Shifted, but Stable Slumber 淡いレースのカーテンが引かれた寝室は静謐で、空気さえもこの部屋で眠る病人のためにじっと身じろぎをやめている。
今は目を覚ましてます、と微笑む彼の妻に見送られ、男はそんな雰囲気を意に介することなくずかずかと足を踏み入れた。その足音と気配に寝台の上の掛布の塊がうごめく。
「……ソル?」
「大したざまだな」
「すまない……見苦しいところを見せる」
ぐったりと枕の上に短い金糸の髪を散らしていたカイは億劫げに眼をひらいて寝返りを打ち、掛布から出した右手でくしゃりと前髪をかきまわす。精一杯身じまいをしようとしているらしいが、ソルに言わせればそんなものは馬鹿げている。
病人はあろうことかそのまま手をついて起き上がろうとするので、ソルは枕元の椅子にどっかりと腰掛けて舌打ちをした。
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