(音トキ)うさのせさんとおとやくん うさぎを拾った。
ぐったりしていたので慌てて部屋へ連れ帰ったけど、大きな怪我もないみたいでほっとする。
改めてみたら妙な服を着せられてるし、何かだいじそうに持ってるし。
「刀……?」
気になって手を伸ばしたら、ぺしんと払われた。
「触らないでください」
一瞬何が起こったかわからなかった。だってこの場には自分しかいなくて。それは声が出せる人間がって意味だけど。
だから今喋ったのは。
「え? 喋れるの?」
「あ。……いえ、えっと」
誤魔化そうとしてるのか小さな頭を左右に振って、でも結局良い案が浮かばなかったらしく大きなため息をついた。
「バレてしまったら仕方ありません……」
その喋れるうさぎはトキヤと名乗った。
「他に二人いたはずなんですけど」
二人、った言うけどうさぎだよなぁ?
「トキヤのそばにはいなかったよ」
「そうですか……」
しゅんと落ち込むうさぎを前にしたらなんだか同情してきてしまった。
「みんなに聞いてみるよ。もしかしたら同じように保護されてるのかもしれないし」
「だといいんですけど」
「大丈夫だよ! 俺がついてるから!」
「なんなんですか、その根拠の無い自信は」
あきれた声色ではあったけど、心做しさっきよりは元気がでたように見えた。
とりあえず今夜は休もうと言うと、素直に頷く。ソファの上にクッションを置いてあげたらその上にまるまって、俺が風呂から出る頃にはすっかり寝入ってしまっていた。
「気張ってたのかな」
無防備な寝姿を見れて嬉しくなって、思わず観察してしまう。
真っ白なもふもふしたうさぎ。小さな刀は相当大切らしく今も抱いて眠っている。
「かわいい」
そう、かわいかったから。出来心、というか。小動物に顔を擦り寄せてしまうのはおかしいことじゃないよね。キスの一つくらい。
俺の行動はおかしくない。おかしいのは、そなあと。
「……え?」
さっきまで目の前にいたうさぎの姿は消え、その代わりに現れたのは、人間だった。長い耳はないけど、代わりに、というか、閉じられたまつ毛はやたらに長く。眠っていても整った顔立ちであることはわかる。
「人間になっても、かわいいんだな……」
思わず呟くくらいには。