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    boos20185540

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    boos20185540

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    もだもだする七海さんと七海さんに執着する五条さん!七五です!

    #nnghfes

    愛のその次 心地よい眠りに身を任せていた七海は、寝室に響き渡る着信音に文字通り叩き起こされた。寝ぼけ眼で着信を確認すると、二週間前から海外出張中の恋人からだった。五条が海外に行っている場合は、一応時差に気を遣ってか、メッセージでの遣り取りが多い。
    ーー緊急事態でも起きたのだろうか?
    「はい。七海です」
    「七海のチーズケーキが食べたい。」
    その言葉に、何事かと身構えていた七海は溜め息をつく。
    「人を叩き起こしておいて、開口一番たかりはどうかと思いますが。」一気に声が低くなる七海を誰が責められよう。通話を切り、寝直したいが、後々面倒な事になるのは目に見えている。仕方なしに七海は耳を傾けた。
    「たかりじゃないよ。可愛い恋人からのおねだりだろ。僕への愛が足りないんじゃない?僕はこんなに七海の事愛してるのに。薄情者!」
    めそめそと泣き真似までし始めた。面倒な恋人に、七海のこめかみに青筋が浮かぶ。
    「人聞きの悪いことを言わないでください。そっちでもチーズケーキくらいいくらでも買えるでしょう?」
    「嫌だ! だってこっちのお菓子ってすっごい不味いんだよ!? 初めてこっち来た日にカスタードタルト食べたんだけど、見た目は普通なのに洗剤みたいな味で一口も食べられなかったんだよ!? あり得なくない!?それ以来ぜんっぜんこっちのお菓子食べる気しなくて二週間お菓子絶食状態なの!酷いと思わない!?」
    徐々に増していく音量に、七海は眉を顰め携帯を耳から少し遠ざける。五条の術式は糖分を大量に消費する。加えて無類の甘いもの好きである五条にとっては酷だろう。
    「……体調は大丈夫なんですか?」
    五条はちゃらんぽらんな部分もあるが、身体が資本の業界だ。体調管理には重々気を遣っている事は知っている。最強たる五条が傷を負うことはそうそう無い事も。だが、最強だからこそ、五条は自身のケアを後回しにする傾向がある。
    「無問題!心配なら七海が直接確かめてよ。隅々までさ。」
    含み笑いをしながら誘う五条に、七海は言葉を詰まらせた。

    五条と付き合い始めて三か月。キスやちょっとした触れ合いはしたが、まだ身体を重ねてはいない。いい加減痺れを切らした五条が「自分が下で良いから」と七海に迫ってきたのは記憶に新しかった。七海は、ゴムとローションが仕舞われているナイトテーブルに視線を移すが、欲を振り払うように軽く首を振る。深い深い溜息をつき、体内に燻る熱を外に逃がす。
    「いえ、遠慮します。ケーキがそんなに食べたいなら、こちらに来る途中にでも、買ってくればいいのでは?」
    「買ったヤツも良いけど!七海の作ったケーキが食べたいの!今度の休みでも良いからさー!」
    五条の誘いを遠回しに断ると、不満げな返事が帰ってくるが、深く追及されなかった事に七海は胸を撫でおろす。
     五条が望めば、どんな美味い菓子でも山ほど手に入るだろうに、五条は七海の菓子を食べたがる。今回のように長期の出張で会えない場合など特に顕著だ。七海が作った菓子を、満足げに食べる五条の姿は決して嫌いではない。むしろ好ましいとすら思っている。七海自身、甘いものは得意でないが、五条と付き合いだしてから、七海の製菓スキルは瞬く間に磨かれ、レパートリーもずいぶん増えた。
    「分かりました。帰りはいつ頃になりそうなんですか?」
    「やった!今から飛行機に乗るとこだから明日の十九時にはお前の家に着くと思うよ。お前は?」
    「明日は都内です。残業が無ければ十七時には終わる予定です。」
    「お前、そこはあなたのために残業せずに帰りますって言えよ。」
    茶化しながらも、どこか拗ねたような響きが七海の鼓膜を震わせる。できるならそうしたいが、そうも言ってられないのが呪術師だ。七海は五条ほど強くは無いが、対等でいたかった。必要であれば嘘も吐くし、手段を選ばない事もある。だが、五条に対しては誠実な恋人でいたかった。
    「あなたが相手だから、いい加減な事は言いたくないんです。」
    先ほどまでテンポ良く飛び出ていた音がピタリと止まった。代わりに聞こえるのは、異国の言葉や雑踏の音のみだ。
    「……五条さん?」
    「――っお前のそういうところ、本ッ当ズルい!」
    不意打ちは卑怯だ、とか、このタラシといった文句が聞こえてくるが、紛れもない本心だ。まだぶつぶつ文句を言っていたようだが、聞こえてきたアナウンスと共に止んだ。「じゃあ、僕これから飛行機乗るから。また明日ね。」
    「ええ。お気をつけて。」
    「愛してるよ。ダーリン。」
    揶揄い交じりに聞こえる愛の言葉に、今度は七海が言葉を詰まらせる。
    「……知っています。」
    「そこは『私も愛してます。ハニー。』って言うとこだろ。」先ほどの意趣返しだろう。実に愉し気だ。
    「勘弁してくださいよ。」
    「じゃあ、僕そろそろ行くね。」
    急に黙り込んだ七海を、五条は、特に気にした様子は無いようだ。どこか釈然としないものの、引き留める訳にはいかない。
    「ええ。それでは。お気をつけて。」
    「うん。またねー。」
    五条の声と共に通話の切れた端末を確認すると、まだ十一時を少し過ぎたところだった。明日は朝の七時に伊地知が迎えに来る予定だ。六時には起床するつもりでいたので、寝起きが悪い七海は、いつもよりかなり早めに布団に入ったのだ。明日残業する可能性を考えると、五条が来るまでにケーキを作り終える確率は五分五分だった。今からケーキだけでも作れば、一時には寝られるだろう。五条は次の休みでも良いと言っていたが、普段あれだけ糖分を摂取する五条のストレスを考えると、なるべく早く食べたいはずだ。疲れた恋人のために、ケーキを作るくらいの甲斐性は持ち合わせている。七海は、ベッドから抜け出すと、キッチンへ足を向けた。五条は一度気に入ると、続けて同じ物をリクエストする事が多い。最近はレモンを使ったチーズケーキがお気に入りで、作る事が多い。そういえば、食べたいのがベイクドなのか、スフレなのか確認するのを忘れていた。冷蔵庫を確認すると、二台分作るのに必要な材料は揃っている。七海は寝巻き代わりにしているスエットの上からエプロンを身に着けると、作業に没頭していった。









    順調にケーキを作り続け、あとはオーブンで焼くだけだが、ここでとんでもない事実が発覚した。
    「嘘でしょう……?」
    予熱していたはずのオーブンレンジが、全く作動していなかった。慌てて操作し直すものの、うんともすんとも言わない。そういえば、近頃下ごしらえをする際や総菜を温める時、変な音が聞こえていた。一度修理に出すか、新しい物を調達しなければと思ってはいたが、任務で先延ばしになっていた。幸い、稼働自体は行えていたのだが、とうとうお亡くなりになったらしい。
     よりによって、今故障しなくても良くないか。七海は思わず目の前のオーブンレンジを睨みつけるが、何の意味もない。どうしたものか。七海も仕事があるので、新しいオーブンレンジを買いに行く暇は無い。ネットショッピングも考えたが、五条が来るまでに使いこなすのは難しいし、七海は実物と機能をじっくり確認してから買うタイプのため、これも却下だ。
    七海は携帯を使ってオーブンレンジを使わなくても良いレシピを検索し始めた。ほどなくして炊飯器を使ったレシピを見つけ、事なきを得たかと思えば、そこからが大変だった。まず七海が作ったものとはサイズの大きさや分量が違うため悩む。やっと近いレシピを見つけ、試してみたが、炊飯器のスペックに違いがあるのか、指定通りの時間で設定したのに生焼けだった。一気に疲労が増した気がして、リビングのソファに座り込む。時計を確認すると、既に午前二時を半分ほど過ぎていた。
     一体自分は何をやっているのだろう。
    思えば五条は、七海を茶化す事はあるが、恋人になって以来、七海に愛の言葉を求めた事など一度も無かった。五条に手を出そうとしない事実に不平を言われた事も。七海は、それを心のどこかで安堵していたが、はじめから期待されていないようで、腹立たしい事もまた事実だ。せめて、このくらいはと、七海はソファから立ち上がり、十五分刻みに炊飯器のタイマーをセットする。焦がさないよう細心の注意を祓い、焼き上げていく。ようやく二台のケーキが出来上がる頃には、うっすらと夜が明けていた。予定していた起床時間まで、あと二時間。外ではもう雀が鳴き始めている。眠いが今寝たら確実に寝過ごすだろう。ケーキを冷ます間に今夜の夕飯の仕込みをする事にした。まずは米を研ぎ、十九時に炊き上がるようセットする。夕飯は和食の予定だ。五条が海外から戻る時は、大体和食を食べたがるし、気に入った和食の惣菜を買って来るからだ。材料を確認すると作れるのは二、三品だろう。七海は手早く今夜の夕飯の仕込みを終え、眠気覚ましに熱いシャワー浴びる。身支度を整えると、トーストと、濃い目に淹れたコーヒーを流し込む。歯を磨きながら、鏡を見ると、目元にはいつもよりも濃い隈ができていた。七海は見なかった事にして、伊地知から到着の連絡を受けるまで、定時に上がれるよう、いつもより入念に情報整理を行う。その甲斐あってか、七海が帰宅したのは、十八時。定時には上がれなかったが、このくらいであれば許容範囲だろう。夕飯の仕込みは朝のうちにほぼ済ませてあるため、あとは煮るだけ、焼くだけだ。シャワーを浴びるくらいの余裕はある。七海は簡単に汗と埃を洗い落とし、髪を素早く乾かすと、夕食の仕上げに入った。テーブルに料理を並べ終えたところで、インターフォンが五条の到着を告げる。
    「な~な~み~!あ~け~て~!」
    合鍵を渡しているのだから勝手に入ってくれば良いのに、七海が在宅している時は、自分から入室してくる事はまず無い。七海は仕方なく手を止めると、玄関へ足を向けた。
    「七海!ただいま!」
    「おかえりなさい。五条さん。」
    ドアを明けた途端、突進してきた五条を、七海は難なく受け止めた。五条の腕に下げられた紙袋が、乱暴な扱いを咎めるように、がさりと音を立てる。
    「あー、二週間ぶりの七海だ……」
    七海の肩に頭を載せて、ぐりぐりと擦りつける様は、さながら大型犬のようだ。七海も二週間ぶりの恋人の感触を少しだけ堪能したが、すぐに両腕を伸ばし隙間を作る。これ以上五条に触れていたら、七海は何をするか分からなかった。
    「食事の用意ができていますので、早く入ってください。デザートにリクエストされたチーズケーキもありますから。」
    身体を離され、やや不満げだった五条の顔が、七海の一言で子供の様に破顔する。
    「やった!スフレ?ベイクド?」
    「ご自分で確かめてください」
    七海は敢えて答えず、五条の入室を促した。
    急いで手を洗い、冷蔵庫を開けた五条は「うっそ!まさかの両方!」と感嘆の声を上げた。
    「でも珍しいね。七海がいっぺんに二種類作るなんて。」
    さっそく二台のケーキをテーブルに置こうとする五条に、七海が「夕食を食べてからにしてください。」と宥める。
    「今回どちらが食べたいのか確認できませんでしたし。以前食べ比べしてみたい、と言っていたじゃないですか。」
    七海が不自然に五条から視線を逸らす。その耳がほんのりと赤く染まっている。
    「七海が……デレてる……。」
    珍しいものを見た、と言わんばかりに詰め寄る五条から、慌てて距離を取る。
    「……早く席に着かないとケーキは無しですよ。」せっかく作った夕飯を無駄にする気か、と普段より眉間に皺を寄せて着席を促す。ただならぬ雰囲気を醸し出す七海に、五条は慌てて椅子に腰掛けた。
    「す、座った!座ったよ!」
    五条が座った事を確認すると、七海はテーブルから離れ、ご飯と味噌汁をよそい始める。五条は、テーブルの上に並ぶ料理を見て、帰る途中に買ってきた、土産の存在を思い出した。
    「そう言えば、これ。帰る途中にお前の好きそうなおかず売ってたから、買ってきた。今温めて食べた方が美味いって言ってたから、レンジ借りるわ。」
    五条が、慣れた手つきで中身を皿に移し、オーブンレンジの扉を開ける。それを目にした七海は、オーブンレンジが故障していた事を思い出した。
    「五条さん、そのオーブンレンジ、昨夜から故障してるので、使えないんです。今日はそのままで食べましょう。」
    「そうなんだ。……ん?七海、昨夜オーブンレンジ壊れたなら、あのケーキどうやって作ったの?」
    五条の最もな疑問に、七海の身体が硬直する。
    「それは……」
    何とか誤魔化そうとするが、言い淀んでしまった時点で、嘘を突き通せるはずもない。
    「……今回のケーキは、オーブンレンジが使えなかったので、炊飯器を使いました。」
    七海の答えに、五条は少し驚いたようだった。「へえ〜炊飯器でそんな事できるんだ。知らなかった。お前んちの炊飯器とオーブンレンジ、大学生の時から使ってるって言ってなかったっけ?」
    「ええ。そうですね。」
    余計な事は言わないよう、七海は簡潔に答える。
    「でも火力考えるとオーブンレンジよりは時間かかるよね?いつ作ったの?」
    一番聞かれたくなかった事を聞かれ、内心舌打ちする。
    「今朝です。」
    明け方までケーキ作りに奮闘していたので、決して嘘ではない。海は努めて普段通りの声で答えた。次の瞬間。いつの間にか七海の背後にまわり、目隠しを取った五条が、勢い良く七海の顔を自分の方に向けさせる。「ッちょっと五条さん?!」
    身体はシンクの方を向いたまま、顔だけ無理矢理後ろに引っ張られているので、地味に痛い。
    「うそつき。」
    嘘をつく相手は、選んだ方が良いよ、と微笑む五条は、口元こそ笑みの形を描いているが、目は全く笑っていない。
    七海は、今度こそ観念し、深いため息をつくと、
    「とりあえず、夕飯が冷めますので、食べながらにしませんか」としか言えなかった。
    七海が事の顛末を説明していると、明らかに拗ねて不機嫌だった五条の顔が、驚きに変わったかと思えば、みるみるうちに喜色を帯びて行く。
    「いや、七海の気持ちは嬉しいし、言い出したのは僕だけどさ、何もそこまでしなくても良かったのに。」
    五条の言葉に、七海がそっぽを向く。
    「……私だって疲れた恋人のために何かしたい気持ちは持ち合わせています。」
    七海は自身の頬と耳に燃えるような熱を自覚した。
    五条は、大きな瞳を見開くと、テーブルから身を乗り上げ、強い力で七海に抱きついてきた。
    「七海―――――――!めっちゃくちゃ可愛い!今めちゃくちゃちゅーしたい!っていうかちゅーさせろ!」
    七海は目を白黒させながらも何とか五条を落ち着かせようとするが、五条の行動の方が早かった。
    「ちょ、五条さっン―――――!」
    合わさった唇から、五条の舌が七海の舌に絡まる。七海はその舌を遠慮なく捕らえると強く吸い上げた。
    「っは……あ……」
    五条の口から、喘ぎとも吐息ともつかない音が零れる。
    かすかな水音に七海の身体が一気に熱を帯びた。
    ――ダメだ、これ以上は。
    「……っ五条さん!」
    七海は勢いよく五条の身体を剥がす。
    五条は一瞬目を大きく開いたかと思うと、七海を鋭い目で睨みつけてきた。
    「七海はさ、僕とこういうことしたくない?」
    「……そんなこと、あるわけないじゃないですか。」
    「じゃあ、どうしていっつもそういう雰囲気になるとはぐらかすわけ?」
    「それは……」
    七海だって健康な男だ。好きな相手に触れたいと思うし、抱きたいとも思う。だが、同性同士のセックスは準備も時間も掛かる上に、受け手の負担も大きい。五条も七海も同性との性交渉はお互いが初めてで、全てが手探りの状態だ。五条を傷つけたくない、負担をかけたくない。その気持ちが、七海の欲にブレーキをかける。そんな七海の気も知らず、五条は先ほどのように七海を煽る。

    ――愛とは呪いに他ならない。七海は、どうあっても五条より先に逝く。五条をそんな呪いで縛りたくはない。五条は、誰か一人に縛られてはいけないのだ。その一方で、どうしようもないほど自分に縛り付けてしまいたいと願う自分がいる。相反する激情は、己を律する事を信条とする七海ですら抑えつけるのは難しい。ひとたび身体を繋げてしまえば、七海は際限なく愛という呪いを五条にかけてしまうだろう。術師から呪霊は生まれないとされているが、術師本人が呪霊になる事もある。自身が五条のせいで呪霊に転じるなんて冗談じゃない。大切な人を手にかけなければならなかった彼に、自分の死を見送らせるなんて残酷な真似、どうしたってしたくなかった。
     七海は、本当の気持ちを口に出すのは憚られ、無難な言葉を口にする。
    「……私はただ、あなたの身体の事を思って――」
    「頼んでねえよ!そんなこと!」
    珍しく声を荒げる五条に七海は目を瞠る。
    「五条さん……」
    七海が五条に手を伸ばすと同時に、五条は七海に背を向け、速足で玄関に向かっていった。手早く靴を履き、扉に手をかける五条の手を、七海は慌てて掴む。
    「どちらに行かれるんです?」
    「……今の僕じゃ、お前の相手にはならないみたいだから。経験を積んでくる。」
    七海は一瞬五条が何を言っているのか、わからなかった。
    「は?」
    「外に出れば、練習台になる男なんか山ほど居る。」
    その言葉を聞いた瞬間、七海の中で何かが切れた。
    七海は、勢いよく五条の身体を反転させ、思い切り
    玄関の扉に押しつけた。
    「痛っ……!んんっ!」
    五条が痛みに呻くのも構わず、その唇を奪う。五条の両腕が、咎めるように七海の肩を叩き、離れようとするが、七海はお構いなしに両腕でその身体をきつく抱きしめ、舌で、唇で五条の口内を蹂躙する。
    「……あっ、やぁ……!」
    同時に、下半身の五条自身を、膝を使って擦り上げる。
    「……ひっ、ああ!」
    その瞬間カッと目を見開いた五条が、びくびくと背を震わせる。
    「……七海っ……!」
    潤んだ蒼玉の瞳が、七海を見つめる。
    その瞬間、七海の胸に熱い物が込み上げる。
    ――この人を愛する覚悟も、自身が呪霊にならない自信もないけれど――。今はただ、この人が欲しい。この綺麗な人に他の誰かが触れる事など、心底我慢ならない。
    「……私は、独占欲の強い男です。このまま貴方を抱いてしまったら、もう離してさしあげる事はできませんが、それでもよろしいですか?」
    七海の言葉に、五条は自ら七海の頭を抱き寄せた。
    「ばーか。僕は最初っからそうしろって言ってただろ。」
    五条の言葉に、七海は微笑んだ。
    「そうでしたね。」
    七海は、五条の手を取り、寝室へと向かった。



    深夜――。

    裸で抱き合ったまま、深い眠りに落ちていたはずの人影が片方、ゆらりとベッドの上で上体を起こした。しなやかな裸身を反らせ、五条は無造作に前髪をかき上げる。五条の隣で、眠っている七海に目をやると、五条は愛おし気にその頬を指でそっと撫でる。よほど深く眠っているのか、七海はぴくりとも動かない。
    ――ようやく手に入れた。
    まさか七海があんなに簡単に引っかかるとは予想外だったが、結果オーライだったので、問題は無いが。
     五条は、七海が自分に手を出さない理由を正確に把握していた。理解していた上で、どうしようもない我儘だと分かっていても、それでも五条は目の前の男が欲しかった。いつか必ず自分を置いていくからこそ――。未練は残るだろうが、後悔が少しでも無いように。五条は、七海の唇にそっと自らの唇を重ね合わせた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃🎃👏🎃💒💖💖💒💖💖💒💖💖❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤💞💞💴💴💴💴💴💴💴💴💴💴
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    Replies from the creator

    boos20185540

    DONE七五でちょっとえっちです。
    リクエスト「あ〜、もう最悪……」
    今朝、七海に抱かれる夢を見て、五条は夢精した。この歳になって夢精なんて。中学生じゃあるまいし。五条は、乱暴な手つきで、汚れた下着を手で洗う。最後に七海と会ったのは、こっそり隠し持っていた七海の手帳と、履歴書が見つかった日だ。七海は五条を怒るでもなく、責めるでもなく、五条の執着を喜んでくれた。高専の頃から自分を好いていたという七海も、五条の持ち物を持っていた。想定外の歳下の恋人の一途さと、いじらしさに、五条は柄にもなく、胸が高鳴った。やはりあの夜、七海の泊まるホテルに押しかけてでも、セックスしておけば良かった。そうすれば、ここまで欲求不満になる事もなかったかもしれないのに。律儀な恋人は、ホテルからタクシーが迎えに来ると、あっさり五条の部屋を後にした。帰り際、「繁忙期が開けたら、今度は私の家で過ごしましょうね。朝まで離しませんから、そのおつもりで」と色っぽい顔と声で微笑まれた。歳上の矜持で何とか耐えたが、その姿が視界から消えた途端、フローリングの上で悶え、のたうち回った夜が懐かしい。最愛の恋人がいるのに、近頃はめっきり自分の右手が恋人だ。七海とセックスする様になってから、正直もう前だけじゃ満足できない。最近は自分で後ろもいじっているのだが、どうしても七海がしてくれる様にはできなくて、もどかしくて仕方ない。射精はしても、どこか物足りなくて、自身で煽るだけ煽った結果、ますます欲求不満に陥るという悪循環に、五条は頭を抱えた。汚れの落ちた下着を洗濯機に放り込み、壁に掛かっている時計を確認すると、まだ伊地知の迎えまでに時間があった。今日は、悠仁達の任務が一件、自身の任務が三件、腐ったミカン達との下らない会議が一件入っている。繁忙期のせいで、クソな上層部と会う機会が少ないのは良い事だが、忙しいと七海に会えなくなるのが玉に瑕だ。腐った上層部とやり合った日は、七海は五条に甘くなる。七海のふわふわもちもちの胸に顔を埋め、その匂いを思いきり堪能すると、疲労や、嫌な気持ちが、遥か彼方に飛んでいくから不思議だ。恋って凄い。コンビニのおにぎりと、サンドイッチで、簡単に朝食を済ませる。あー、こんな味気ない食事じゃなくて、七海の作るパンケーキが食べたい。生クリームとフルーツたっぷりのパンケーキは、口に入れるとふわふわで、まさに幸せの味だ。供されるサラダとミネストローネは、野菜
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