ふぇいとパロ 暗がりに一人の男の荒い息だけが響く。
辺りは血の海で、人だった残骸が多く転がっている。
彼はまだ肉塊にはなっておらず人の形を保ってはいるものの、近いうちにそれらの仲間入りをしてしまうのは自明の理だった。
どうせいつ死んでもおかしくない捨てた命だ。
やっと楽になれる。
死は救済。
地獄は終わる。
決死隊の人間は皆そう言われて育てられる。
死ぬために生きる。男も例に漏れずそうやって信じて生きてきた。
なのに、何故だろう。
救いに手を伸ばすのが怖くなってくる。
生きたい、と生物の本能が人間の理性を押しのけて叫んでいた。
そうは思っていても、重症な我が身。
何もしなければ一日保たないのは彼自身理解している。
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