ころころ「……楽しみ?」
「ああ!」
珍しく落ち着きのない瑛一がなんだか可愛らしくて緩む頬を隠しながら問えば、元気な声で即答。本当に楽しみにしているようで面白くもなってきた。
明日は4/11。一十木さんの誕生日。一十木さんは瑛一のお気に入りだから、彼の誕生日を迎えるのが本当に楽しみのようだ。日付が変わったらすぐにメッセージを送るのだと意気込んで、随分と前からメッセージの準備をしていた。
「去年は新曲の配信とSNSの更新があっただろう? 今年は何が来ると思う?」
「今年は……エイプリルフールが、動画の企画だったから……動画の投稿、とか」
すると、瑛一は「それは最高なサプライズだな」と目を丸くする。
「音也はトップバッターだからな。何が来るかわからないのが最高なんだ」
「……去年の、更新は……驚いた」
シャイニング事務所に所属するアイドルのうち、一十木さんが新年度で最初の誕生日だからその年度の誕生日企画が発表されるのも一十木さんの誕生日。こんな企画が他のアイドルの誕生日にも計画されてるのかとSNSもHE★VENS寮も大賑わいだった。
「……なあ……綺羅……」
「うん?」
「メッセージをしたためたはいいが、もしも、0時に何かしらの更新があったとして、それに触れたメッセージのほうが良くないか? ……いや、それだと0時にメッセージを送れないな」
顎に手を添え、真剣に悩む瑛一。何事にもまっすぐで全力な姿は俺の大好きな瑛一だ。たまに全力過ぎて心配にはなるけれど、そこは俺が支えていくからいいんだ。
「俺なら、0時に……送る……」
「やはりそうか? 仕方がないからSNSやコンテンツへのメッセージは都度送るか……」
「都度は……だめ……まとめて……」
ただでさえたくさんの言葉を送ってくれる瑛一が、SNSの投稿のたびにメッセージを送ったりしたら流石の一十木さんも怒ってしまうかもしれない。一十木さんのためにもそれだけは阻止しなければ。
「む……またお前は俺を束縛するつもりか?」
面白くなさそうに少しだけ唇が歪められる。けれど、その瞳にはこの状況を楽しんでいる輝きがのっていた。
去年も一十木さんがSNSを更新するたびにメッセージを送ろうとしたり電話をかけたりしようとするのをメンバー全員で止めたのだ。
「……本当は……瑛一には、俺だけを見ててほしいから」
大袈裟なほどに拗ねたように呟けば、瑛一の長い腕に包まれる。
「すまない。お前が一番だということは信じてほしい」
ぎゅうぎゅうと抱きしめる腕の中で、一十木さんへのメッセージは諦めてくれるかと尋ねれば、むぅと唸り声。
「…………嘘。一十木さんの誕生日、一緒に……祝おう」
瑛一の反応に対する頬の緩みを隠さずに言えば、瑛一の表情も明るくなる。案外、瑛一を手のひらの上で転がすのも簡単なのかもしれないな。