Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    アンリ

    @MObFmjvQrBUWJ08

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    アンリ

    ☆quiet follow

    久々に!あんまり進んではないですが…

    #曦澄

    人間曦×人魚澄⑧「なあ藍曦臣、そろそろ霊力も回復してきたから一旦蓮花湖に戻ろうと思ってるんだ」
    あれから三日後、江澄は話を切り出した。確かに様子を見るに全快と言ってもいいだろう。蓮花湖までの道中も問題なさそうに思える。
    「そうかい。いつ出発するのかはもう決めた?」
    「明日にでもいこうかと」
    「では、明日は空けておくよ」
     その翌日、二人は蓮花湖へ向けて出発した。




    「なんだこれは…。一体どうなってる…!?」
    蓮花湖に着くなり思わず江澄が漏らした呻きも仕方ない。湖というだけあって流れの殆どないはずの底には巨大な水流ができ、大量の水鬼で溢れかえっていた。
    「もしかしたら水行淵かも…」
    「水行淵だと!?ここ数十年蓮花湖で水死者など数えても十人もいないぞ!!それに水鬼が出ようものならすぐさま人魚によって討伐されていた!!」
    「ここに暮らす人魚達がいなくなり、水死者が増加した?にしては水鬼の数がいささか多すぎる気もする…」
    そうこうしているうちに水鬼がこちらに気付いた。二人は身構えたが水鬼達は二人を無視し湖の中心へと向かっていく。すると、そこから水柱が立ち何かが現れた。水飛沫が落ち着き、晴れた視界に映ったのは一言で言えば『水』だった。しかし、巨大な鬼のような形をし、その体内には水行淵のような激しい水流が渦を巻き、無数の水鬼が泳ぎ回っている。
    「アイツだ!アイツが仲間を…!」
    「江澄、落ち着いて。あの邪崇が元凶でいいんだね?」
    「あぁ。気を付けろ。道中で言った通りヤツは水鬼や水流を操ってくる」
    邪崇はこちらに顔を向けると手を水につけた。すると、体内から水鬼が泳ぎ出て、こちらに向かって来た。
    「曦臣!水鬼は俺が何とかする!貴方はこれ以上水鬼が増えないようにできるか!?」
    「分かったよ、江澄も気をつけて」
    藍曦臣が言うと同時に江澄は右手を掲げた。
    「三毒!!」
    短く名前を呼ぶと、江澄の手に水が集まってくる。不定形なそれは次第に形を持ち、剣となった。三毒とは恐らく、彼の剣の銘なのだろう。元は水の筈なのにそれは金属質の輝きを放っていた。
    江澄は剣を手にし、矢のように泳ぎだした。水鬼とすれ違う刹那、剣は体を貫き、貫いた箇所から発生した水の刃がそのまま体をバラバラに引き裂く。
    流れるように剣は形を変え、江澄と同じくらいの長さを持つ槍となる。長大なそれをものともせずに横に一閃し、水鬼達を二つに切り裂いていく。細かく旋回しながら剣へと再び姿を変え、水鬼の群れの隙間を縫うように次々と撃破していく様はまるで、舞でも見ているかの様だった。
    思わず見惚れながらも藍曦臣は裂氷を用いた破障音で邪崇と湖面の接続を絶つ。そのまま術で中の水鬼の邪気を払い、邪崇の弱体化を謀るもそう上手くいく訳が無く、邪崇が動きだした。邪崇の形が崩れ、水行淵の様になるとそのまま湖の中へ潜ってしまった。暫しの沈黙の後、湖の中心に巨大な渦が発生する。そして、その中心にあの邪崇が待ち構えているのが見えた。もし、吸い込まれたらいくら水に生きる人魚とはいえ、命が危ないだろう。江澄が水鬼と共に流され始めているのを見て、そちらへと向かう。
    「江澄!こっちへ!」
    水鬼に邪魔されないギリギリまで高度を下げる。チラリと確認した江澄は一度潜り、流れに乗って勢いよく水から跳ね上がった。落ちてくるその身を布越しに抱きとめる。
    「一度撤退しよう。少しの間耐えていて欲しい」
    「別に呼吸自体は陸でもできる。だから、安全圏に退避することを優先してくれればいい」
    激しい水音をあげながら渦を巻く水流の中心、邪崇がいる辺から呪詛が放たれる。朔月を転身させ、簡易的に封印を施した。長期間持つことは無いが一時しのぎには十分な筈。恐らく、あの呪詛が江澄の傷の回復を妨げ、記憶を一時的にうばったのだろう。我ら修士とは異なるものの術を使う為の霊力を持つ彼があそこまで衰弱したのだ。一般の人々が触れたら命が危うい。封じられている内に解決策を練らなければならない。
    だがその前に、江澄を水に戻さなければならない。いくら本人が平気とは言っても心配なことは心配だ。藍曦臣は朔月に霊力を込め、グッと速度をあげた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏🙏👍👍👍👍👍👍💖💖👍👍👍❤❤❤❤❤👍❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    takami180

    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

    takami180

    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

    recommended works

    takami180

    DOODLE曦澄/訪来、曦臣閉関明け、蓮花塢にて
    攻め強ガチャのお題より
    「いつか自分の方から「いいよ」と言わないといけない澄 こういう時だけ強引にしない曦がいっそ恨めしい」
     蓮の花が次第に閉じていくのを眺めつつ、江澄は盛大にため息を吐いた。眉間のしわは深く、口はむっつりと引き結ばれている。
     湖に張り出した涼亭には他に誰もいない。
     卓子に用意された冷茶だけが、江澄のしかめ面を映している。
     今日は蓮花塢に藍曦臣がやってくる。藍宗主としてではなく、江澄の親しい友として遊びに来るという。
     江澄は額に手の甲を当てて、背もたれにのけぞった。
     親しい友、であればどんなによかったか。
     前回、彼と会ったのは春の雲深不知処。
     見事な藤房の下で、藍曦臣は江澄に言った。
    「あなたをお慕いしております」
     思い出せば顔が熱くなる。
    「いつか、あなたがいいと思う日が来たら、私の道侶になってください」
     しかも、一足飛びに道侶と来た。どういう思考をしているのか、江澄には理解できない。そして、自分はどうしてその場で「永遠にそんな日は来ない」と断言できなかったのか。
     いつか、とはいつだろう。まさか、今日とは言わないだろうが。
     江澄は湖の向こうに視線を投げた。
     行き交う舟影が見える。
     藍曦臣はいったいどういう顔をして現れる気なのだろう。友というからには友の顔をしてくれ 1659

    takami180

    PROGRESSたぶん長編になる曦澄その7
    兄上、簫を吹く
     孫家の宗主は字を明直といった。彼は妻を迎えず、弟夫婦から養子を取っていた。その養子が泡を食ったように店の奥へと駆け込んできたのは夕刻だった。
    「だんなさま! 仙師さまが!」
     十歳に満たない子だが、賢い子である。彼は養子がこれほど慌てているのを見たことがなかった。
    「仙師様?」
    「江家の宗主様がいらしてます!」
     明直は川に水妖が出ていることを知っていた。そして、江家宗主が町のために尽力しているのも知っていた。
     彼はすぐに表へ出た。
     江家宗主は髪を振り乱し、水で濡れた姿で待っていた。
    「孫明直殿だな」
    「はい、そうですが、私になにか」
    「説明している時間が惜しい。来てくれ。あなたの協力が必要だ」
    「はあ」
    「あなたに危害は加えさせないと約束する。川の水妖があなたを待っている」
     訳が分からぬままに貸し馬の背に乗せられて、明直は町の外へと向かう。江家宗主の駆る馬は荒々しかったが、外壁を出ると何故か速度が落ちた。
    「あの場で説明できずに申し訳ない。あなたは十年前の嵐の日に死んだ芸妓を覚えているか」
     忘れるはずがない。彼女は恋人だった。
     父親の許しを得られず、朱花とは一緒に町を出る 2613

    sgm

    DONE江澄誕としてTwitterに上げていた江澄誕生日おめでとう話
    江澄誕 2021 藍曦臣が蓮花塢の岬に降り立つと蓮花塢周辺は祭りかのように賑わっていた。
     常日頃から活気に溢れ賑やかな場所ではあるのだが、至るところに店が出され山査子飴に飴細工。湯気を出す饅頭に甘豆羹。藍曦臣が食べたことのない物を売っている店もある。一体何の祝い事なのだろうか。今日訪ねると連絡を入れた時、江澄からは特に何も言われていない。忙しくないと良いのだけれどと思いながら周囲の景色を楽しみつつゆっくりと蓮花塢へと歩みを進めた。
     商人の一団が江氏への売り込みのためにか荷台に荷を積んだ馬車を曳いて大門を通っていくのが目に見えた。商人以外にも住民たちだろうか。何やら荷物を手に抱えて大門を通っていく。さらに藍曦臣の横を両手に花や果物を抱えた子どもたちと野菜が入った籠を口に銜えた犬が通りすぎて、やはり大門へと吸い込まれていった。きゃっきゃと随分楽しげな様子だ。駆けていく子どもたちの背を見送りながら彼らに続いてゆっくりと藍曦臣も大門を通った。大門の先、修練場には長蛇の列が出来ていた。先ほどの子どもたちもその列の最後尾に並んでいる。皆が皆、手に何かを抱えていた。列の先には江澄の姿が見える。江澄に手にしていたものを渡し一言二言会話をしてその場を立ち去るようだった。江澄は受け取った物を後ろに控えた門弟に渡し、門弟の隣に立っている主管は何やら帳簿を付けていた。
    5198