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    タイムアップで推敲してません。未来ねつ造大人なまなんちょ。
    最近創作まるで出来てなかったので30分くらいで冒頭(ファミレスさがすくだりまで)だけ書いてた話完成できないかなと思ったら一時間近くかかりました。
    明日以降読み返してこれを公開しておくのはやばいなって思ったら非公開にして推敲し直そうと思います…。大人になってもまなんちょには青春して欲しいですね。

    #まなんちょ
    southSideBook

    終電を逃してからの顛末「……やっぱり間に合わなかったわね」
     スマートフォンで時刻を確認した宮原はそっとため息を漏らした。
     会社の慰労という名目での飲み会、そのときとなりに座った同僚女性が撃沈してしまい、タクシーで送った帰りでのことである。
     女性の家から駅までの往復分はどうにかなったが、さすがに彼女の家最寄駅からそこそこ離れた自宅までタクシー利用は難しい。
     かといって、彼女の家近くは女癖が悪いことで女性社員一同から遠巻きにされている男性社員しかいなかったので、責任感がことさら強い宮原はどうしても放っておけなかったのだ。
     申し訳なさそうに泊まっていってと声をかけてももらったのだけど、出張のため一週間ほど不在だとはいうものの、恋人と同棲中のお部屋に泊まる気概はさすがになかった。
     彼女が飲みすぎてしまった原因もそこにあるとかで、仕事のあと一人の部屋ですごすのは寂しくて寂しくてつい楽しい飲み会の空気につられて飲み過ぎてしまったらしい。
     可愛い理由じゃない。
     駅近くのファミレスにでも入ろうかと周囲を見渡しながら、嫌味でもなんでもなく本心から思う。
     宮原には長いこと片想いをしている相手がいるけれど、不在を嘆いたり、連絡がつかないことを悲しんだり、そういうのとはずいぶん無縁になってしまっていた。
     恋に恋する可愛い時期だって随分と遠い記憶の話だし。
     いまはその恋をしまい込むための猶予期間で、いつか本人には昔アンタのこと好きだったのよねなんて笑い話にしたいなとは思っている。
     まあ、言われた方は困惑するかもしれないけれど。
     いや、そもそも好きの意味すらわからなくて不思議そうに微笑むだけかもしれない。
     高校を卒業して、大学生になって、就職をして。いまの宮原は誰がみても大人なはずなのに。いまだ気持ちは少女だった頃の初恋にとらわれている。
     何度となくあきらめないといけないと、別の恋を探してみたけれど、この人とならと思った相手もいたけれど結局駄目でお一人様を続けていた。
     夜の街を歩きながらそうやって考えてしまうのから、忘れられないんだろう。
    「……というか、この辺りお店、ない?」
     しばらく歩いてみたものの、営業中のお店はみつからない。
     こんなことなら適当に進むのではなく周辺地図を確認しておくべきだったと、反省しても後の祭りだ。周囲を見渡してもあるのはすでにシャッターが閉められた個人営業のお店ばかり。いっそのこと夜の長距離散歩にシフトしてもいいんじゃなかろうか。
     明日は休みだし、家までの距離をスマホのマップで確認すればまあ、うん、遠いは遠いけど歩けなくもない距離ではない。
     お酒が入っているが故の気楽さで、宮原は十数キロの距離を徒歩移動することにした。
     素面であればしないだろう判断だ。
     帰巣本能なのか幸いにも自宅方面へ進んでいたので、ロスも少ないのも手伝ってしまったけれど、本人はそれが酔いによる全能感であることにも気がついていない。
     てくてくと生来の生真面目さで一歩一歩足を進めること数十分、ふと、道案内を兼ねていた宮原のスマートフォンが震えた。流れるのは昔好きだった女性アーティストの春を思わせる恋の歌。青い空の下で君が笑う。そんな歌詞が誰かさんを連想させてくれたから。
    「って、あら」
     さんがく。
     無声音で呟いた名前は、件の、意中の相手だった。
     真波山岳。生真面目にフルネームで登録していた名前が画面上で存在を主張してくる。時刻はとうの昔に日付を跨いだ深夜。付き合ってもないただの幼なじみにかけるにはなかなか非常識な時間だ。
     間違い電話かしら?
     出るか悩んだのは一瞬。まあいいかと受話アイコンをタップしてみせれば、こちらのもしもしの声すら待てない男の声が普段の柔らかさをなくして機械越しに届いた。
    『いまどこにいるの?』
    「え? なに? 誰?」
     思わずそんなことを言ったとて、宮原を責める人はあまりいないだろう。
     あ、委員長-? なんて、間延びした声か、あるいはごめーん、電話する相手間違えちゃった-。なんて声を想像していたのに、真逆な固い声が耳に届いたのだから。
    『オレだけど』
    「オレさんなんて知り合いはいないわね。というかさんがくでいいのよね? そんな開口一番おっかない声出される覚えはないんだけど、電話する相手間違えてない?」
    『宮原すずこちゃんのスマホに電話かけてるよ。現在進行形で。それで、どこにいるの?』
    「どこって」
     きょろりと周囲を見渡すものの、住所表示のあるものはみつけられない。ロケーションはどこかの線路沿いの住宅地。近くの家の表札を読み上げたってきっと満足はしてくれないだろう。そんな声をしていた。
    「まあ、その、帰宅中のどこかの道ね。終電逃しちゃったから歩いて帰ってるの」
    『はあ? こんな時間に?』
    「そうね。こんな時間にアンタこそなんの電話よ」
    『委員長の部屋にいったら誰もいないから』
    「……どういうこと? この時間なら寝てる可能性だってあるじゃない」
     というか、随分非常識な訪問でもある。
    『だってオレ、夕方からずっと部屋の前にいるし』
     さらりと真波が告げた言葉の意味が一瞬わからず宮原は足を止めた。
     だってオレ、夕方からずっと部屋の前にいるし? 夕方から誰の部屋の前に? 私の?
    「……なにかあったの?」
     高校卒業以降、真波との接触は皆無ではなかったけれどそう多くもなかったはずで。それなのに宮原の部屋へ訪ねてくるということはなにか話したいことがあるのか。高校時代一番彼が落ち込んでいたとき、話を聞いていたことがあったからか、真波は気持ちを整理したいとき宮原に話しかけてくるようになっていた。
    『――告白、しようと思って』
    「えっ、なんの? 罪の? 私別に懺悔室でもなんでもないけど?」
     さっきまで残っていた酔いのふわふわした感覚も吹き飛んだ。
     とはいえまだ家にも着きそうにないし、待たせるにも遅くなるだろうし。
    「話は聞くけどそれって日を改めたり出来ないのかしら。私まだまだ家に着きそうにないし、さんがくだってこんな夜に黙って待ってたら身体冷えちゃうわよ」
     つい早足になりながらいえば、電話口で大きな大きなため息が聞こえた。
    『そうじゃないよ』
    「じゃあなによ」
    『好きだよって、委員長に直接言いたいからさ。タクシー使ってでも早く帰ってきて。オレ、お金出すから。……ていうか、こんな夜に女の子ひとりで歩いて帰ってこないでよ、委員長、可愛いんだから』
     拗ねたような、怒っているような、固い声が耳に直接吹き込まれたけれど、意味がまるで伝わってこなくて宮原はとうとう進めていた足を止めた。
    「……あ、の、えっと」
     なんだこれ。
     耳の中でどっどっどっどっと心臓が大きく音を立てているような。
     自分はいま、なにを言われた?
    『委員長? 聞いてる? いまどこ? オレが直接いった方が早いかな』
    「っっっむ、無理! ちょっと意味わからないし私いま多分正気じゃないしなにこれ夢? 急になんなの? 意味わからないんだけど!」
     電話越しに叫べば、ここが深夜の住宅地だと思い出して口を手で覆う。場所を移動しなければと早足で顔が向いている方向へ進めば舌打ちのような音が聞こえた気がした。
    『委員長、場所どこ? いま向かう』
     電話越しの真波の声が揺れた。
     走ってる?
    『お願い委員長、場所教えて。急だって言われたらその通りだけど、いてもたってもいられなくなったんだ。だってこのままにしてたら委員長を他の誰かにかっさらわれる。その可能性があるって気づいたらどうしようもなくなったんだよ』
     真剣な声だった。
     羞恥や混乱だけで突っぱねてはいけないそう思ってしまった。
     足を止めた宮原は、通話画面からさっきまで開いていた地図アプリを確認して、現在地の住所を告げる。自宅からここまでの経路はわからなかったけれど、真波にはそれだけで十分だったらしい。近くにコンビニがあると告げられ、道順まで誘導された。
     ぼんやりとしたまま進めば真波の言葉通りのコンビニがそこにあって、中に入るように促された。
    『五分でいくから、通話つなげたまま待ってて』
     それまでに覚悟だけ決めてくれればいいから。
     強い声には覚えがあった。
     レースがはじまる前に勝ちを確信して走ることを宣言したのと、同じ声音。
     その声に、宮原の気持ちもすっと落ち着いてしまった。
    「うん、待ってるわ」
     応えた宮原の耳に笑ったのだろう吐息が届いて、それきり真波はなにも言わなかった。多分自転車に乗っているのだろう。運転した状態での通話は出来ない。
     きっと真波は宣言通り五分でここまで来るんだろう。
     宮原の他カップルや仕事帰りだろうスーツ姿の男性客しかいないこのコンビニに。
     そのときのためにスポーツドリンクを購入しておいた宮原は、なんて言って真波を迎えてやろうかと考える。酔いに任せたテンションで、先に伝えてやろうか。
     好きだったなんて過去形ではなく、好きですと。



     おしまい
     
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