それはただの偶然だった。それはただの奇跡だった。それを恐れた人はきっと間違いではないのだと頭ではわかっていた。
分かっていたけれど、受け入れるなんて到底できなくて。壊れた心は身体を与えてくれたはずの審神者に刃を向けてその身を切り裂いていた。
すでに身体は遡行軍のそれに成り果てて、それでも縋りたい思いで自分の空間に顕現前の親友を引き摺り込んで身体を与えて。そして、そして。
「……ごめん、清麿。ごめん」
そして、親友にその美しい刀を向けられるのだ。
「僕は刀剣男士だ。歴史を守らねばならない。今の清麿を、受け入れることはできない」
「うん、分かってる。大丈夫だよ、水心子」
刀を抜いて、相見える。水心子はじ、と清麿を見つめていて、その切先はぶれることなく清麿へ向けられていた。
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