支部にあげるのにタグに困るやつ小笠原貞宗に館へ呼ばれた。
新年早々寒い中、俺を待っていたのは小笠原貞宗とその腰巾着、市河助房であった。賊の俺に何用かと思えば、諏訪領への侵略の命だった。
俺は賊として素直に従うつもりもない。
しかし小笠原貞宗はそれも見越して俺を受け入れるらしい。少しは媚びへつらい賊の俺に怯える姿が見たかったのだが、その堂々とした態度が気に食わなかった。
そんな奴からはさて何を奪ってやろうか。奪うことは生き甲斐で、何をどうやって奪うか考えるのは楽しい。
考えていると先ほどいた部屋から出てくる誰か近づいて来る足音が聞こえてくる。
「おや、市河殿」
「瘴奸…」
話しかけると、立ち止まり顔も上げずに目だけ俺に向ける。
同じく俺の心のうちを察して、小笠原貞宗とは異なり俺に忌避感をあらわにしていた男だ。俺は諏訪領で陣取りではなく略奪をするつもりなのだから、この男の直感は正しい。
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