Sweet Happy Birthday「なぁ〜〜もういっそどっかに泊まろうぜ…」
「だーめだって、明日は普通に朝から出勤なんだから」
「だ〜からさぁ、そもそもそのスケジュールがおかしいって話じゃん」
「仕方ないでしょ〜、それが俺たちのお仕事なんだからさ」
先程から助手席で延々と愚痴が止まらない後輩で年下の先輩で、それからまだ気持ちを確かめ合ってはいないが、多分両想いの相棒を宥めすかしながら、愛車のライカを駆る。
時刻はそろそろ23時を回ろうとしていた。
フロントガラス越しに見える景色は、車のヘッドライトが届く範囲以外、漆黒と呼んでも差し支えない闇が鬱蒼と広がっている。
いま走っているのは山あいの森の中。
時おり、連なる木々の切れ間から遠く眼下に街の明かりの煌めきが見えるが、それもベルランドやシールドシティに比べれば随分と控えめなものだ。
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