サジンが体調崩した話酷い胃痛と嘔吐で倒れて、気がついたらベースキャンプにいた。
下の方からではなく、上の方からこれでもかというほどの大放出だった。
その症状に襲われたのは狩猟を始めてからわずか20分たらずの出来事だった。
自分とは思えないほど醜い呻き声とえずきと共に大量の吐瀉物をそこら辺にぶちまけながら、胃の痛みと吐いても吐いても治らない吐き気にのたうち回る事30分。頭装備を外す余裕があったのが何よりも幸いな事だ。
もし外してなかったら今頃自分が吐いた物で溺れ死んでいたかもしれない。それほどにこの嘔吐は大量だった。
暑さと脱水でいつの間にか意識を失った彼をベースキャンプまで運んだのは相棒のガルクだった。
いつも回復を担当してくれる方のオトモであるアイルーは、ほぼ初めて見る人間の激しい嘔吐に恐れ慄きすっかり腰を抜かしてしまっていた。
そうして今。ギリギリ生きているハンター、サジンはまだみぞおちに残った軽い痛みと吐き気を完全に治すべく自室療養をしているのだった。
薬師曰く、もう少し脱水が激しければ命が危なかったということだった。
原因は結局わからず、薬師も首を傾げるばかりだった。
俺もそろそろ歳かねえ、と腹をさすりながらため息をついた彼。
その様子をめざとく見つけたアイルーが
心配そうに語りかけた。
「旦那さん、大丈夫ニャ……? まだお腹痛いのニャ?」
彼は「大丈夫だ。そんな心配しなくてもいいから」と笑い、ふわふわしたその頭をそっと撫でた。
「……あの時助けられなくてごめんなさいニャ」
アイルーはしょんぼりと目線を下に落とすと、何十回目かの謝罪を口にした。
彼はあの時助けられなかったのを、未だに悔やんでいるようだ。
回復クラスだというのに苦しんでいる主人を助けられなかったなんて、オトモとして失格だと帰ってきた夜に大泣きしてからずっと謝り続けていた。
こいつは優しいから、無駄に責任感じてるんだよな。多分俺の自己管理がなってなかったからだっていうのに。
サジンは「いいって。謝らなくても」と言いながら、泣きじゃくるアイルーの頭を撫で続けていた。