その日、アルハイゼンは教令院内にある学習室に朝から籠ってレポートを書きまとめていた。室内の奥まった西陽の差す場所にある席をとり、テーブルの上には参考書やレポートの紙が束になって置かれている。
静かな室内でカリカリと紙の上にペンを走らせて音頭の中にある考えを無心になって綴っていると、外から何やら賑やかな人の声が聞こえた。
ペンを走らせる手を止め、窓から外を覗くと中庭の木漏れ日の中を数人の学生たちが歩いていた。
その中でアルハイゼンの目に留まった人物がいた。美しい金髪と赤い瞳が目立つ一人の男。
「(彼は……確か妙論派の……)」
アルハイゼンが記憶を辿ると確かに彼のことを知っていた。
「(……そうだ、カーヴェ先輩。建築の分野において逸材と言われている人、だったか?)」
以前、アルハイゼンは院内で展示されていた彼の建築デザイン画を目にしたことがある。精巧で、繊細で無駄のない、美しく魅せる図面だった。アルハイゼンは確かにそこから""才能""を感じた。
「…………」
アルハイゼンの視線は無意識のうちにカーヴェを追っていた。彼の周りは賑やかで明るい。カーヴェという男は人に好かれやすいのだろうか。彼自身のことはよく知らないが視界に映る光景を目にしているとそんな印象を受ける。
暫くカーヴェを眺めていると、何か面白いことでもあったのか彼は笑顔を浮かべた。そのとき、木漏れ日の下で笑うカーヴェを見てアルハイゼンは気付いたのだ。
明るいのは周りの人間ではない。
カーヴェという男自身が明るいのだと。
「(……眩しい)」
アルハイゼンは目を細め光を遮るように手をかざした。
それでも、目に焼き付いた眩さは彼の瞼の裏からも離れることはなかった。