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    えと。

    帝幻/おばみつおばのえろ小噺置き場。
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    普通なんてつまらない。特殊性癖ばかり

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    えと。

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    シール内職(?)帝幻に触発されての小噺。

    ー話題沸騰。涙なしには読めない感動の愛と幸福の物語。変幻自在の小説家、夢野幻太郎待望の新刊。
    壮大な煽り文句をつけられ、幻太郎の本が平積みされている。荷物持ちにと連行された本屋で見かけるこの光景にも見慣れたものである。
    「愛と幸福の物語、ねぇ」
    なんだかありきたりで軽い言葉のような気がしてしまう。じゃあ似合いの煽り文句が付けられるかと言えばそうではないが。
    「おや、小生の新刊に興味がおありで?」
    また2、3冊俺が持っている籠にずしりと本が入れられる。
    「内容はなんとなく知ってるけどな。あの修羅場を越えてこーやって本屋に並んでるとなんか不思議な気分だな」
    今回はマジでギリギリだったみたいで原稿用紙を並べたりとかちょっとした手伝いをした。内容を知った上でこの物語が愛と幸福に分類されるのがイマイチ腑に落ちないのである。愛とか幸福って何だろう。今まで気にしたこともない疑問が頭をよぎる。
    「まぁ、愛やら幸福なんて目に見えないものは人によって定義が違うってだけの話ですよ」
    今日はこれくらいにします、なんて10冊以上本が入った籠を満足気に眺めて幻太郎はレジへと歩いていく。その後ろ姿に思わずお前にとっての愛と幸福って何なの?って口に出しそうになってしまった。
    結局その後、幻太郎の家に世話になったついでにその新刊を読んだ。あらすじだけで言えば不遇な幼少期を過ごした青年が運命の人と巡り逢って紆余曲折ありつつも最終的にその人と家庭を築き幸せになるっていうよくある話。よくある話と思いきや所々に幻太郎らしいユーモアがあったりして、本を読まない俺でも飽きずにするりと読んでしまえる話だった。
    「はぁー、家庭を持って子供が産まれたら金が無くても幸せなんかねぇ」
    これが世間一般での幸せの形だと言われて違うという反論こそする気はないが自分にもそれが当てはまるかと言われれば答えは明白だ。俺は一生ギャンブルをし続けたい。それが俺の幸福。これは断言できる。しかし、夕飯の片付けをしている幻太郎の後姿を見てむずむずとした気持ちになる。幻太郎はやっぱり世間一般的な幸せを望むのだろうか。



    夢を見た。夢だって気付いたのは自分の格好がいつもと違ったから。夢だってわかっているけど自分の意思とは関係なく身体は動く。どちらかと言えば映画を見ている感覚。どうやら今は仕事中らしい。以前誘われて手伝ったシール貼りのバイトみたいだ。どうせならギャンブルする夢が良かったなぁなんて思っていると終業時間のチャイムが鳴る。出口で今日の分の給金を貰う。よし、この金で一つ賭場にでも行くかと給料が入った封筒を握りしめていると横にいるおっちゃんが話かけてきた。
    「だいちゃん、早く帰らなくていーのか?嫁と子供が待ってんだろ?」
    「だいちゃんには勿体ねー美人の嫁さんだよなぁ」
    「おう。自慢の嫁と息子だぜ。じゃーなおっちゃん達。また明日‼︎」
    口から勝手に言葉が溢れていく。待て待て、嫁と子供って何だよ⁉︎これは夢だということを一瞬忘れて混乱する。俺いつ結婚なんてしたんだ⁉︎


    「けーったぞ」
    がらがらと扉を開ける。冷静に見てぼろぼろの家。まぁ俺にとって家があるだけマシといったところだろうか。夢なんだから豪邸とかに住まわせてくれよと思う。とてとてと足音をさせて出迎えてくれたのは幻太郎だった。何でって思っていても俺の意思での会話は叶わない。俺、幻太郎と結婚したのか。
    「早かったですね。ほら、パパが帰ってきましたよ」
    そう言って幻太郎は背中をこちらに向ける。そこには俺と同じ髪色をした赤子がすやすやと眠っている。
    俺が、幻太郎と結婚して子供も産まれているなんて‼︎
    頭が混乱する。確かに幻太郎とはそーゆー事も何回もしてるけど、幻太郎って子供産めたのかよ…赤子を撫でる手は傷だらけだし着ている着物もぼろぼろでこの家庭が貧乏である事を悟る。それでも幻太郎の瞳は慈愛に満ちている。ぐずって泣き出した赤子を抱っこしたらそれはちゃんと温かくてなんだか涙が出そうになった。
    子供を囲んでにこやかに過ごしている家族をどこか他人事のように俯瞰した位置から眺めている。貧しくても笑顔が絶えない温かい家庭。じわじわと心が温かくなる。その光景は確かにいつかの俺が望んだ光景なのかもしれない。そこでふわっと意識が覚醒する。



    「んがっ、……」
    ぱちぱちと瞬きをする。そこは見慣れた幻太郎の家の天井で幻太郎がこちらを覗き込んでいる。
    「あ、起きました?お風呂入ってくださいね」
    「幻太郎……?」
    「はい。幻太郎ですよ。貴方小生の本読みながら寝落ちしてたんですよ。つまらなかったですか?」
    ちゃんと読み終わっているから寝落ちではないのだが、しゅんと少し悲しそうな顔をした幻太郎にぎゅっと心が痛くなる。言わなきゃ、と焦りにも似た感情に支配される。
    「幻太郎、俺お前の事幸せにするから。子供のオムツもちゃんと変えるし抱っこもする。ギャンブル、は辞めれねーけど、なるべく早く家に帰ってくるから‼︎」
    がっと幻太郎の両手を握って真剣な顔で訴える。幻太郎は一瞬ぽかんとした後けたけたと笑い始めた。
    「あははっ、帝統、寝ぼけてるんですか?」
    言われて気付く。握った幻太郎の手はペンだここそあるが滑らかで着ている着物もいつものだ。もちろん背中に子供は居ない。
    「ふふっ、貴方、一体どんな夢を、見ていたんですかっ」
    涙が出るほど幻太郎は笑っている。夢と現実をごっちゃにした恥ずかしさで顔が熱い。それでも握った手は離せない。
    「本の内容に影響されちゃいました?相変わらず帝統は面白いなぁ」
    「……忘れてくれ」
    恥ずかし過ぎてその場に蹲る。ぜってーしばらくネタにされるし、乱数にもバレれたら最悪だ。
    「貴方、意外といいお父さんになるのかもしれませんねぇ」
    ひとしきり笑った後、幻太郎がぼそりと呟く。お腹に手を当てて幸せそうに微笑む。
    「……は?まさか?え?」
    「……もう少ししたら言うつもりだったのですが、妊娠、3ヶ月です」
    ぶわりと体温が上がる。幻太郎の薄い腹にそっと抱きついて耳をくっつける。とくんとくんと規則正しい幻太郎の心音ときゅるきゅるというお腹の音。新しい生命の音が聞こえるのだろうかと耳を澄ませる。ぽこんと小さな音が聞こえた。
    「俺、とーちゃんになるのか」
    しみじみと呟けば幻太郎が吹き出す。
    「っつ…‼︎あははっ、帝統、流石に、それは……嘘ですよ」
    「って、嘘かよっ‼︎」
    笑い過ぎて途切れ途切れに幻太郎が言う。ぽかんっと勢い良く頭をはたく。それでも幻太郎は楽しそうに笑っていた。心臓がばくばくしている。子供が出来たという嘘にそれはそうだと冷静になる思考にちょっとだけ残念だという気持ちが混ざっていた。
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