「わかった。もういい」
そう言った後輩の表情は、いつも以上に凪いでいて、酷く言えば何も浮かべていなかった。ただ、その瞳だけは悠然と心情を語っているように冷たくなっており、彼が激怒していることを容易に伝えた。
冷たい声に、張り付いた無表情。そして冷たさすらも通り越し、永久凍土すらも想像できてしまう瞳。
それは九校戦中日のとある一日の始まりの出来事。
最初にその電話を取ったのは、第一高校の生徒会長を務める七草であった。
朝食を取る場所に備え付けられている固定電話機は、基本的にホテルの管理者から、その場に居る者へ何か連絡がある場合のみ使用される。例えば、宿泊者宛の荷物が届いた時。例えば、夕食について何か相談事がある時。
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