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    usizatta

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    花と海とポケモンの楽園【本人の考えるところ四】
     以前、事情があってカントーで探索をしていた時期があった。そこであるトレーナーと知り合いになり、その子が連れていたフォレトスというポケモンと、こちらが連れていた「こうてつ」と名付けたダンバルを交換してもらったことがある。フォレトスは鋼の体に守られて中身が分からないというミステリアスで魅力的な子で、ホウエンにはいないポケモンだ。
     こうてつを託したトレーナーは、ボクの方が受け取ったフォレトスをもともと大切にしていた子のようだった。しかも「ダンバル初めて見た。嬉しい」なんて言ってくれたものだから、ボクもつい鋼タイプのことや、ダンバルは最終的にメタグロスに進化することなどをその子にいっぱい伝えて帰ってきた。
     それでこの間、その子から「交換したフォレトスは元気ですか? もらったこうてつは、今じゃ立派なメタグロスですよ!」と電話をもらった。もちろんボクもフォレトスを大事にしていると答えた。そう、このやり取り自体は今日のことではないのだけど、今日もまたフォレトスの殻をピカピカに磨いていたよ。
     鋼タイプのポケモンって、磨くし、時には油も塗るし、錆びるのは避けたいけどもし錆びてしまった時は落としてあげないといけない。野生の鋼タイプのポケモンだと、定期的に殻や羽などが抜けることで体を整えているようで、昔の人はそれらを集めて甲冑だったり、刀だったりを作るのに利用すると教わったこともある。
     フォレトスはというと、殻が取れて変わるということはなく、何かを食べる時だけ殻を開く生態なのだと、図鑑に書いてあった。中身を見られた人は誰もいない。一瞬だけ素早く開くものだから、どうしても確認できないんだ。でも生き物って食べる時に無防備になりがちだから、その隙が一瞬しか生じないこのポケモンに「慎重だな。誰かに足元をすくわれないようにしてるのか」ってむしろ感心してる。
     分からないことが分かる瞬間というのは楽しいものだけど、無理な方法で解き明かしすぎたり、もしくは自分の物差しで考えてわかった気持ちになるだけなら、分からないままの方がいい。ただ、ボクはむしろ自分の願望を交えてポケモンを考えがちだから、あえてこう書いているところもある。
     ポケモンと人間との間には、どうしたって謎が残るし違いもあるのだけど、その違いが残るままに寄り添える事が好きだ。せっかくのミステリアスな魅力を、自分の安易な妄想で崩すのも少しもったいない。ともあれ、ポケモンの博士が真剣に生態の謎を解明してくれて、その結果として図鑑の内容が上書きされたりすると、やっぱりワクワクしちゃうけどね。

     フォレトスの世話について書いていたのに、なんだか話がそれてしまった。
     今度は他のポケモンの世話について書いてみる。エアームドを育て始めた頃は大変だった。エアームドは羽が鋭く、また飛ぶ時のスピードがとても早いポケモンだ。かわいいところがいっぱいあるけど、例えば、カンカン鳴るくちばしがかわいい。餌を催促するとき、他の鳥ポケモンもあるいはくちばしを開いたり閉じたりするのかもしれないけど、金属が当たる音がするのはやっぱりエアームドくらいだろう。
     ……いやでも、遠くガラル地方にはアーマーガアという鋼と飛行のポケモンもいるらしいね。その子もくちばしがカンカン鳴るのかもしれない。
     ボクは常々、アーマーガアも見てみたいと思っている。それに、ガラルのポケモンで会ってみたいのはその子だけじゃない。ガラル地方で暮らしているニャースは、そうニャースは、なんと鋼タイプだと聞く……どんな毛並みなのか、実際に触って知りたいなあ。
     うん、また内容が違う方向にいってしまったね。
     エアームドを育てて大変だったことは、やっぱり羽の手入れかな。あの刃物のように鋭い羽で彼は戦うのだけど、ゲットしてすぐの頃、ボクは手入れの仕方を間違えて、彼の羽で自分の手をすっぱり切ってしまったことがある。
     ボクの手の方は、すぐに周りの人に助けを求めて治療してもらったのだけど、その間にエアームドの方も俯いて、元気をなくしてしまっていた。
     なんで元気がなくなってしまったのか、その時のボクは彼というポケモンに「傷つけるつもりのない相手を傷つけた罪悪感」といった、人間に近い思考回路があるように想像した。子どもの頃のことだからこの言葉そのままではないけど、こんな感じの想像をした。それでむしろ申し訳ない気持ちになってしまった。でも断定はできない。ひょっとしたら、情けない奴だと判断された可能性もある。
     とにかくあの時、手に包帯をきちんと巻いてもらってから、なんとか気を取り直してエアームドの俯いている頭を撫でようとした。でも彼はボクの手を避けて離れていってしまった。
     そのままどこかへ飛んでいってしまったので、当時のボクは泣きながら探し回った。歩き続けていると、「カンカン」という音が耳に入ってきたので「どこかでエアームドがお腹を空かせてくちばしを鳴らしてる!」と、当時のボクはまた想像した。
     それからもう少し歩いた先に高い岩があって、その上にエアームドを見つけると、彼もまたボクを目に留めて、そして高い鳴き声を上げた……という記憶があるよ。
     その後は確か、ケガした手で必死に岩をよじ登って(よく登れたものだなあ)、逃げられる前にエアームドに抱きついた。岩を登っている間に逃げなかったのはなんでだろうね。抱きついたらエアームドのバランスが崩れて二人で揃って岩から落ちかけたのだけど、エアームドがボクを乗せて飛んでくれたから事なきを得たという感じだ。
     いや、連れ帰った先のポケモンセンターでものすごく怒られたから、無事ではなかったかもしれない。しかし確かに、岩を登ったのも、岩から落ちかけたのも、そもそも手を切ったのも、もともとはボクの不注意が原因だ。
     反省して、それからはエアームドの翼の手入れも少しずつ気をつけて練習した。
     今では彼の翼はそれはもう、キラキラ鋭く輝くくらい磨いてる。誰かに自慢したくなってしまうほどだよ。はいでも、今も手入れは油断しないようにしています。

     さて、数日後にあるポケモンセンターに依頼された講座に参加する。講師としてというか、ゲストとしてというべきか招いていただいたからだ。講座のテーマは「ポケモンの手入れ」ということだ。
     ホウエン地方では、普段あまり四天王やチャンピオンが公の場に顔を出すことはないから、ボクは割と気楽に過ごしている。だから改めてチャンピオンとして大勢の前で話をするというのは面映い。
     でも反対の立場だったら、「ゲストにチャンピオンが来てお話してしてくれます」ということがあれば、やっぱり参加したくなるものだろうかと思う。だから、こうしたポケモンへの知識と興味を深める場に顔を出すのは大切かと頑張ってみている。
     トレーナーが自分のポケモンによって傷つくことも、ポケモンが人によって傷つくこともできるだけ少なくなってほしい。そのための知識や経験談が少しでも話せるといいな。こうしていくつか書き出してるけど、果たしてそのうちのどれかは話すだろうか。どの話題も使わなかったりしてね。
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