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    @rio_danmei

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    酔っ払い鬼市の遊女の話。恋バナ。これだけではネタバレではないけれど…にょた化注意???女に化けてます。彼は恋バナ聴くの好きそうだって思ってます。

    恋バナ全部が全部の男達がろくでなしでは無いことは知っているわ。

    男とか女とか関係なく人は人よ。

    私だってこんな風に成り果てる前は本気で男に惚れたこともあるわ。
    ああ?客よ、客。睦言を本気にしたのよ。互いにね。

    でも、そうね。
    妓女と客なんだからまず、本気で好き合っているのかどうかから疑うものだけど、こと相愛だったことは違いないわ。
    馬鹿にしてる?でも、これは何百年経って、頭が冷えてもそう思ってんの。
    ま…落籍す金がなかったんだから、そんな気持ちは一銭の価値もないんだけどね。
    それに心中するような性格でもなかったしね、向こうも私も。

    ええ、ええ。
    珍しい男で、私を抱かなかったわ。
    金で買って抱かないなんて死ぬほど馬鹿にされることよ。妓にも恥をかかせることだしね。何しにきてんだか。
    結局、本当に手を出されたのは私のほうが腹に据えかねた一回切りだった……本当に何を考えていたんだか。

    いえ、違うわね。

    あの人は、私の嫌悪感に気が付いていて、全霊ををかけて自身の誠意を証明しようとしていたのでしょうね。
    多くの妓女に惚れた男がそうであるように、自分だけは他の男は違うんだって必死に伝えようとしたのよ。

    彼のことはもう愛していないけれど、感謝はしてるわ。
    あの男に出会えなければ、男は全て醜悪な汚物のように見え続けていたかもしれない。

    まぁ、この仕事をやっていれば、そう思わざるを得ないことはままあるけれど。
    私も若い頃から相当気の強い蓮っ葉だったもんだけど、箱入りは箱入りだったから揉まれたわ。

    ……そう。ずっと箱入りで、ただの気の強い女だった。それが、ほんの短い間に嵐の中を叫び声を上げて彷徨ってるみたいに多くの経験をして、その末に鬼になって本当に彷徨い続ける羽目になった……。



    「でも、何れにしても大馬鹿ね」とクッと笑って彼女は酒を煽った。

    彼女の前には一人の女が居た。

    対面の女も酒をつぃと飲み「まだその男に情があるの」と聞いた。

    「まさか。だからもう愛してはいないんだって。保ち続けられる恋情なんて存在しないのよ。全部、大昔のことよ。それに私から別れを切り出したのよ」

    「どうして?」

    「万の功績と誠意があったとして、酒に酔って言った一言が全てを失うこともあるし、日頃だったら許すことのできる一言も、追い詰められているときには最後の針のひと刺しになるからよ。私は傷ついている人を癒すことはできないし、私の立場は彼を苦しめるだけだった。
    ……愛する人から愛情が消えていく様を見つめ続けることは、世でも最も恐ろしいことと私は思うわ……
    そうなることは火を見るより明らかだった。だからそうなる前に離れたの」

    ぼぅっと彼女は酒杯の中の透明な酒を眺めた。かと思えばパッと顔を上げて、対面の女の顔を覗き込む。

    「それにしても貴方。綺麗な顔してるわねぇ」

    彼女は尚のこと女の顔をジッ…っと見つめる。

    対面の妓女がいつから座っていたのか、酔いすぎて思い出せない。今までつらつらと語っていた話を何故始めたのかも。

    「貴方みたいな絶世の美女が居たら鬼市中で知らぬ者はいないと思うのだけれど……」

    酒を置き、彼女は悩ましげに目尻を細める。嫋やかな所作で手首を曲げ白い指先を自らの酒に濡れた唇に当てた。

    向かいの女は艶やかな黒髪をさら、と肩から落とし、淡々と酒杯を傾ける。

    その風貌は銀の月華のような美しさであり、思わず見惚れてしまうほどであった。
    鬼市は確かに広いが、噂が駆け巡るのは千里も刹那の間である。
    服装が妓のものであったので彼女は向かいの女を同業であると思っていたが、この美貌で、己が知らぬなどありえるのかしら。

    「……私、貴方に会うの初めてかしら……?」

    対面の女は返事をしない。また無言で杯を傾ける。けれど、今度は瞳の中に面白がるような光が見えた。

    知らないと思ったが———蘭菖はこの冷たい月の温度に身に覚えがあった。
    そうそう会話なぞしたことが無かったが———此処———鬼市に、招き入れてくださった。

    「…………城主…?」

    女の勘は侮れない。彼女の勘は見事に当たっていた。

    対面の女。
    すなわち花城は目を瞬かせて、「何か下手を打っただろうか」と独り言めいて言った。
    その声はそれまでの女のものではなく、花城主の声であったので、これで蘭菖は確信した。
    しかし驚きすぎて、口を半分開けたまま固まっていた。
    花城は二人分の勘定を済ませて、店の戸を引いた。
    蘭菖はこれに流石に慌てて立ち上がったが「暇だったから聞いていた。なかなかに面白い話だった」と言って、血雨探花は鬼市の喧騒に紛れてしまった。

    一介の鬼が鬼王が姿をくらますのに追いつけるわけがない。

    蘭菖は狐に摘まれたかの心持ちとスッカリと覚めた頭で、いつも通りの鬼市の大通りを呆然と眺めた。



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