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    Odyun_TT5

    らくがきぶちこみ

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    鈍くてあんまり格好よくない🤕
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    頭は回る方な🔮
    の傭占を書こうとしていました。超絶途中。
    小説難し〜……書きたいところにたどり着かないうえにいっぱい書いたと思ったのに2000文字も行ってない……文字書きさんはすごい……
    3/17 更新
    書いても書いても終わらないが?!

    タイトル未定 もしかして、私はナワーブから好意を向けられているのでは?


     荘園と呼ばれるこの場所では、生死を賭した凄惨なゲームが日夜開かれており、集められた様々な罪と欲望を抱えた者たちが各々の願いのためにその中に身を投じている。
     その参加者のうちのひとりであるイライ・クラークがそんな考えを抱くようになったのは、なにも非現実的な日々に疲弊した末に気が違ったから、という訳ではない。

     荘園に訪れる以前は、イライは占い師として生計を立ててきた。町人の失せ物探しや恋占い、人生相談から、時には上流階級の者を相手に大きな商談の道行きを示してやることもあった。それらと渡り歩いて来られたのは、ひとえに持ち前の天眼なる力と、洞察力のおかげだったと言えるだろう。
     イライは、緊張感を伴う対人間でのやり取りを通して、人の感情の機微への敏さと、頭の回転の速さは、十分に培われてきたという自負があった。

     だからこそ、気付いてしまった。同じく参加者のうちのひとりである、傭兵――ナワーブ・サベダーは――

    「おはよう、ウィル。 トレイシー。 ……よう、イライ。 おはよう、よく眠れたか?」

    「あ、ああ。 おはよう、ナワーブ。 朝までぐっすりだったよ」

     荘園の館に暮らす者たちでひしめき合う朝の食堂で、皆と交わす挨拶の中に、いつも己にのみ増やされる労りの言葉。

    「そうか。 それなら良かった。 今朝の飯はお前の好きな豆のスープと白パンだぞ」

    「それは楽しみだな。 取りに行ってくるよ」

     共に食事を摂るのだと疑わず、微かに喜色を乗せた声色の持ち主は、隣の空いた席に伏せがちの三白眼を向けた。 それは私のために空けていたのだと言外に指し示しているようで。
     厨房に朝食を取りに行くために彼へと向けた背中がむずむずとこそばゆい。今日も間違いなく己にのみ向けられた優しさに、それが自惚れではないのだと、幾度となく浮かべてきた実感がこみ上げる。

     ――ナワーブ・サベダーは、己を好ましく思っている、と!


     天眼を用いずともわかりやすい彼の態度に、推測が当たっているであろう確信から気分が上がる。厨房内に他に人が居ないのをいいことに、抑えていた表情筋を緩ませながら上機嫌にトレーと皿を手にする。

    (やっぱりナワーブ、私のことが好きなんだな)


    ◇◇◇


     寡黙で無表情だが、周囲によく気を配る人。それがナワーブという男に抱いた第一印象である。
     元傭兵というだけあって、小柄ながら筋肉で覆われた体と巧みな体捌きはとても頼もしく、また、その内にある面倒見の良さに、試合でも居館での生活でも世話になっている者は多い。イライもその中のひとりで、古株である彼には荘園に来たばかりの頃から今に至るまで、何かと気にかけて貰うことが多かった。

     共に過ごすことに慣れるにつれ、その優しさと気配りが他の仲間に向けられるものよりも、己に与えられるものが少しずつ多くなっていっていると気付くのに時間はかからなかった。何が彼の琴線に触れたかはわからないが、多くを語ることのない彼から好意を向けられるのは、警戒心の強い動物が懐いてきているようで嬉しかった。

     ただ問題があるとすれば、ナワーブは、自分が私に向けている好意を、私に悟られていないと思っていることだった。第一印象とは裏腹に気を許した相手にはよく回るらしい口と、意外によく動く表情は、私に柔らかいものばかりを渡すようになっている。
     職業柄、人の表情を読むことに長けており、また当事者である私が気付くのは当然であったが、心理学に通じているメスマーさんや察しの良いノートンくん、一部の女性陣から含みのある眼差しを向けられた時には流石に恥ずかしかった。もちろんナワーブはそのような視線を受けているとは思ってもいないようで、私への不器用なアプローチはいつでもどこでも惜しみなく行われている。気配に敏感な歴戦の傭兵様は一体どこへ行ったのやら、そんな姿からは片鱗も見つからない。

     しかしそんな羞恥があっても、彼からいっとう気にかけられている現状を、悪い気はしないと受け入れているほどには、気を許してしまっていた。


    (ナワーブ、私のことが好きなの、わかりやすいよなあ……)

     そんなことを取り留めもなく考えていても睡魔はいっこうに訪れてはくれず、イライは暗い部屋の中でいつもより重く感じる頭をゆるく振った。
     試合で天眼を酷使した日は、反動による心労のせいかどうにも寝つきが悪くなる。今日のように時計の針がてっぺんを指し、皆が寝静まるような頃になっても胸がざわついて眠れないことはざらにあった。支給されている薬を使って無理にでも眠ってしまえばいいのだが、夢見の悪くなるそれを好んで使う者は多くない。
     明日も試合がある。だらだらと思考を巡らせるよりも、意識を落として心身を休ませてしまいたい。だが眠ろうと意識すればするほどぴりぴりと感覚が過敏になっていくようで、シーツの冷たささえも気に障って目が冴えていく。

    (……厨房に行こうかな)

     乾いた喉を潤せば落ち着くだろうから、少し歩いて気を紛らわせたいから……と、厨房に向かう理由を頭に並び立てながら、ベッドに預けていた背中を起こした。本当はそれ以外にも、淡い期待を抱いていることには気づかないふりをして、廊下に繋がる扉へと手をかけた。


     消灯時間を過ぎて明かりの落とされた館内は夜闇に染まってひどく暗く、人気のないことを示す静寂が不安をかき立てる。窓の外の木々はやけに黒々と夜の色を濃く映し、目を楽しませてくれる日中の瑞々しさは無い。時折耳に届く風が葉を擦るがさがさとした嫌な音が、規則を破り夜間に出歩く己を責めているようだった。
     落ち着かない天眼の力が見せる幻影がこちらを闇へと引きずり込まんと手を伸ばしてくるのを、ランプを持っていない空いた片手で服に皺を深く刻みながら目を背けて歩を進める。


     足音を響かせないように曲がった廊下の先に、薄く光の漏れる扉を見つけて、知らずのうちに詰めていた息を安堵から深く吐き出した。軽くなった足取りで歩調を早めて、食堂の大きな木製の扉を通り過ぎ、隙間から明かりの滲む厨房の扉の前に立つ。ようやく辿り着いたその扉を押し開くと、思い描いていた通りの姿があった。

    「イライか。 こんな時間に……また眠れないのか?」

     彼が持ってきたのであろうランプと、天井から垂れ下がるいくつかの電球しか灯されていない薄暗いとも言える明かりは、暖かい橙色でその場を包んでいた。その中に立ち、こちらを向いたアースグリーンの瞳は、今は照明の色を溶かし込んでなめらかな蜂蜜を思わせる色をしている。穏やかな低音は時間を考えてか幾分潜めたものであったが、こちらを拒絶する空気はなかったので肩の力を抜いた。

    「ナワーブ。 ……うん、どうにも眠れなくてね。 水を飲みに来たんだ」

    「天眼の使いすぎで無理をしたんだろう。 今日も試合で随分と活躍したらしいな。 ウィルから聞いたぞ」

     体ごとこちらを向き直して腕を組んだ彼の目には、咎めるような口調とは異なり、わかりやすく心配の色が浮かんでいた。彼なりに無理をするなと言いたいのであろうが、自分にも参加者としての矜持がある。

    「自分のすべきことをしただけさ」

     口角を擡げて淡く微笑みを作って見せながらこう言えば、試合での立ち回りの重要性をよくわかっている目の前の男が何も言い返せなくなることはわかっていた。
     軽く肩をすくめてから背を向けたナワーブはそれ以上の追求はして来なかった。彼なりの線引きらしいそれがありがたい。私も、なにも叱られたくてここに来たわけでは無いのだから。

     扉の前でそわそわと立ち尽くしていると、それに気づいたらしい彼が吐息だけで笑うのが聞こえた。コンロに火を点けて指先で火力を調整しながら、顔は中身の入った鍋に向けたままこちらに声がかけられる。

    「ホットミルク、飲んでいくだろう」

    「ああ! 頂いていくよ」

     待ってましたと言わんばかりに一も二もなく答えた声があまりにも弾んでいたからか、彼は今度こそ声を上げて笑った。


     出来るまで待ってな、と促されるままに大人しく椅子に腰掛けながら、調理台を向いて作業をしている彼の背中を眺める。実のところ、こうして深夜の厨房で彼から温かい飲み物の相伴に与るのは、これが初めてのことではない。
     ふつふつと温まり始めたミルクの甘い香りが、広くはない厨房内に漂い始めた。


     最初の時も、今と同じように天眼の酷使のせいで眠れず、途方に暮れて冷たい水でも飲もうと厨房に足を運んだのだった。その時は思いもよらぬ先客に驚き、踵を返そうとしたところを引き止められた。「お前も、眠れないのか」と。
     香りが残ると朝に見つかってお咎めを受けるから、と彼が作っていたのは、よく飲んでいるところを見かける香りの強いお茶ではなく、鍋の中で甘い湯気を立てるホットミルクだった。よく眠れるぞ、と私の遠慮を押し切って渡された、ひとり分だったものを分けたせいでカップの半分しかないそれは、そんな量だったのにひどく体を温め、想像以上の快眠を私にもたらした。
     翌朝、食堂で出会った彼に耳打ちするように「ありがとう、おかげでよく眠れたよ」と伝えたのが、おそらく切っ掛けとなったのだろう。以降、深夜に厨房へ赴くとナワーブとよく顔を合わせるようになった。いつ行っても居るわけでは無かったが、とりわけ私が試合で無茶をしてふらふらと厨房へ足を向ける日には、ここで鍋を片手に立っているのだった。
     「俺も眠れないから、ついでだよ」と言った顔には確かに疲弊の色が残り、目の下には隈があったから、それは嘘ではないのだろう。ただそれだけでは無いことは、何度か繰り返した夜の中の、はじめの方で気づいてしまっていた。

     今日だってそうだ。言わずもがな、最初から用意されていたひとり分にしては多い鍋の中のミルク。紛れ込ませているつもりなのだろうが、いくつか並べられているマグカップの中に、取り出しやすいようにこちらに持ち手が向けられているものがふたつ。今私が腰掛けている、簡素な厨房の中にあるのはそぐわない座面の柔らかな食堂の椅子は、わざわざ運んでこなければここには無い。

    (私のために、用意されている)

     今までのこの機会すべてが、とまで自惚れはしないが、明らかに自分を労る意図の感じられるそれらに嬉しさはあれど嫌な気持ちは無い。今日も、居るかもしれないと、彼の作ったホットミルクが飲めるのではないかと、幾ばくかの期待が無かったかと言うと嘘になる。

    (だって、本当によく眠れるんだ)

     自室では気づかないふりをしていた期待と今更ながら向き合う。好意に甘えている自覚はあるが、心地良い睡眠をもたらしてくれるものに縋ってしまうのは仕方のないことだろう。眠れない夜をひとり、蹲って時が過ぎるのを待つのは辛い。彼も、同じ思いでミルクを温めているのだろうか――

    「ほら、出来たぞ」

     どうやら随分とぼんやり考え込んでしまっていたようで、突如として目の前に差し出されたマグカップに反応できず軽く仰け反ってしまった。そんな様子を訝しげに見下ろす彼へ誤魔化すように笑ってから、湯気の立ち上る白い陶器に手を伸ばした。

    「ありがとう。 頂くよ」
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