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    yukisoba_Kikaku

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    yukisoba_Kikaku

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    ウスベニアオイの見守り「また徒競走最下位やぁ……
    もうイヤやわあ……」

    白いバツ印の絆創膏が小刻みに
    振動をしながら目の前にいる友人に
    目に涙を溜めながら訴えかけていた。

    種族柄運動をするのを不得意としている為
    その不得意さに則っているカカオは
    体育の授業で行われた徒競走で
    見事に最下位の肩書きを
    背負うことになってしまった。

    「確かに一番最後にはなっちまった
    でもオメーは諦めなかった
    それだけでもカッコイイぜカカオ!!」
    「ううぅ……シドぉ………
    おおきになぁ……………」

    大きな目にさらに潤いを増して
    声を震わせながらお礼の言葉を
    述べたカカオにタルーシドは
    得意げな笑顔を見せてから
    くるりと背を向けて

    「………ちょっと
    オメーの分の1着も
    取ってくるわ」

    そう言い切ってから
    徒競走のスタートラインに立って
    胸を張ってスタンバイを始めた。

    同時に走るクラスメートは
    いかにも大地を走るのが
    得意そうな種族が揃っている。

    「シド────!!
    頑張れ────!!!」

    応援したい気持ちを
    懸命に声に乗せたカカオに
    タルーシドは薄黄色の手で
    握りこぶしを作って
    聞こえた気持ちに応えるように
    微笑みを見せた。

    「位置について────
    よ──い……スタート!!」

    グラウンド中に響く教師の掛け声に
    合わせてタルーシドは己の右足に
    全力のギアを入れた。

    他のクラスメートも負けじと
    それぞれの脚に気合いを入れて
    グラウンドに引かれた白線の間を
    風の如くなぞっていった。

    土煙が後方へと舞う中で
    勝負は拮抗し、残り10m──

    「シド────!!!
    いっけえぇ────!!!」

    グラウンドと空が震えるくらい
    響き渡るカカオの声が
    橙色の鉢巻をより一層なびかせて
    風の間を掻き分けるように
    黄色い髪が白線を一番に
    踏み抜いていった。

    「っしゃあ!!
    見たかオメーらァ!!!」

    両手に拳を構えて得意げな表情を
    他のクラスメートに見せる
    タルーシドを遠巻きに目に映して
    カカオは自分のことのように
    その場でぴょんぴょんと
    飛び跳ねていた。

    「ちくしょお……!!
    おれが"女子"に負ける
    なんてえ…………!!!」
    「あァん!?
    もっかい言ってみろや!!
    氷漬けにしてやる!!!」
    「ヒッ…………!!」
    「あとなあ……
    オメーら………
    さっき俺の友人ダチのこと
    笑ってただろ…………
    二度と俺の友人ダチのことを
    笑うんじゃねェぞ!!!」

    クラスメート達と火花を
    ひとしきり散らした後にタルーシドは
    カカオの元へと駆け寄った。

    「オメーの分の1着
    取ってきたぜ カカオ」

    激流に揉まれて丸くなった石の如く
    柔らかく温かい笑顔を浮かべて
    目線を合わせるべく体勢を少し屈めた
    タルーシドはカカオの額を撫でながら
    約束を果たした言葉をかけた。

    「シド……!!
    カッコよかったで……!!
    やっぱシドはすごいな!!」
    「まあな!
    でも半分はオメーの声援が
    あったから気合いが
    入ったってのもあるな!!」
    「──……!!
    シド…………!!」
    「お!見てみろカカオ!!
    愛のヤツも1着になったぜ!!」

    カカオがタルーシドの呼びかけで
    視線の先を変えると桃色の肌をした
    クラスメートの愛が同じように
    グループの先頭を走りきっていた。

    着順の嬉しさを噛み締めながら
    溢れんばかりの笑顔を見せて
    愛はタルーシドとカカオの
    元へと駆けつけた。

    「カカオ──!!シド──!!
    僕も1着取れたよ!!」
    「さすが愛だぜ!!
    野球部なだけあるな!!」
    「やっぱ二人ともすごいなあ……
    それに比べて俺は………っ!!」

    もどかしそうに自分の非力さを
    痛感しているカカオの様子を
    すべて汲み取っていたタルーシドは
    その黒色の身体を
    自身の黄色い頭の上に乗せて
    包み込むような声色で

    「誰にだって得意不得意ってのは
    あるからよ!!
    あまり気にすんなカカオ!!」
    「シド……!!」

    最後のグループが走り終えて
    教師の整列の号令で並んだ
    1-Aの生徒達は各々の感情を抑えて
    平常心を保った表情で教師の言葉に
    聴力を研ぎ澄ましていた。

    授業終了のチャイムが校庭に鳴り響き
    体育は4時間目の授業だったので
    生徒達は嬉々として教室や食堂に
    走り去っていった。

    タルーシドは足早に着替えてから
    自身が早朝に作った弁当を持って
    食堂のお決まりの席を陣取った。

    「シドお待たせ──!
    席取っておいてくれて
    ありがとう!!」
    「おう!」
    「俺もう腹ペコペコやわあ……」
    「僕もだよ〜〜」

    3人はそれぞれ持ってきた弁当を
    目の前の机に広げて
    「いただきます!!」と元気よく
    昼食の合図を口にした。

    「毎日見てて思ってたけど
    シドのお弁当って
    本当にカラフルで
    美味しそうだよね!」
    「まあな!!
    バトルの基本は身体作りから
    始まるからな!!
    バランス良く栄養を
    摂らねぇとだ!!」
    「朝早よぅから作ってるん
    やったっけ?」
    「朝5時くらいに起きて作ってるぜ」
    「5時!?僕はまだ寝てるなあ……
    シドはすごいや……」
    「大したことはねェよ
    日課だからな」
    「そっか!
    そういえば……
    カカオの今日のお弁当は
    いつもと違う感じだけど
    カカオも頑張ったの?」
    「これな!
    兄ちゃんのお嫁さん……
    いや!俺の姉ちゃんが
    今日から毎日弁当を作って
    くれるようになってん!」
    「そういや家族がいねェと
    思ってたら兄貴が
    いたんだっけな?」
    「せやで!!
    ほんで一緒に暮らすことに
    なったんやで!!」
    「そうなんだ!!
    賑やかで楽しそうだね!!」
    「うん!!
    俺……今めっちゃ
    幸せな気分やわ!!
    ありがとうな!!
    愛!!シド!!」
    「どうした急に?
    嬉しいこと言ってくれる
    じゃねェか!!」
    「僕のほうこそ
    ありがとう!カカオ!
    君達と友達になれて良かったよ!!」
    「あっ
    それは俺の台詞だ愛!!」
    「え〜〜〜なんでさ〜〜」
    「ふふっ……
    賑やかで心地ええわあ……」

    昼休みの時間が緩やかに温かく
    結ばれた絆達を見守っていた────
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