ひとつの指輪「これを、私に?」
ガンガディアは差し出された指輪に驚いた。箱に入れられたわけでも、リボンがかかってるわけでもない指輪は、マトリフの両手の中で鈍く光っている。
「早く受け取れよ。重いんだよこれ」
言われてガンガディアは指輪をつまみ上げる。マトリフは息をつくと肩を回した。ガンガディアにとっては軽いが、小さなマトリフにとっては随分と重かったらしい。
「どうして指輪を?」
「どうしてって、前のは無くしたって言ってただろ」
それは以前にマトリフが指摘したことだった。マトリフとはじめてヨミカイン魔道図書館で出会ったとき、ガンガディアは右手に指輪をしていた。しかしそれ以降は指輪をしているのを見なかったという。ガンガディアはマトリフがそこまで見ていたことに驚いた。ガンガディアはヨミカインでマトリフからベタンを受け、地下深くに落とされた。その拍子に割ってしまったのか、気付いたら指輪は無くなっていた。その事を伝えると、マトリフは興味を失ったように素っ気ない返事をしたのだ。
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