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    Enki_Aquarius

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    ##イクリプス

    #5 司波深雪。
     司波達也の妹で、国立魔法大学付属第一高校に在籍する女子生徒。成績優秀で、魔法実技をトップの成績で収め、一学年の首席に君臨する女王。
     入学当時から、二科に所属する兄との険悪さは騒がれていたが、どうにもここの所その関係性がおかしい事に周りが気が付き始めた。
     学校での成績を言うならば、確実に妬む側は達也の方であり、深雪ではない。けれども、彼女が時折達也に向けて見せる視線は、妬み、嫉妬そのものであった。成績もよく、美貌も持つ彼女が、どうして平凡な兄に向けて妬むのか。
     不思議に思わない生徒はいないだろう。
     変化が訪れたと言えば、八月に行われた魔法科高校親善魔法競技大会。その懇親会だ。

    「久しぶりだね、達也君」
     生徒会室にて本を読んでいた達也に声を掛けたのは、此処に呼び出した張本人‐渡辺摩利であった。
    「えぇ、お久しぶりですね」
     達也の所属している風紀委員の元委員長。すでに引退してしまったため、渡辺と委員会で会う事はなくなってしまったが、それでも交流が途絶えたわけではない。ただ本当に偶然に、会う機会がなかっただけであった。
    「それで、今日は何の御用ですか?」
     達也も論文コンペの仕事を引き受けてしまったために、あまり自由な時間を持ち合わせてはいない。渡辺もそれを承知の上で呼び出した、ということはよほどの案件なのだろう。先を急ぐのは悪いと思いつつも、達也は本題に切り出した。
    「実は、論文コンペの警備の相談なんだ」
    「警備?もしかして、風紀委員会が警備を担うのですか?」
     達也ははて、そんな仕事が年間予定に組み込まれていただろうか、と首を傾げるが、夏の件もある。人手が足りていないから駆り出されることになった、ということも考えられなくはなかった。
     が、達也の予想は大きく外れた。
    「いいや、警備と言っても会場の警備ではないよ」
     そっちは魔法協会がプロを手配する。渡辺のその言葉に、達也は少し苦笑いを浮かべた。
     達也が論文コンペに出場する、という話はすでにイクリプス・コミュニティの面々には伝わっている話だ。警備を募集するともなれば、名乗り上げるかもしれない者たちが数名ほど、達也の頭には浮かんだ。
     余計なことをしなければいいが、とは思わざるを得なかった。
    「相談したいのは、チームメンバーの身辺警護と、プレゼン用資料と機器の見張り番だ」
     達也はそこでようやく合点した。
    論文コンペには貴重な資料が使われる。そのせいで、産学スパイの標的になることがあるのだろう。
    達也は先日自宅のホームサーバーがクラックされそうになったことを思い出したが、ここで口にすることはしなかった。おそらく置き引きやひったくりが限度だろう。
    「当校でも毎年、護衛を付けている。護衛のメンバーは風紀委員会と部活連執行部から選ばれているが・・・具体的に誰が誰をガードするかについては、当人の意思が尊重される」
     聞いた話によれば、市原には服部と桐原。五十里には千代田が。
    「問題は、俺をどうするか・・・ってことですか」
     達也はそう言ってクスリと笑った。
     渡辺はその笑みに顔を顰めたが、すぐに切り替えた。
    「必要ない、と君は言うだろうがね・・・生徒会から一人、名乗り出たんで紹介しようかと思って」
     今度は達也が顔を顰める番であった。
    「ご不満ですか?」
     扉が開き、鈴の音のような声が響く。すれ違いざまに聞くような柔らかなものではなく、冷たい、海の底のような声色。
     達也は久方ぶりに正面から見た妹に、どういう表情を作ればいいのか、わからなくなった。
    「不満・・・はないな。けど護衛は不要だ」
    「送り迎えがあるからですか?」
    「それもそうだし、何より君も護衛対象だ」
     達也の言葉に、今度は深雪が顔を顰めた。渡辺もおそらく、彼女の表情がここまで歪むのは初めて見るだろう。
     決して踏み込みはしないだろうが、二人の間に何かしらの確執があることには、もう気が付いているだろう。確執、というより大きな溝。兄妹という血の繋がりをもってしてでも繋ぎ直すことのできない、大きな何か。
     達也は肩を竦め、
    「好きにすればいいさ」
     それだけ言って生徒会室を出て行った。
     端末を開けば、新規のメッセージが入っていた。達也が依頼したのは、魔法関係の秘密情報売買に手を出している組織について。
     返答は、
    「先月末から今月の始めにかけて、横浜、横須賀で相次いで密入国事件」
     報道されていないところを見ると、相当厄介な連中が絡んでいると見てもいいだろう。さて、相手は誰だろうか。
    「まったく・・・面倒な」
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