兄の本分 感情を人にわかりやすく表に出すのは苦手だ。
意外と顔に出やすいとは言われるものの、同時に感情が読み取りづらいとも言われる。
“脹相は、どっちかっつーと表情よりも声の方がわかりやすい”とは、弟の言葉だ。
感情が素直に顔に出る割に、それを読み取るのはコツがいることが多いらしい。いまだ、人というものに身体も心も馴染みきっていないせいだろうか。
人になりきることは、俺にはまだ難しかった。
それでも、そこから俺を理解しようとしてくれる存在がいることは、この上ない喜びである。それが、弟であるのならば尚更のこと。
最初は探り探りの他人行儀だったのから、段々とこちらを気遣って頼ってもらえるようになった。少し素っ気ないような、いっそ邪険にするような態度でさえも、心を許してくれたようでむしろ嬉しい。
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