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    さち倉庫

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    さち倉庫

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    ハイカヴェ(アルカヴェ)
    両片想いな二人。寝ている🌱に🏛が告白してるだけ。

    「たらいまぁ〜!」
     いつものように外で酒を存分に味わってきたカーヴェが帰宅すると家の中は暗く、家主の姿も見当たらなかった。
    「なんだ、アルハイゼンのやつもう寝たのかぁ?」
     『もう』と彼は言うが夜も深け普通の人であればとっくに寝ている時間だ。カーヴェはリビングの電気を点けるとキッチンへ向かいコップに注いだ水を一杯飲み干し、それからまだおぼつかない足取りでアルハイゼンの部屋へ向かった。
     そーっとドアを開け、リビングの明かりで彼が起きないように部屋に入るとすぐに後ろ手でドアを閉めた。ベッドの側まで近寄るとアルハイゼンが仰向けの状態で規則正しい呼吸をしながら眠りについている。
    「…………」
     カーヴェはベッドサイドに座り込むと、柔らかなマットの上で頬杖をついた。目を細めアルハイゼンの寝顔を眺める彼の表情はとても穏やかで、泥酔して帰ってきた人間とは思えないほどだ。
    「……アルハイゼン、ただいま」
     当然、返事はない。もし返事があったとしても「おかえり」より先に皮肉混じりの小言が飛んでくるはずだ。
     返事はないと承知の上でカーヴェは引き続き眠るアルハイゼンに話しかける。
    「よく眠ってるな。……よし、せっかくだから""君""にだけ今夜限りの物語を聞かせてあげよう」
     小さな子供に絵本を読み聞かせるように、カーヴェは優しい声色で囁く。
    「ある街に一人の建築士がいた。その建築士はとある商人から依頼を受けてそれはそれは見事な建物を造りあげた。しかし、建築士は商人にまんまと嵌められて借金まみれになってしまったんだ。借金返済のために自分の家さえも手放した建築士は途方に暮れる。そんなとき、知り合いの男が手を差し伸べてくれた。建築士はその男の家に住むことになった」
     そこまで語るとカーヴェはどこか寂しげな表情を浮かべる。
    「帰る場所ができたのはいいことだ。でも、建築士は困ってしまった。建築士は男のことを密かに好いていたんだ。建築士は男で、自分の想いに気付いてからすぐに男への感情を押し殺した。恋が実るなんて望み薄でもしかしたらと期待するだけ虚しいだけだからね。建築士は現実を見たんだ」
     饒舌に語っていたカーヴェの口が閉じ、部屋はまた静寂に戻った。しばらくの間カーヴェは黙ったままだったが、再び口を開いた。
    「……好いている男とひとつ屋根の下で暮らすことになったら嫌でも意識してしまう。押し殺したはずの感情が溢れかえってしまう。現実は本当に容赦がないと、建築士は泣きそうになってしまった。どれだけ自分を偽って、装っても、どんなに頑張っても……無理、なんだ」

    「──好きだよ、アルハイゼン」

    「君とは口論してばかりで、どの観点から見ても相性が良いとはお世辞にも言えない。君は何かと僕に皮肉を言ってくるし感情を逆撫でする言動ばかり。でも、そんなところもひっくるめて好きなんだ。自分でもどうかしてると思う。それでも──」

    「どうしようもないくらい、君が好きなんだ」

     本当におかしな物語だ。何もかもがむちゃくちゃだ。それでも、カーヴェは微笑んでいた。

    「……すっかり酔いもさめちゃったな。僕も寝るか」

     カーヴェは立ち上がり部屋を出ようとしたところでベッドの方を振り向くと、最後にもう一度だけ口を開いた。

    「おやすみ。良い夢を」

     バタン、と小さな音を立ててドアが閉まる。アルハイゼンの部屋は静けさを取り戻した。

    「…………まったく、物語ならしっかりエンディングも用意しておけ」

     明日の朝、自分が語った物語の続きが新たにはじまることをカーヴェは知らない。
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