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    関西圏に縁のない人間の書いたささろ未満だけどささろと言い張るささろ
    そのうち簓視点追加して支部にまとめたい気持ちがあります

    #ささろ
    sasaro
    #簓盧
    #ヒ腐マイ小説
    hifutsuMaiNovel

    真夜中の侵入者(ささろ) ある週末の夜中、異様な暑さと寝苦しさで目が覚めた盧笙は、自分以外の存在がいることに気がついた。
     室内なんて生ぬるいものではない、自室の、それもベッドの中に。である。
     抱きつかれてこそいないが、盧笙にぴったりと寄添うようにしているその人物は、呼吸を忘れているかのような静かさで当たり前のように眠っている。
     これが一緒に暮らす恋人やペットがいるだとか、そんな話であれば微笑ましい話に早変わりするのだけれど、生憎と躑躅森盧笙は独身であったし、恋人もいなければペットも飼っていなかった。
     ここまで情報を羅列していくと、残されるのはホラー要素か犯罪要素の二択が真っ先上がるだろうが、もちろんそうでもない。
     なので、侵入者には心当たりしかない盧笙は、ため息を噛み殺すことでツッコミたい衝動を抑えた。
     なにせ草木も眠っているようなド深夜である。壁がさほど厚いとも言いがたい一般的なアパートにおいて、大声が厳禁なのは言うまでもない。
     さておき、侵入者である。
     犯人の名前は白膠木簓。かつて盧笙が組んでいたお笑いコンビどついたれ本舗の元相方で、現在は同名のラップチームの仲間でありリーダーでもある。そんな世間的にも一定の評価を得ていて、人気も評価も高いお笑い芸人白膠木簓による躑躅森盧笙宅への不法侵入は、驚くことに常習的に行われていることだった。
     この男は家主に無断で合鍵を所持していたし、なんならその複製も大量に用意しているのである。なんでやねん。おかしいやろ。そうツッコんだところでどこ吹く風。馬耳東風。なんなら自分が住んでいるタワマンのカードキーを寄越そうとして来る始末である。
     しっかしなんでヒトが寝とるベッド入って来んねん、客用布団用意したんしっとるやろ。
     布団を剥ぎ取りそう怒鳴りつけてやりたいところではあるが、それも飲み込んだ。
     やはり、深夜なので。
     あとは、盧笙にぴったりとひっついている男の寝顔から、一定の疲れを感じ取ったので。
     三対七くらいの割合で後者が勝ったことは本人には絶対に伝えたくない事柄ではあるが。
     いまでこそ単なる一般人でしかない盧笙にも、芸能の世界のそれも第一線で立ち続けるこの男の忙しさの一片くらいは理解出来る。いつだってヘラヘラ飄々として見せていても、簓だって人間だ。疲れることくらいあるだろう。
     だからこそ、こんなところに来ないで自宅に帰れというのに。
     どうしてか簓は勝手に作った合鍵で、この部屋へ「ただいまー」と入ってくる。
     当たり前の顔をして、ここはお前んちちゃうとツッコむ盧笙に嬉しそうな笑みをこぼして、すっかり慣れた様子で寛ぎ出すのだ。
     コンビを組んでいたときだって仲はよかったが、こんな風に他人のパーソナルスペースにずかずか入ってくることはなかったし、寝ている盧笙の家に無断で入って同じベッドで寝るようなこともなかった。
     解散後の空白期間にそういった部分が出来たんだろう。
     青棺左馬刻と揉めたのだと、零が言っていた。
     おそらくはその辺りにでも。
     簓は語らないし聞く気もないので、いまのコイツはそういう男なのだと理解すればそれだけでよかった。いや、不法侵入は本気でやめて欲しいのだけれど。
     暗い部屋の中思考をあちこち飛ばしていれば、段々目が冴えてきてしまったではないか。
     寝ている簓をよく見れば、しっかり我が家で風呂に入って盧笙の部屋着をパジャマ代わりにしていることにも気がついた。それはまあ、正直ベッドに入られるのなら、そっちの方がいいのだけれど。
     いや、そうではなくて。
     今日が休みでなければ、朝にでも叩き起こして文句を言っているところだ。でも寝ているところをだまし討ちみたいに起こして説教をするのは可哀想かもしれない。なんてことを考えながら、盧笙は雑に簓を跨いでベッドから下りた。
     起こすのはよくないが、簓が勝手に起きる分にはかまわないと思っているので。
     薄暗い部屋の中、収納から布団を一組引っ張り出して改めて侵入者を見てみれば、夢の中ですこやかな寝顔を晒している男は盧笙の枕を抱き込みベッド中央を占領していた。まったくもって自由なものである。
     近くでこんなにも動き回っているのに、ちっとも起きる気配がないのだから。
     簓が起きなかったことにどこかでほっとしながらベッド下に布団を敷いて、枕代わりにバスタオルを折って置きそこに身を横たえた。
     疲れているのならベッドくらいは譲ってやろうという家主からの優しさである。
     薄手のタオルケットにくるまれば一度は手放した眠気も帰ってきてくれたようで、内心ほっとしながら盧笙は再び眠りについた。




     せっかくの安眠は突然の大声と揺さぶりによって妨害された。
    「なんでやなんでやなんでやー」
    「……ん、なん、っるさ」
     しぱしぱする目をどうにか開けば、人様のベッドを占有していた簓が覆い被さるようにしてこちらを覗き込んで揺さぶってきていた。
    「って、近いわボケ! 朝っぱらからなんやねん!」
    「ふががっ、もぎゃおおねれう」
     遠慮斟酌なく簓の顔面をてのひらで押しのけるも、なにやらご立腹らしい男は負けじとなにか言い募ってくる。仕方ないので聞いてやろうと布団に座るように促せば、そこは素直に正座をして真正面に陣取ってきた。
     盧笙の部屋着を勝手に着ている男は、身体に合わない大きめなシャツに痩身を泳がせながらも、強い意志を感じさせる表情でこちらをじとっと見つめつつ口を開いた。
    「なんで布団で寝とったん」
    「そら、お前がベッドに入ってきとったからやろ。なんで狭いベッドでくっついて寝なあかんねや。暑いやろが」
    「あ、そういう」
    「って、まだ五時やないか。いくらなんでも早すぎやわ」
     ふとヘッドボードの目覚ましを見遣れば、これから散歩にでも出るのかという時間帯だった。
     一瞬このまま起きて朝食がてら外に出るのもありかもしれないと、寝起き特有のふわふわした思考が流れていったが、賞味期限が切れた食パンを使い切らなければならないことを思い出した。
     残念ながら散歩からの朝食は次回へ持ち越すことにしよう。
     次回がいつかは知らんが。
    「つーか、お前今日早いん? やったら期限切れでもかまへんのなら朝飯くらい用意したるけど」
    「夕方に局入りやからそこまででもないな」
    「だったらまだ寝とき。俺もまだ寝たい」
     まだそこまで腹も減ってないし、それならば睡眠欲の方を優先したっていいだろう。
     カーテンの隙間からはすでに凶悪とも言える朝日が入ってきているけれど、土曜日の朝は寝坊したってかまわないし、二度寝だって許されるはずだ。
     そう思って布団に横になれば、むっとした表情を隠さない簓がとなりに滑り込んで来ようとしてきた。
    「なんっっでやねん! ベッド譲ってやったやろ、そっちで寝ぇよ」
    「いやや! ベッドで寝るだけでいいなら家に帰るっちゅーねん。盧笙おるからこっち来るんやろが。せやから盧笙のおる場所が俺の帰る場所やし、盧笙が寝てるところが俺の寝床っちゅーことや! わかったか!」
    「わかるか! お前酔っとるんか? 支離滅裂なこと言いよってからに」
     自分より幾分か小柄とはいえ、謎に本気らしい成人男子をいなすのも眠い身体では正直面倒くさい。
     やいのやいのとなにかを主張している簓の声はいつもよりも精彩を欠いているし、つまりコイツも疲れきっとってわけわからんくなっとるんやな。という納得を盧笙はした。
    「……もう、わかったから、こっちでもいいからもう少し寝ぇや」
     盧笙に詰め寄るようにしていた簓の腕を引っ張って引き寄せて抱き込み、タオルケットをかぶって骨張っているというよりかは、単純に肉の少ない背中をぽんぽんと叩いてやる。
     人間のぬくもりというのは、なんだかんだでほっと落ち着くものなのかもしれない。抱き込んだ簓の体温は妙にしっくりきて、一気に眠気が雪崩れ込んできた。
     ああでも、これだけは言わなければ。
    「……あんなあ、ささら。おまえがヒガシでどんな生活しとったかは、聞かへん。言えんこともあるやろ。やけどな、そっちではたにんの家にはいりこんだり、添い寝すんの、じょーしきなんかわからんけど、いまはおれにだけやり。こんなことで、おまえがタイホとかされんの、いやや――」
     なんだかんだで、盧笙だってこうやって簓が訪ねてきてくれるのは嬉しい。
     その手段がもう少し一般常識に則ってくれてればいいとは思うから、口うるさいことは言うだろうけど。
     すっかり眠りに意識をさらわれてしまった盧笙の耳元に、なにか囁きのような声が届いたけれど、残念なことに聞き取ることは出来なかった。
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