幕が下がるぐちゃり、と腐った肉が裂ける音がした。
自らがふるった刃先にも、同じく酷い色をした液体がこびりついている。
「…はぁ」
今日何度目かも分からない、溜息を付いてばかりの七海は、いい加減参っていた。
呪霊の強度は2級ぐらいのものだったが、数が多くて仕方ない。祓っても祓っても、どこからか湧き出たのか次々と七海に向かってくる。
昼食後からの急な依頼で、時刻はもう19時を回っており、とっくに労働時間外である。
駅前から一歩路地に入ったこの場所は、昼でも日が当たる事はない店が集まり、まるで時代遅れの繁華街といった所だ。
「…もう、こいつで終わりでしょう」
最後の一体を祓う。
するとその呪霊から血のように流れる黒い液体は、まるでマグマのようにゆっくりと、近くの廃墟のホテルへと戻るように入っていく。
1981