Rent君に「愛してる」と告げるのは、もう何度目だろう。
あたたかい我が家のドアを開けて、満面の笑みで手を振り出かけていく君をこうして見送るのも、その逆も、もはや日常に当たり前に溶け込んだ風景だ。
…初めて、あの廃船の部屋から君を送り出した時。俺は君になんと言ったのだったか。
あの時なら、「この場所のことは忘れてくれ」でも、「二度とくるようなことにならないように」でもよかったはずだ。それでも俺の口は、気付けば「いつでもここを使って良い。君が困っているなら、だけど」などと宣っていた。
それがまさか、「いってらっしゃい、愛してるよ」になるだなんて。
ついさっき見た向日葵のような笑顔を思い出す。向日葵は好きだ。見ているだけで、心の奥底に小さく太陽が灯り、暖かく照らされている気分になる。
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