平日、午後七時。羽目を外すにはいささか早い時刻も、ライブハウスの扉をくぐればそこは既に無法地帯だ。思い思いに体を揺らし、ライトを振る。その振動は地面を伝いステージ上にまで響いた。ホール中の熱が塊になってとぐろを巻いている。
ニキはその熱が好きだ。口いっぱいにほおばるように息を吸えば、肺だけでなく胃袋まで熱で満たされた気がした。イヤモニから聴こえる音に微かに意識をかたむけながら、ステージ上をそれこそ蜂のように動き回る。ここが自分達の縄張りなのだ、そう思えるほどには四人ともアイドルとして日々を重ねてきた。始まりは決して良いものではなく、一波乱どころかむしろ一瞬の静寂すらないような日々だったけれど。熱にうかされた客席の様子を見ると満たされたような、悪くない気持ちになる。
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