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    Rrr_et_c

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    福お姉さんの過去の話です。

    双寿福になるまで。私はじい様が好きでした。
    いつも海を見てお酒を飲んでいたような気がします。新聞を読んでいることもありました。
    話しかけるとこちらを少し見て、すぐに海へと視線を戻し、話はきちんと聞いてくれるじい様が、私は大好きでした。

    じい様はもうお年ですが、まだまだ漁師として働いているらしいのです。
    正確には、若い方の指導をなさっているのです。
    だからお船に乗って数日間帰ってこないこともあります。親のいない私には、じい様のいない数日間はとても寂しいです。
    ばあ様は日々自治会長として忙しく、なかなかお話を聞いてくれません。でも、ご飯は一緒に食べてくれます。

    あの日、じい様が何日も帰ってこなかった日、珍しくばあ様がお家に籠っていました。
    私は察してしまいました。
    その日から、ばあ様がお家にいる日が多くなりました。嬉しかったですが、やっぱり悲しかったです。

    ばあ様ももうお年でしたから、心労も相まって、数ヵ月後にはじい様の元へいってしまいました。
    私は1人になりました。

    私の親のご兄弟という方に拾われました。
    私は苗字が変わりました。
    双寿、と書いて、そうじゅ、と読みます。
    私の新しい親になった方は会社を経営しているらしいのですが、何も教えてくれません。

    私が10を過ぎた頃、新しく恋に落ちました。
    同じクラスの、眼鏡をかけた女の子です。
    発表は苦手で、本を読むことは大好きで、たまに自由帳に絵を描いているあの子。
    あの子に少しでも近づきたくて、あの子が読んでいた本を読んでみたり、絵を描いてみたりしました。
    でも夏休みが終わって登校したら、あの子はお引越しをしていました。
    私の2度目の恋も引き離されてしまいました。

    お義父さまは最近忙しいらしく、なかなか家に帰ってきません。ですが、お義母さまとはよく電話をしているようです。
    たまに電話を代わってくださり、私も最近あったことを話していました。

    私が中学生になり、もうすぐ高校生になるという頃、気弱な後輩が部活に入ってきました。
    後輩は男でしたが、かなり心が弱く、キツイ言葉になるとビクビクしていました。何かあったのか聞くと、彼はイジメにあっていると。
    大好きになった彼のためにイジメを解決した頃には、私はもう高校受験を終わらせていました。

    お義母さまはお義父さまの出張へとついて行き、広い家にひとりぼっちで過ごすことになりました。
    2ヶ月ほどで帰ってくるそうです。
    お世話になった方々ですので、高校を卒業したらお義父さまの会社で働くことに決めました。

    高校生になり難しい勉強にも慣れてきた頃、塾の中学生コースにいた彼女のことをすきになりました。
    彼女は男が好きなようなので、僕の趣味も男らしいものに変えてみました。彼女は振り向きませんでした。
    彼女は家が反対方向だったので、心配になり途中までついて行きました。いつの間にか彼女の帰り道が変わっていました。
    僕は気づきました。
    僕が今まで好きになった人は僕の元から離れていきました。
    時に僕から離れざるを得ない時もありました。
    どうして僕は恋愛ごとでは幸せになれないのでしょうか。離れるべき運命なのでしょうか。
    そんなのってあんまりだ!

    僕は彼女を家に招きました。
    お義父さまとお義母さまには迷惑をかけられないので、短期バイトを複数頑張ってマンションを借りました。
    彼女は嫌がりましたが、これから僕のことを見てもらえればいいやと思いました。
    十分に食事を与え、十分に愛し、十分に勉強も教えました。やりたいと言ったことはほとんどさせてあげました。
    外に出したらまた失うと思ったので、お願いだから外に出ないでと懇願しました。
    彼女は最初はたくさん頷いてくれていました。
    でも…
    彼女は嫌々従っていただけだったのです。

    僕は捕まりました。
    この顔、この名前では生きにくくなりました。
    真っ当な生き方は出来なくなりました。
    常に顔を隠すように生き、できるだけ外に出ないよう生きていました。
    数週間引きこもった後、お義父さまに土下座しました。
    散々お世話になったのに迷惑を重ねてしまい申し訳ございません。
    僕はこの家を出ていきます。

    お義父さまは僕に仕事をくれました。
    人のためになりなさいと。
    僕に名前をくれました。
    遺された方々の福になりなさいと。
    貴方がお爺さんを亡くした時、どこに行ったか分からず悲しかったでしょう。悔しかったでしょう。
    忘れては行けませんと。
    だから僕は、遺された人に真実を伝える仕事に就きました。
    生きていない人に触れるのはそこまで怖くありませんでした。
    もう帰ってこないと伝えた時に殴られた痛みを忘れることはありませんでした。
    どうしてか、あの時私も殴りたかったのです。

    それでも恋心は止みませんでした。
    恋と救いたい気持ちを混合してしまいました。
    可哀想なあの子を見た時に、救わなきゃ、あの子は犯罪者である僕しか救えないと、思いました。
    思ってしまいました。
    大好きです。僕が救います。
    今度こそは間違えないように、手順を踏んで、法に触れないように。

    お義母さまが手伝ってくださり、僕はあの子を手に入れることが出来ました。
    今度はできるだけ外に出します。
    でも、やっぱり少し怖いのです。
    あの子は僕と同じ気持ちになってくれるでしょうか。あの子は僕から離れるでしょうか。
    離れて欲しくありません。
    せめて、僕の1部をあの子に刻ませてください。
    どうかゆるしてください。
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