頭よわよわオタク話エンサイ
それはエンテルとサイトが付き合っていることを指す名である。cp名とも呼ぶ。
他にも数多くのカップリングが存在し、人とは違う、しかし人とよく似た愛と純情の日々が紡がれている。
打って変わってこちら。黄色くチャラそうな見た目をしているのがボンテ。
いつも木や屋根の上から多くのcpを観察、監視し、彼ら彼女らの関係に危険が及ばないようにしている厄介オタクである。
そしてこちらはゲクラ。暗い色のパーカーを着ており、また姿勢はいいとは言えない暗めの印象。
美形の物たちやどちゃクソてぇてぇカップリングに目がない重度のオタクであり、度々こうして彼ら彼女らの動向を探っているのである。
この2人の出会いは必然とも呼べただろう。
同じ"カップリングオタク"である2人は、どの世界線でも必ず出会い、そして、その濃い話に花を咲かせるのだろう。それがどこだったとしても。
そして今まさに、この厄介オタクである2人が同じ現場に居合わせているのである…!
目の前にはエンサイという花畑が拡がっている。2人のみの空間で、2人のみで進む時間。
まさにこれこそ天国である。はたまた、もしかしたらここは立ち入ることの出来ない神聖な土地なのかもしれない。
ともかく、エンサイオタクである2人はこの光景を邪魔しないよう、遠くから見守っていた。
ここでエンサイについて語ると10万文字を超越する可能性があるため割愛させて頂くが、とにかく彼らは尊いのだ。2人でただ手を繋ぎ歩いているだけで尊い。なんでそんなに尊いのかを洗いざらい吐き出してもらいたいくらいには尊い。
そんな尊すぎて世界が平和になるような光景が続く中、2人は正気でいられるわけもなく、完全に頭が蕩けきっていた。
「あ〜〜〜〜〜本日もてぇてぇなぁ〜〜〜〜」などと考えていると、どちらかは分からないが物音を立ててしまったのだ。いやしかし、こんなにも注意を払っているオタク共が音を立てるとは思えない。もしかしたら室内に入り込んでいたネズミなどの生物かもしれない。
まあ置いといて、2人はその音に気づいた瞬間、もう1人のオタク(仲間)を見つけてしまったのだ。
2人は数秒間見つめあった後、ボンテが地上へと降り、2人で固い握手をした。
これは腐女子特有のアイコンタクトが行われた可能性が高い。
時にオタクは常人を超え、普通ではない何かを起こすことがある。今回がその事例だろう。というかこの2人人間じゃないし。
アイコンタクトではきっと「え???もしかしてエンサイ教の信者ですか???」「あ、はい〜〜!!!入信させてもらってます〜〜!!!」「あっそうなんですか〜〜??!?!私もなんです〜!!!!」「え〜〜〜!!!運命的〜〜!!!」などという会話が繰り広げられたのだろう。あくまでこれは妄想に過ぎない。キャラ崩壊しとるやんけって言われてもだって脳内なんてみんなこんなもんやん。
ともかく、2人の出会いは必然で、そしてスピーディーであった。
一瞬で友人を超え、戦友となった2人はとりあえずエンサイを最後まで堪能することにした。エンサイは摂取するもの。食事といっしょ。
さて、エンテルとサイトが去っていき、オタクの2人のみが残された空間。
最初こそテンションがおかしくなり戦友にまでなった2人だが、そういえばお互い顔を合わせるのも初めてである。
「あー…………初めまして。私はボンテ。その…いきなり思いっきり手握ってごめんよ。」
「いやいやこちらこそすみません!!その、同じような人に出会うのが初めてでテンションが上がっちゃって……」
「あはは、私もそう。…そうだ、せっかくだしどこかで話そうよ。あの二人の良さとの出会いとか、どこが好きとか話したいし。」
「え?!」
「あぁ……嫌だったかな。」
「とんでもないです!私でよければ語り合いましょう!」
「ありがとう。じゃあどこか2人で話せる場所……ぶらつきながら探そうか。ついでに他のカップルも。」
「はい!」
こうして2人は急激に距離を詰め、本当の戦友になったのだった。
この先、永遠に彼らや彼女らの平穏が保たれる訳では無い。しかし、ここの物たちが幸せになり、愛が止まることは無いならば、この2人はそれでいいのだろう。その止まらない未来に、自分の姿がなくとも。
「……ゲクラちゃん、標的を発見した。」
「了解です。今日はとっておきを持ってきましたよ。」
「ふむ……上出来だね。それじゃあ私は身ぐるみを剥がすから、ちょうどいい部屋に置いておいて。」
「任せてください。…これで合法的に女装して貰えますね!!あと着替えの時もドキドキできて一石二鳥!!!」
「やったね!!!」
……頭が弱いなぁ。