Neoスキッドが連れてこられたのは、殺風景な部屋だった。
壁も床も白一色。ドアはあっても窓はない。
どう見てもただの部屋とは言えない。
唯一ある家具といえば、金属製の椅子だけだった。
「こんな所に連れてきてどうする気だよ。アイツのことなら一切言うつもりはねえからな」
隠れ家で安全に過ごしているはずの相方を思い浮かべながら男に言う。
男は何も言わないまま彼の背中を蹴った。
スキッドは突然の加虐に受け身すら取れずに前のめりに倒れ込んだ。
彼が文句を言う前に男は彼の手を掴むと、乱暴な所作で椅子に座らせる。
「勘違いするな。我々はあのガキなどどうでもいい」
椅子に取り付けられたベルトで、彼の胴体をしっかりと固定する。
「我々はデータさえとれたらそれでいい。お前は適性がありそうだったから連れてきた。それだけだ」
そう言いながら部屋を出た。
「お、おい!! データとか適性とか訳わからねえ事言ってんじゃねえ!! ここから出せ!! おい!!」
喚き続けるスキッド。
だが不意に彼の言葉が途切れる。顔をしかめ、俯く。
頭が痛い。眉間の辺りや側頭部が締め付けられるようだ。
状況から鑑みて何か妙なことが行われている事に違いはない。
「今行っているのはお前の脳に特定の電波を与え、思考を書き換える実験だ。この頭痛は思考の書き換えにお前の脳が抗っている証拠だ」
男の声が上から降ってくる。
スキッドにその言葉の意味を考えている余裕はなかった。
頭痛はいつしか、締め付けるようなものから殴られているような激痛に変わっていた。
「がぁあああっ!! あっ、頭、割れ、ぎぃぁぁぁっ!! 死ぬううっ!!」
これほどの痛みを味わったことはない。
痛みを紛らわそうと顔を掻きむしり、頭を押さえるが外部から与えられる事による内側の痛みはどうすることもできない。
歯がガチガチと鳴り、焦点が合わない瞳が上瞼に吸い込まれていく。
ガクン、と急に彼の頭が垂れる。
時折痙攣する以外には全く動かなくなった彼。
その姿を別室からモニターで観察していた男は呟く。
「口ほどにもない。ただのガキだったな」