悟甘やかしの全年齢パート ベッドの上、さして興味もない映画をふたり並んで見続ける。いつもならばすぐに飽きてあーだこーだと騒ぎ始める悟が、今日は珍しく静かだ。
「……」
静かというか、恐らく落ち込んでいる。今日の任務で何かあったのか、はたまた他の事で嫌なことでもあったのか。気にはなるが、特に聞き出したりはしない。例えどんな関係であっても相手の何もかもを把握していなければならない訳では無い、というのが私の持論だ。悟が言いたくないのならば聞かない。黙って傍に居るだけで、解決する事だって世の中にはあるものだ。
「……」
「……」
「……〜〜」
「ん?」
数十センチの距離を詰めた悟が、私の肩にぐりぐりと頭を押し付ける。髪が頬に当たって少し擽ったい。愚図る子供のような声を発する頭に手を回してサラサラと指通りの良い髪を撫でると、悟は「ゔ〜……」と言いながらズルズルと頭を下ろしていき、私の膝の上にぽすんっと後頭部を落ち着けた。
「すぐるぅ」
「今日は甘えたなの?」
「ん〜……ちょっと疲れてる」
「そっか。……悟、抱っこしてあげようか」
「ん」
緩慢な動きで体を起こした悟は、こくんと頷いて素直に膝の上に乗ってきた。私の首に腕を回してぎゅうっと抱き着いて、スリスリと首元に頬擦りをする様子はなんだか猫のようで可愛い。抱き締め返し、背中を撫でると徐々に体から力が抜けていく。
「明日なにか美味しいものでも食べようか。何がいい?」
「ん〜……このまえ傑が美味しいって言ってたラーメン屋。俺もたべたい」
「いいよ、行こう。あとは?」
「帰りにアイスとチョコ買いたい。あとポテチとプリン」
「ちょっと食べ過ぎじゃないか? 一気に食べるの?」
「傑とゲームしながら食べる」
「ふふ、そっか。じゃあ明日の夜は一緒にゲームだね」
「ん」
だらんと脱力した悟を抱いて、体をゆらゆら左右に揺らす。愚図る子供をあやす様に頭を撫でて、髪を梳いて、背中をとんとんと叩いていると、「すぐる」と酷く甘えた声で名前を呼ばれた。
「うん?」
「ちゅーしたい」
「ふふふ、ちゅーしたいの?」
「うん。だめ?」
「ダメじゃないよ。おいで」
ゆっくり体を離し、じいっと私を見つめる悟。むいっと突き出された唇が可愛くて、頬を両手で包み込んで私からキスをした。
「んぅ……」
「ン……っ」
触れ合うだけのキスが段々と深くなっていく。悟の舌が私の唇を割って侵入してきて、ぴちゃぴちゃと濡れた音が静かな部屋に響いて、ゾクゾクと鳥肌が立つ。
「んむ、……ッふ、ンぅ……」
「ん、ん……ッァ、は、……っ、ん」
舌を絡め合わせ、どちらの物とも分からない唾液が顎を伝って垂れる。はっ、と短く息を吐きながら悟の唇が離れていき、名残惜しく思っていると酷く甘ったるい声で悟が私を呼ぶ。
「すぐる」
「ん……ッ」
ちうっと首筋に吸いつかれ、思わず息が詰まる。悟の唇が触れている部分がドクドクと脈を打つのを感じて少し恥ずかしく思った。セックス、するのかな。
「すぐるの匂いがする」
「……くさい? シャワー浴びたんだけどな」
「んーん臭くない。すぐるの匂いすき」
「それは光栄だね。うわっ」
悟の体重がぐんと掛かり、そのまま押し倒された。ごろんと隣に寝転んだ悟にくんくんと項の匂いを嗅がれたり、ぺろりと味見するように舐められたり。幼子かペットのようなその行為は性感を煽る程のものでは無かったが、少しでもセックスを意識してしまった私にとっては少し、いやかなりクるものがある。
「すぐる、すき」
「私も悟が好きだよ」
「へへ」
目を見て嬉しそうに笑うその表情が可愛くて頬を撫でる。気持ちよさそうに手のひらに擦り寄ってくる悟は、やっぱり猫みたいだ。
「んー……」
「悟、眠い? 寝てもいいよ」
「ねむくない……すぐるとえっちする……」
「……するの?」
「する……」
そう言いつつも悟の瞼は既に半分以上閉じてしまっている。うつらうつらと船を漕ぎながらも必死に意識を保とうと努めているらしいが、それも時間の問題だろう。
「おいで悟」
「んぅ」
腕を広げるともそもそと身動ぎながら私の胸元へと悟が擦り寄ってくる。丸い頭を抱き抱え、いい子いい子と髪を撫でればすぐにすうすうと静かな寝息が聞こえ始めた。可愛いなぁ。
「おやすみ悟。今日もお疲れ様」
旋毛にキスをして、セックスしたかったなぁ、なんて思いながら私も目を瞑った。
セックスへ続く