Recent Search

    yu.

    @huwa_awa

    タル鍾・ちょっと伏せたい絵置き場

    ☆quiet follow Send AirSkeb request
    POIPOI 12

    yu.

    DONE💧🔸タル鍾 『ささやかな宴席(特別意訳版)』
    ぬいり先生とタルさんがお店でご飯を食べる話

    こちらはぬいり先生の言葉の特別意訳版です。
    話の展開は画像投稿したものと変わりません。
    ささやかな宴席(特別意訳版)(鍾離先生はまだ来ていないのか)

     とある店の窓から漏れ出る、橙色の光を受けながらタルタリヤはそう思った。
     璃月港の中心地から少し脇道に入った辺り、喧騒からは少しだけ傍に逸れた路地の合間にある飲食店が、今夜の宴席の場になっている。いつも通りであれば、約束の時間の前には既に鍾離先生が到着していて、自身は遅れてはいないのだが、結果後から来る形になる、という事が多かった。けれど今日は珍しく、先に着いていないようだ。まあそろそろ時間だし、そのうち来るだろうと思い待つ事にする。
     店を決める時、ここは肉や山菜類が美味しいぞと言っていたな、と考えていると、足先に何かが当たる感触があった。石か何かかと思い視線を下に向けると、焦茶色の小さく丸い何かが、靴の爪先の上にちょこんと乗っている。不思議に思い、よく見てみようと身を屈めると、それは生きものの頭で、こちらを向かれて顔が見えるようになる。その拍子に、頭の上の双葉のような毛が元気に跳ねる。きりりとした眉と大きな瞳、目元の鮮やかな朱。まろみのある顔の輪郭、かたく閉じられた口、短く丸い手足。ちりんと片耳につけられたピアスが、音を立てて揺れる。その生きものは初めて見たけれど、見覚えがある。ありすぎる。半信半疑のまま口を開く。
    4350

    yu.

    DONEタル鍾小説短編『夜、月の眠る部屋』

    寝物語をする鍾離先生と、それを聞くタルタリヤさんの話。
    『朝、空の移る港』と対になる形です。こちらは仄かにタルタリヤさん視点。

    急に話が始まりますが、璃月の宿に泊まってます。2人は別部屋です。
    夜、月の眠る部屋 暗い室内で、ふと目が覚めた。

     窓からは月の光が射し込み、床とシーツを青みがかった白色で柔らかに照らしている。夜中だというのに、珍しく起きてしまった。寝つきや眠りの質は良い方だと思っているが、覚めてしまう事はそう無いため、我ながら不思議だった。
     寝返りを何度かうってみたが、なかなか元のように意識は滑り落ちていかない。何度か体勢を変えてみるも、一向に好転する気配がないので、少し気分を変えるかと思い立つ。ベッドから身を起こし、傍に揃えて置いていた室内履きへと両足を滑り込ませる。備え付けの水差しを傾けてみたが、もう中身が無いようだった。仕方なく、タルタリヤは寝室のドアを開ける。

     部屋を出ると、長い廊下が続いている。泊まっているこの宿は璃月の建築形式を取っているようで、木材の床と白壁、天井から下がっているランプと、異国の調度品ではあるが、見慣れたものとして目に入る。規則正しく並ぶ板張りの床には、窓枠の装飾で切り取られた、長方形の薄青い月明かりが等間隔で並んでいる。
    3621