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    otk_ota

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    本当にすみません

    ぬいぐるみ レヴィアタンと伊吹が二人で出かける時、彼はよく小さなぬいぐるみを持ち歩いている。花ルリたんだったり、おーちゃんだったり。食事をする前にぬいぐるみと一緒に写真を撮る、綺麗な景色があったらぬいぐるみと一緒に写真を撮る、といった使用例が挙げられる。要するにオタクである。
     彼が楽しそうに写真を撮るのを見るたびに、伊吹はどんどん感情が膨れ上がった。そしてついに今日爆発した。
    「私もそういうかわいい人形がほしい!」
    「伊吹も推し活する!?」
     目を輝かせたレヴィアタンが伊吹の手をガシッと掴んだ。
    「する。レヴィの人形がほしいけどないから作る。手伝って」
    「あ、ぼくなんだ」
     レヴィアタンは手を離して着席した。なんでわざわざ自分の人形を作らないといけないんだ。というかぼく!?
    「もしかして、ぼく、伊吹に推されてる……?」
     伊吹のゴリ推しにより、八割ほどレヴィアタンが、残りの二割は伊吹が制作した手のひらサイズのレヴィぬいが爆誕した。
     そして彼はこれを深く後悔する。今、頭を抱えている。
     目を閉じてもかぶりを振っても強制的に流れ込んでくる第三者の感覚。柔らかくて暖かい、人間の肌。ときどき降ってくるふわふわの感触。レヴィぬいの感覚が本人に流れ込んでいるのだ。
     バスタブベッドの中でレヴィアタンは悶々としていた。これはどういう状況だ。きっと伊吹はレヴィぬいを愛でている。撫でて、抱きしめて、キスをしている。
     この柔らかい何かに包まれるような感覚。どこだ、何処なんだ。手のひらにしてはふわふわすぎる。レヴィアタンはほわほわんと伊吹の体を思い浮かべてしまい、頭の中で自分を殴り飛ばした。最低だ、ぼく。
     嵐は過ぎ去るものだ。しばらくじっとしていると、伊吹が寝てレヴィぬいを手放したのか体に流れ込んでくる感覚が消えた。ホッとしたレヴィアタンは気絶した。キャパオーバーだった。
     そして丸一日寝ていた自分をレヴィアタンは呪った。なぜ起きなかった。なぜ、なぜ起きてレヴィぬい感覚共有問題を解決させなかったのか。
     レヴィアタンは再び悶々としている。今度は触覚のみならず、視覚まで共有されている。伊吹はきっと風呂に入っているのだろう。なぜレヴィぬいも一緒にいるのか。その答えはぬるま湯に浸かっている感覚が物語っていた。
     確かに定期的にぬいを優しく手洗いするのは大切だ。でも、お風呂に入っているときじゃなくていいだろ!? レヴィアタンは目を閉じても見える伊吹の肌に苦悩している。きっとレヴィぬいはぬるま湯で満たされた風呂桶に入れられているのだろう。そして伊吹はバスタブの中だ。お湯に浸かっているのだろう。鎖骨より少し下は見えないから、おそらくそうだ。
     そしていずれ伊吹は立ち上がってバスタブから出る。レヴィアタンはいつそれが来るのかとドキドキしていた。見ていいのか。よくないだろ。見ないようにしても見えるのはどうしようもない。いや、どんな理由があるにしろ好きな子の裸を勝手に覗くのはダメだ。故意じゃなくてもダメなものはダメだ。ぼくがぼくを許せない。
     レヴィアタンは決意した。今から持てる全ての力を使ってレヴィぬいとの感覚を遮断する!
    「うおおおぉ!」
     間に合わなかった。
     レヴィアタンは自己嫌悪で白い灰になった。
     戦え、レヴィアタン! 立ち向かえ、レヴィアタン!
     彼とぬいの戦いはまだまだ続く──。
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