上手く言えなくて「これ、ココにやる」
スウェットのポケットから握ったものを九井の手のひらに持たせる。一方的に押し付けるように渡され、不思議そうに首を傾げていた九井は僅かな重みに目を落とした。
「え、何これ。イヌピーどっから持って帰ってきたんだ?」
じゃら、と小さく音を立てたのは丸く連なったパワーストーンだった。複数の石が連なってひとつの輪っかになったブレスレットはシンプルな色で統一感のある洒落たものだ。
単純に、乾がこの手のものに詳しいとは思わない。トランプ占いやスピリチュアルも興味がない。そういうものにつき合わせる時は大抵、面倒くさそうな顔で適当な返事しかしないのだから話しがいがない。そんな乾がパワーストーンを持っている、というのは九井にとって不思議なことだった。
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