Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    knemo210

    @knemo210
    松の書きかけのやつとか?

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 4

    knemo210

    ☆quiet follow

    事変後のカラ松が入水するまで
    このあとポセカラに拾われる予定
    ハピエンにはならない予定

    未定 愛されたかった。
     まあ当然、それ以上に俺は兄弟たちを愛している。愛しているだけで、愛を伝えるだけで十分だったんだ。だけど、目を逸らし続けるのは不可能だった。やはり、愛されたい。大切な人に、大切にされたい。俺はなにか間違ったことを言っているか? 当然じゃないか。なのにあの仕打ち。ひょっとして俺は、本当はみなに愛されるほどの存在ではないのか? これ以上、どうしたらいいっていうんだ。

     ◇

     自分がこんなにまで追い詰められているとは思っていなかった。部屋の隅に置かれたアコースティックギターは埃を被り、読み古され付箋だらけのファッション誌はまとめて棚に積まれている。外に出る気にも到底なれず、そのせいか食欲も睡眠の質も落ちた。
     真夜中にふと目が覚める。月明かりが部屋を照らしていた。足元に、水飛沫が跳ねたような感覚がした。膝下が海水に浸されているような冷たさを感じた。俺はそっと布団を抜け出し、パーカーとデニムを纏い外に出た。
     ここ暫く、俺は自分が不調であると自覚していた。兄弟の様子は変わらない。好きに出かけ、好きに帰宅し、好きなように過ごす。
     そうか、大丈夫なのか。俺という、兄弟六人のうちの一人が不調でも、松野家は何も変わらない。彼らには自由奔放に暮らしてほしい。就職やら世間の目やら、壁にぶつかれどみんな一緒なら大丈夫。みんな、そう、六人居れば。
     確かにそう思っていたのに。五人兄弟とその両親で我が家は大丈夫なんだと気付いてしまったら、先日のこともあってか全てが分からなくなってしまった。家族を愛していた、俺はそのことに存在意義を見出していたのかもしれない。家族が俺を必要としないのならば、俺も自分がどうでもよくなった。趣味はあった。もうどうだっていい。趣味がなんだ。そんなもの、俺をこの世に繋ぎ止める糸にすらなりやしない。

     ◇

     海側へとあてもなく歩けば、空が白み始める頃砂浜に到着した。静寂の中、波の音が聞こえる。履き古したスニーカーの爪先を、海水に浸す。まもなく春が来るとはいえ、まだ水温は突き刺すように冷たい。あの時と同じくらいに、だ。
     自分の意思で歩を進める。靴がぐしょ濡れになった。デニム素材がべったりと肌に張り付いた。パーカーは空気をはらんで少しだけ浮かんだ。歩き続ければ、徐々に目線が海面に近くなる。濡れた衣服が重たいこともあり、足取りが覚束なくなる。ここまで歩いた疲れも、眠気もあるだろう。丁度いい。最期に、酸素を求め足掻くみっともない自分なんて見たくなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🇱🇴🇻🇪🙏🙏🙏😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator