あきめぐ/ひとりじめ 美人は三日で飽きるというが、あれは全くの出鱈目だ。二階堂慶晃は、自身の腕の中にいる男を見てそれを知った。
白磁の肌は滑らかなカーブを描いており、形の良い顎に繋がっている。小さな口からは規則的な寝息が溢れており、それがひどく慶晃を安心させた。
桜色の髪はいつも絹糸のようにしなやかで、指を通せばするりと逃げていってしまう。頭を撫でれば、凹凸など一つもなくつやつやとした感覚を指に伝えてくる。
しかしこうして眠っている時には枕と擦れてしまうのか、少しぼさついて髪先があちらこちらの方向を向いていた。だがそれも、まるで絵画の構図かのように計算されたバランスの末かと思わせるのだから恐ろしい。
髪と同じ色のまつ毛は驚くほどに長く、こうして伏せていると影を作っているのがよく分かる。そして今は隠されている、その奥の瞳は朝の海面に少しだけ似ていた。もしかしたら宝石の中には、彼の瞳を表すのに相応しいものがあるのかもしれない。けれど慶晃は、それを知らなかった。
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