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    aka_ren_main

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    支部にもあげている俳優パロ猗窩煉の出会い編です。この二人は是非戦隊ヒーローショーで出会ってほしい。そしてお互い一目惚れしてほしい(顔ではなく戦い方に惚れてほしい)
    そう思ってかつての職場をモデルに描き始めました。

    出会い編   一

     素山猗窩座が幼馴染である恋雪から緊急のSOSを貰ったのは五月になったばかりのある晴れた日曜日のことだった。
    『猗窩座くんお願い! 助けて!』
     そんなメッセージで叩き起こされスクーターで向かったのは近所の小さな遊園地。恋雪が最近アルバイトを始めた場所である。
     ここは都内からのアクセスもよく施設も充実していてなかなか人気の遊園地だ。休日になればカップルや親子連れで賑わう観光スポットである。スタッフに案内されたのは大きな野外ステージ。これから何かイベントでもあるのだろう。その観覧席はほぼ埋まり立ち見までできているようだ。
     その裏手に回れば呼び出した当人である恋雪が可愛いユニフォーム姿で猗窩座の事を迎えてくれた。
    「猗窩座くんにお願いがあるの」
     そう言って目をうるうる潤ませる恋雪に猗窩座は嫌な予感を覚えた。この幼馴染の「お願い」にNOが出せた試しがなかったからだ。双子の片割れである狛治と共にそれこそ物心着く前から大事に大事に守ってきた。三つ子の魂百までも。その精神は高校生となった今でも変わらない。
     だが今回ばかりはNOと言いたい。なぜならば恋雪が手に持っているのは何かのキャラクターらしきヘルメットだ。隣のスタッフのお姉さんが持っているのは同色のツナギのような服。絶対に面倒な事を押し付けられるに違いない。
     案の定話を聞けばこれから始まる戦隊ショーにスーツアクターとして出演してくれと言うのだ。どうやらここに向かう途中キャストが交通事故に巻き込まれてしまったらしい。幸いな事にかすり傷だったがこれから病院やら警察の事情聴取などを受けるということでこちらに向かうことができないのだ。
     今日これから行われるショーはいつも開催しているミニショーではなく実際テレビで役を演じている俳優まで出演する大々的なものだ。ゴールデンウィークの催し物としてこの遊園地が大奮発して企画したショーをこんな事で台無しにしたくはない。誰か代役ができるものはいないかと社長自ら探し回っている所にちょうど恋雪が出くわしたらしい。
     猗窩座に任されようとしているのは主役のレッドをピンチに追い詰める敵の悪玉だ。ある程度強くなければ見映えがせずに場を白けさせてしまうし、かといってただ強いだけでは相手に怪我を負わせてしまう。その点猗窩座ならば幼い頃から道場で空手を習っているから相手の空気を読み取り映える舞台を作り出してくれるだろうと期待しているのだ。
     しかも相手は双子の片割れである狛治だ。彼もまた同じ道場で日々腕を磨いているし双子の特性ゆえか息はぴったりだ。付け焼き刃な組手だとしても何とかなるかもしれない。
    「お願い! 猗窩座くん!」
     終わったら特製のホットケーキいっぱい焼いてあげる!
     そんな小学生へのご褒美に陥落したわけではなかったが猗窩座は渋々了承した。
     本当にただの気まぐれだったのだ。
     
     これがのちの人生を狂わせることになるとは思ってもみなかった。
     
     ショーは午前と午後二回行われる。最初はテレビの俳優が顔を出しながら演技をして十五分ほど、そしてその後はスーツアクターによるバトルがメインとなる。時間が無いからと俳優たちが舞台に立つ傍ら裏で狛治とともに大まかな流れを確認する。狛治扮するレッドは剣士という設定で切り込み型の技が多い。けれど流れに関係無いところでは空手の応用で何とかやれそうだ。音楽を何度も聞いてタイミングを頭に叩き込んで何とか最初の舞台に立つことができた。四方八方から浴びせられる視線と歓声が痛かったがそんな物で緊張するほどやわな精神力では無い。むしろ最近生活リズムが合わず組手が出来なかった双子の片割れと思い切り拳を突き合わせられたのが楽しかった。全身スーツの息苦しさなどすぐに慣れた。気がつけばラストまで一気に駆け上がり舞台は最高のスタンディングオベーションで幕を閉じたのだ。
     
     スタッフどころか社長にまで涙ながらに感謝され昼休憩を取った猗窩座だったが、午後のステージに立った瞬間違和感に見舞われた。
    『何だ?』
     目の前には午前中と同じく狛治扮するレッドがいる。赤く光る日本刀のようなものが彼の武器だ。それを上段構えにしてこちらと対峙している姿は午前中と変わりはないのだが体が何やら違うと訴えてくるのだ。
     それが何なのかは戦闘が始まり刀を受けたところで確信に変わる。
    『狛治じゃ無い!?』
     ビリビリと痺れる拳に相手の技量の高さを察して猗窩座は宙を飛んで間合いを開けた。しかしすぐに走り寄ったレッドに続け様に刀を振られ必死に避ける。
    『こいつ……誰だ?』
     左右に体を振り直撃を避けながら猗窩座は考える。ただのスーツアクターでは無いはずだ。振り下ろされる一刀は重く攻撃をまともに浴びればたとえ刃の潰した刀だって息の根を止めることができるだろう。これは何年も厳しい世界で腕を磨いてきた本物の剣士の技だ。
    『ふ、面白い』
     胴を狙った一閃を壁を蹴って避けた猗窩座は得意の蹴りで相手の胴を狙い返す。しかし渾身の技はすぐに避けられ足を掴まれ宙に放られた。見ている子供が大歓声を起こすような大技だ。けれど猗窩座は難なく床に着地し次の攻撃に移った。
     次第に激しく大きくなっていくBGMに合わせ拳と刀は熾烈な戦いを繰り広げていく。不思議と怖いという気持ちはなくただ次に繰り出される攻撃を待ち望んだ。このレッドはどうやら他の武術の心得もあるようだ。予想の斜め上をいく返しに久しぶりに心が沸きたった。気がつけば加減など忘れて本気で拳と剣をぶつけ合っていた。
     おそらく時間としてはそう長くはなかっただろう。けれど流石にマスク越しでの戦いに息が上がっていく。そろそろ決めなければこちらがやられてしまうだろう。
     下段から振り上げられた刀を避け猗窩座はレッドの脇に滑り込んだ。前に同じ攻撃を避けた時とは逆の方だ。予想が外れたレッドから焦る気配が伝わってくる。急いで刀を持ち返すがその頃にはもう猗窩座は次の攻撃に入っていた。
    「これで最後だ!」
     渾身の力を込めてレッドの腹に拳を突きつけた。普通の人間ならまず吹っ飛んで目を回すような勢いのそれは予想通り直撃される前に刀の柄でガードされ致命傷を与えることができなかった。舌打ちし次の攻撃を仕掛けようとするがレッドは直後背後に吹っ飛び舞台の中央で仰向けに転がった。
    「え?」
     苦しげに転がるレッドを眺めやりながら猗窩座は目を瞬かせた。確かに今拳は食らわせたが勢いはほぼ殺され致命傷にはなっていないはずだった。なのに何故レッドは床に倒れている?
     疑問はすぐに解決した。流れている曲は間も無くこの戦いがラストを迎える事を知らせてくれた。この後は絶体絶命に陥ったレッドが刀を赤く染め上げ奥義を繰り出し敵である猗窩座を爆風と共に吹っ飛ばしてこの舞台は幕を閉じるのだ。戦闘に夢中ですっかり流れを忘れてしまっていた。危なかったと首を振り猗窩座は最後の山場に備えるべく爆薬がセットされたコーナーへと進んだ。
     頭の中でラストまでのカウントダウンをとりながら目の前に立つレッドを眺めやった。
     久々に胸が熱くなる戦いだった。このステージが終わったら絶対こいつの名前を聞き出そう。
     ステージの中央に設置されたせり台の中に身を投じながら猗窩座はそう誓った。
     
     午後の舞台も誰もが大満足の素晴らしいショーとして絶賛されたのは言うまでもない。
     
     
    「——あの!」
     ステージが終わりスタッフが内側にはけた瞬間猗窩座は赤い背に声をかけた。
    「顔を見せてもらっても良いですか」
     それは主役であるレッドだった。まだマスクをつけたままの彼は息も乱す事なくその場に優雅に立っている。最初はスーツアクターの誰かだと思ったがそれは間違いだと裏で待機していた狛治に教えてもらった。それが本当なら猗窩座はとんでもない化け物と対峙したことになる。
     暫し沈黙の時が流れレッドがゆっくりと手を上げた。顎を固定していたベルトが外されようやく顔が現れると猗窩座はそれが嘘でもなんでも無く本当だと思い知った。
     ヘルメットの中から溢れ出したのは眩いばかりの金の髪だった。先程まであれだけ激しく動いていたというのに汗一つかいた様子はない。猗窩座を見下ろす瞳は明るい琥珀色だ。楽しそうに口角を引き上げるその顔に見覚えがあった。
     ——いや、覚えがあるなんてものではない。
     そこに立っているのは日本人なら誰もが知っているだろう大人気の俳優だった。幼い頃から剣道で鍛えた足腰は強くスタイルも良く異性どころか同性ですら羨望の眼差しを向ける。最近では俳優業だけではなく映画の吹き替えやテレビの司会役なども勤め一日見ない日はないのでは無いだろうか。そんな国民的俳優である彼が先程の戦いを繰り広げたという事に驚きを隠せない。
     確かに彼はテレビでレッド役を演じている。簡単なアクションなら自ら立ち回ると以前ニュースで聞いたことはあるけれどここまで見事な戦いをするとは思ってもみなかった。
    「俺からの頼みも聞いてくれないか?」
     呆然としているとその大俳優様が笑って猗窩座の名を尋ねてきた。
    「……素山猗窩座……」
     そう名乗れば大俳優様はにっこりと破顔して「猗窩座か。良い名前だな」と褒めてくれた。
    「君は俳優を目指す気はないのか?」
     突拍子もない事を言われ猗窩座は目を剥いた。いったい何を言っているのかと思ったがどうやら本気らしかった。
    「素晴らしい蹴りだった。また機会があれば共に戦おう」と賞賛の言葉を残し彼は優雅に去っていってしまったのだ。
    「猗窩座!」
     なかなか戻ってこない猗窩座を心配したのか、狛治と恋雪が心配そうに眉を寄せながら走り寄ってきた。
    「大丈夫か? お前、天下の煉獄杏寿郎に失礼な事しなかっただろうな?」
     肩を揺さぶられ大変失礼な事を言われるが猗窩座は今それどころではなかった。
     俳優か。それになれば又自分はあの男と……煉獄杏寿郎と拳を突き合わせることができるのか。それはとても甘美なお誘いで猗窩座の胸をくすぐった。
    「決めた」
     俺は俳優になる。そう宣言した猗窩座に狛治と恋雪が驚愕するのが分かったが猗窩座はもうそれ以外の未来を考える事をやめてしまった。
     今はまだ、無理かもしれない。
     けれどいつか自分も煉獄杏寿郎の隣に立って再び拳を突き合わせるのだ。
     
     そうして多感な高校生の人生を狂わせた煉獄杏寿郎は数年後見事俳優として一歩を踏み出した猗窩座と世紀の大バトルを繰り広げることになるのだった。



    2 同居編へ続く
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