞こえてくる。
    この声は江澄だ。彼はもう着いたのかと思いながらゆっくりと湖畔を目指して御剣する。
    藍曦臣が剣から降りると、江澄が水面から顔を出した。
    「それが御剣の術というものか…。面白いな…」
    「お久しぶりです。江澄、傷の具合はどうですか?」
    朔月を鞘に収めると江澄は名残惜しそうにこちらに顔を向ける。
    ほら、と言いながら見せてくれた鰭は破れたり欠けたりしてボロボロになっていた。
    やはり大分無理をしたのだろうと察せられる。これでは泳ぐことも難しいだろう。
    自分が言い出したから…と考えていると顔に水が飛ばされる。
    「大方自分のせいだと言ってるんだろう?この鰭は元々剥がさなければならなかったんだ。ここまで泳いでこなくてもな。鰭は再生するのに一度完全に剥がなくてはならないんだ。だから、剥ぐ前に泳ぎ収めができて俺は良かったとさえ思っている」
    「……」
    江澄の考えは尊重したい。だが、ボロボロでも美しいと分かる鰭が無くなるのは惜しい。
    「む…。俺の新しい鰭は楽しみじゃないと言うのか?」
    「えっ!そんなことないです!!楽しみです!」
    「ならいい。で、肝心の治療法とかはわかったのか?」
    「その事なんですが、江澄の上半身は人間と同じ治療法でも傷が治ってきています。下半身の傷はより貴方に近い魚の治療法を試した方がいいだろうと思い調べてみたところやはり自然治癒ということでした。しかし、ほぼ効果がないことから他に原因があるのだと思います」
    そうか。と気落ちした様子だった江澄が耳元の鰭をピクッと動かし顔をあげる。
    「江澄?」
    「ちょっと待っててくれ」
    そう言って湖に潜ってしまう。どうしたのだろうかと思っていると江澄が水中にいるが故に若干聞き取りずらいが、何か声を発したようだ。
    そして、しばらくすると藍曦臣の耳に何かが水の中を高速で動き、こちらに向かう音が聞こえる。警戒して朔月を構える藍曦臣に顔を出した江澄が大丈夫だと告げる。
    どんどん大きくなってくる音はやがてザパァ!!と激しい水飛沫をあげて中から何か江澄に飛び込んだ。
    「じゃんちょ…」
    「江澄!!!無事でよかったー!!!!」
    水が落ち着き見えてきたのは光を吸い込むような漆黒の鱗を持つ人魚の青年に抱きつかれた江澄だった。
    そして、顔をあげた藍曦臣の目に写ったのは弟の藍忘機がこちらに向かって御剣して来る姿だ。
    「江澄、とそこの君、人が来るから早く隠れた方が…」
    「え?あっ藍湛だ!!おーい!こっちこっち!!」
    「忘機を知ってるのかい?」
    「えぇ。俺の恩人ですよ!ところで貴方は藍湛のお兄さんで合ってますか?」
    「そうだけれど君は?」
    「俺は魏嬰、字は無羨!江澄の義兄です!」
    同時に藍忘機が到着し、剣から降りる。そして、手本のように美しい拱手をした。
    「兄上。彼は私が保護しました」
    「そうだったのだね。彼はここで発見してくれたのかい?」
    「はい」
    弟と話しながら江澄の方を見ると彼は魏無羨と戯れていた。
    「江澄、にしてもビックリしたぞ?今までどこにいたんだよ!」
    「そういうお前こそどこほっつき泳いでたんだ。俺はずっと蓮花湖にいたぞ?」
    「はぁ!?じゃあなんでこんなとこいんだよ!!てか大丈夫だったのか!?蓮花湖にはまだアイツがいるんだぞ!?」
    「はぁ?アイツってなんだよ。てか俺の質問にも答えろ」
    「俺はあの後ここまで流されたんだよ。今は藍湛のおかげで怪我は治ったんだけどさ。お前は怪我は大丈夫か?」
    「俺は、下半身の傷が一向に治らないから療養に来たんだ。藍曦臣が治療法を試しながらするには近くにいた方がいいと言うからな。というか姉上は?父上と母上も一緒じゃないのか?」
    「…江澄、もしかして覚えてないのか?あと、傷を見せてみろ」
    ザパリと水から出た尾鰭を手に取ってじっと見つめる魏無羨の顔がみるみる険しくなってくる。
    もしかしたら同じ人魚である彼にしか分からない何かがあるのかもしれない。そっと見守る藍曦臣をよそに彼が江澄に告げた言葉は衝撃を与えた。
    「お前、呪われてるぞ」


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👍💕🙏👍👍🙏🙏🙏👏👏🙏👍🙏😢
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    takami180

    PROGRESSたぶん長編になる曦澄その7
    兄上、簫を吹く
     孫家の宗主は字を明直といった。彼は妻を迎えず、弟夫婦から養子を取っていた。その養子が泡を食ったように店の奥へと駆け込んできたのは夕刻だった。
    「だんなさま! 仙師さまが!」
     十歳に満たない子だが、賢い子である。彼は養子がこれほど慌てているのを見たことがなかった。
    「仙師様?」
    「江家の宗主様がいらしてます!」
     明直は川に水妖が出ていることを知っていた。そして、江家宗主が町のために尽力しているのも知っていた。
     彼はすぐに表へ出た。
     江家宗主は髪を振り乱し、水で濡れた姿で待っていた。
    「孫明直殿だな」
    「はい、そうですが、私になにか」
    「説明している時間が惜しい。来てくれ。あなたの協力が必要だ」
    「はあ」
    「あなたに危害は加えさせないと約束する。川の水妖があなたを待っている」
     訳が分からぬままに貸し馬の背に乗せられて、明直は町の外へと向かう。江家宗主の駆る馬は荒々しかったが、外壁を出ると何故か速度が落ちた。
    「あの場で説明できずに申し訳ない。あなたは十年前の嵐の日に死んだ芸妓を覚えているか」
     忘れるはずがない。彼女は恋人だった。
     父親の許しを得られず、朱花とは一緒に町を出る 2613

    takami180

    DONE曦澄ワンドロワンライ
    第三回お題「夢」

    本編終了後、付き合っている曦澄。
    現実での大事なものと、本当は大切にしたいもの。

    ムーンライト宗主→ごめんねすなおじゃなくて→夢、という連想結果が何故こんなことに。
     その夜は金氏と合同の夜狩だった。そこで江宗主は大怪我を負った。
     邪祟から師弟を庇い、腹に穴をあけられた。
     江澄自身、これはまずいと感じた。血を吐き、体から力が抜ける。
    「宗主!」
     倒れたところを誰かに抱え起こされた。
     すかさず金凌が矢を射る。放たれた矢は狙い違わず邪祟を貫いた。
    「叔父上!」
    「金凌っ……」
     声にできたのはそれだけだった。怪我をせず、健やかに、生きてほしい。お前の生きていくこれからは、どうか穏やかな世界であるように。
     江澄は手を伸ばそうとしてかなわなかった。
     まぶたの裏に、白い装束の影が映る。心残りがあるとすれば、あの人にもう会えないことか。
    「誰か止血を!」
     怒号と悲鳴が遠ざかり、江澄の意識は闇に沈んだ。


     まばゆい光の中で、白い背中が振り返る。
    「江澄……」
     ああ、あなたは会いにきてくれたのか。
     江澄は笑った。これは現実ではない。彼は姑蘇にいるはずだ。
     体を起こそうとして、まったく力が入らなかった。夢の中くらい、自由にさせてくれてもいいのに。
    「気がつきましたか」
    「藍渙……」
     ほとんど呼んだことのない名を口に出す。これが最後の会話にな 1653

    takami180

    PROGRESS恋綴3-3(旧続々長編曦澄)
    うーさぎうさぎ(羨哥哥が出ます)
     藍曦臣の長い指が、江澄の頬をなでる。
     顎をくすぐり、のどぼとけをたどり、鎖骨の間をとおって、袷に指がかかる。
    「やめてくれ!」
     しかし、藍曦臣の手は止まらなかった。
     無常にも袷は開かれ、傷跡があらわになる。
     温氏につけられた傷は凹凸をつくり、肌をゆがめていた。
    「見るな!」
     江澄は両手で胸を隠したが、遅かった。
     藍曦臣の目が見開かれて、柳眉がひそめられる。
     汚らしい、と聞こえた気がした。

     江澄は飛び起きた。
     跳ねのけたらしい掛布が足元で丸まっている。
     ここは宿だ。姑蘇の宿である。
     江澄は清談会に出席するための旅の途中であった。
    (またか)
     長大なため息がもれた。
     同じような夢を見るのは何度目になるだろう。今日はもう雲深不知処に到着するというのに。
     胸に手を当てる。
     傷痕は変わらずにここにある。
     最後に藍曦臣と会った後、江澄はあらゆる傷薬を取り寄せた。古傷を消すような軟膏を求めて、文献をあさった。
     しかしながら、都合のいい薬種は見つからず、今に至る。
    「宗主、お目覚めですか」
     扉の向こう側から師弟の声がした。少々寝坊をしたか。
    「起きた。すぐに行く 2468