瑛一はとてもかっこいい。
それは彼の振る舞いや考え方にも言えることだけれど、単純に顔がとてもいい。見ていて少しも飽きないどころかますます虜になってしまうくらいだ。
カメラの前やステージの上でエンジェルに向ける表情はとびきりにかっこいい。それは瑛一が最高の自分を魅せるようにしているからだろう。あんな表情を向けられるカメラマンはよく自我を保っていられるなとたまに尊敬してしまう。
けれど、瑛一は何もしていないときもかっこいい。
こうして寮のリビングでソファに座ってコーヒー片手に休憩している時ですらかっこいい。瑛一が視線を向けるのは次のドラマの原作だという小説。瑛一の役は医者だと聞いているが、病院のシーンではマスクをつけるらしい。かっこいい瑛一の顔を隠してしまうなんてもったいない。自分でも認めているチャームポイントの口元のほくろも、柔らかくてふっくらとした唇も隠れてしまうなんて。たしかに、アメジストのように輝く瞳や、それを縁取る長い睫毛だけでも瑛一は十分にかっこよくはあるけれど。
そんなことを考えていると、瑛一は手にした文庫本を閉じてしまう。まだ最後まで読み切った様ではなかったから、休憩でも挟むのだろうか。
文庫本をテーブルに置いた瑛一の視線がふとこちらを見る。やっぱり綺麗な顔だ。瑛一が俺を見ているだけで幸せな気分になってしまう。そんな瑛一の表情がふと緩む。柔らかな雰囲気に思わず心臓のあたりがきゅうとした。
「綺羅」
「……何だ?」
瑛一は少し離れていた俺の隣に腰かける。休憩のお供におしゃべりでもするのだろうか。
「そんな熱い視線を贈られると照れてしまうな」
肩を引き寄せられ、こめかみのあたりに優しいキス。
「…………俺、見てた?」
「ああ。柄にもなく緊張してしまうところだった」
いや、見ていたな。
瑛一の顔が良くてずっと見ていた。遠慮もせずにじっと。
「……ごめん」
「いや。気にするな」
今更申し訳なく思い始めて、素直に謝罪をした。すると、瑛一はなんてことない様に笑って許してくれる。
「しかし……そうだな。俺にもお前を見つめさせてくれ」
申し訳なさに俯いていた視界に瑛一が映りこむ。その綺麗な顔に何故か急に羞恥心が煽られてしまった。
堪らず両手で顔を覆ってしまう。
「だめだ……はずかしい」
「なんだ。お前だけズルいぞ」
笑いを含んだ瑛一の声が聞こえたかと思うと、俺の顔を覆っている手の甲にふにふにと唇が押し付けられた。