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    くるる

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    くるる

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    イチ若SS ※ほんのりチュー(?)してる
    20才のお誕生日の話
    まだイキリ若ではない(いつからイキリになったのか?)

    今日、俺と若は20才の誕生日を迎えた。

    「若、誕生日おめでとうございます!」
    「ああ、ありがとな。イチもおめでとう」
    「へへ、誕生日が同じ日なんて、すごい運命的ですよね」
    「お前と運命的に結ばれててもイヤだけどな」
    「何でですか!」

    そして俺と若は乾杯をした。
    若がひとり暮らしをしているマンションで、親っさんが用意してくれたシャンパンを2人で飲んでいる。
    若は身体のこともあって、お酒を飲んでも大丈夫なのかという心配があったが、そこは主治医に確認して、少しくらいなら大丈夫とのことだった。

    若は身体が弱くて、脚も不自由で歩けない。
    ずっと車いす生活で、色々な制限がある生活を強いられてきた。
    20才になったお祝いに、お酒を飲む楽しさくらい味わわせてやりたい。
    そう考えた親っさんが用意してくれたシャンパンだ。

    若と2人で20才の誕生日を祝えるなんて、俺はすごく幸せだ。
    来年も、再来年も、その次の年も。
    ずっとずっとこんな風に、若と誕生日を一緒にお祝いしたい。

    組員の中には、俺が若のお守りをさせられてるって言うやつもいるけれど、俺はそんな風に思ったことはない。
    我が儘な若に奴隷みたいに振り回されているとか言うやつもいる。ひどい話だ。
    若は身体が不自由で、普通の人が当たり前のように出来ることも一人では出来なくて。
    いっぱいいっぱい我慢してるんだから、少しくらい我が儘言ったっていいじゃないか。
    俺は若のそんなところだって、かわいいって思ってる。

    親っさんが用意したシャンパンは、すごく上等なものらしい。
    アルコール度数は低めで、初めて飲む酒にはちょうど良いとのことだった。
    沢城のカシラには「若に飲ませていいのはグラス2杯までだ。ちゃんと見とけよ」と釘を刺されている。

    家政婦さんが用意してくれたオードブルをつまみながら、グラス1杯分を飲んだ頃だ。
    若の様子が……おかしい。

    顔も赤いし、なんだか目がとろんとしているような。

    「若…大丈夫ですか?」
    「んぁ?……なにが?」
    「なにがって…もう酔ってるんじゃ」
    「ヨットに…乗るんじゃ?」
    「ほら酔ってるでしょ!」

    若は酒に弱い体質なのだろうか。
    正直、俺は1杯飲んだくらいじゃ何も変わっていない。
    シャンパンはすごくうまいが、これくらいならめちゃくちゃうまい炭酸ジュースって感じだ。
    でも若は完全に酔っている。
    カシラにはグラス2杯までと言われているが、これ以上飲ませるのはまずい気がした。

    「若、若きっとお酒に弱い体質なのかも…もう飲むのはやめときましょう」
    俺は若が持っていたグラスを取り上げた。
    「イチ、何で酒を取り上げるんだよ」
    「若、もう結構酔ってるでしょ?やめときましょう、ね」
    「イチがいじわるする…」
    若はほっぺを膨らませて、むくれている。かわいいな。
    「イチのいじわる…イチは俺のことが嫌いなのか?」
    「何言ってるんですか!俺は若のことが、世界で一番、好き」
    「セカイデイチバン?お前は春日一番だろ!自分の名前間違えてるぞ!」
    そう言って、若はくすくすと笑い出した。
    いや自分の名前くらいわかってますよ!もう…
    「ほら、若、もうベッドで休みましょう」
    「やだ、まだ飲む…」
    「ダメです!それに若、もう眠いんじゃないですか?」
    「う、うーん……イチ、抱っこして」
    「はい、抱っこして運んであげますから」
    俺は若をお姫様抱っこして、寝室へと運んだ。
    若はとても軽い。身長こそ俺と同じくらいあるが、体重は俺より10kg以上軽いんじゃないだろうか。
    筋肉も脂肪も少なくて、手足も細くて、力をいれれば折れちまいそうだ。

    俺は若をベッドに優しく寝かせた。
    「若、脚のばしますね」
    「ん……」
    若は、酔うと眠くなる体質でもあるのかな。
    若にふとんをかけて、
    「それじゃあ、俺、酒とか食いもんとか片付けて、帰りますから。おやすみなさい、若」
    部屋から出て行こうとすると、若は俺の上着の裾を引っ張って呼び止めた。
    「どうしたんですか?」
    「イチ、キスして」
    「…え?」
    「ん…」
    若は目をつむって、俺からのキスを待っている。
    若のキス待ち顔……
    思わずゴクリと唾を飲み込んでしまった。
    若……
    俺は若の頬にそっと手を添え、その愛らしいピンクの唇に…

    ちょ、ちょっと待て!春日一番!!
    これは…おやすみのチューなのでは?
    きっとそうだ…いつも親っさんやカシラにもしてもらってて、それで!
    (おやすみのチュー、おやすみのチュー、おやすみのチュー…)
    俺は念仏のように心の中で唱えながら、若のサラサラの前髪をかきあげ、おでこにそっとキスをした。
    「わ、若、おやすみなさ…」
    「イチと寝る」
    「………え?」
    「イチと寝たい」
    「はああああ!?」
    え!え!寝るって!? え!?
    それって…つまり…夜のお誘い?
    い、いいのか、しちまって…これって据え膳食わぬはってやつか……よし!
    若…それじゃあ……いただきます!!!!

    …って、いや、ダメだダメだ!
    そりゃ俺は若のことが好きだし、そういうことをしたいと思っているけど!
    若の身体の負担を考えたら、やっぱりできねぇ!
    俺は、若は絶対元気になるって信じてるし、そういうことは若が元気になってからって思って我慢してるんだ。
    「い、いや、ダメですよ若、俺だってしたいですけど…若の身体が…」
    「もう、早くー、隣に来て、一緒に寝ろ」
    若は自分の横の空いたスペースをぽんぽんと叩いている。
    「ん?」
    あれ? なんか違うな。添い寝ってことか?
    添い寝なら、いいか…

    …いや、添い寝もダメだ!
    若と添い寝はすごくしたい!
    だが、酒も食いもんも散らかしっぱなしにして、若の家に泊まって、しかも添い寝までしたら、沢城のカシラにぶん殴られる!(下手したら殺される!!)

    「い、いや、ダメですよ若…俺、片付けして帰らないと…」
    「なんだよイチ…俺の言うことが聞けないのか?」
    若がジト目で睨んでくる。
    「………イチ、俺の携帯電話、取って」
    「え?どうするんですか?」
    「沢城に電話する。イチが言うこと聞かないって」
    まずい!!!!
    若のヒートアクション「沢城のカシラに電話の極」が発動しちまう!
    「やめて下さいよ若ぁ…俺、カシラにぶん殴られちまいます」
    「じゃあ…俺と一緒に寝ればいいだろ?……早く」

    どうしたらいいんだ。

    ・添い寝を断る→カシラに殴られる
    ・添い寝をする→カシラに殴られる

    どっちを選んでもカシラに殴られるじゃねぇか!!!!

    ……いや、待て。
    この2択であれば、どちらを選ぶかは決まっているじゃないか。

    俺は若と添い寝したいんだ。

    どちらを選んでも殴られるのであれば、「添い寝をする」を選ぶに決まっている!!!!!!

    「若、一緒に寝ます」
    「うん」

    俺は若の隣に横になった。
    若は俺の手をぎゅっと握って、まもなくスヤスヤと眠りだした。
    若の寝顔は天使のようだ。ずっとそばにいて守ってあげたい。
    俺も若の天使の寝顔を見ながら、眠りに落ちた。


    「ん…」
    朝目が覚めると、若の顔が目の前にあった。
    どうやら若のほうが先に起きていたようだ。
    「あ、若、おはようございます。よく眠れました?」
    「…イチ…なんで、一緒に寝てるんだ…」
    「なんでって、若が一緒に寝ようって」
    「一緒に…?」
    「若、手を離してくれますか?俺、昨日の片付けをして、帰ります。あ、朝食の用意もしますね」
    「!」
    若は俺の手を握っていることに気付いて、パッと離した。
    照れているのか、顔が赤い。かわいい。
    ずっと見ていたいな…もうしばらくこのままで……

    「イチ!!てめぇ若のベッドで何してやがる!!!!」
    「うわーーーーーーーーーー!」

    沢城のカシラが、寝室に飛び込んできた。
    問答無用で鉄拳が飛んできて、俺は若のベッドから転がり落ちた。

    「わ、若…ご無事ですか…?」
    「さ、沢城…?」
    「イチ…お前…まさか若をキズモノにしたんじゃねぇだろうな…」
    「き、キズモノ…?」
    キズモノという言葉に反応した若は、おろおろして、今にも泣きそうな顔をしている。

    「し、し、してませんよカシラ!俺は添い寝して欲しいって若に言われて、添い寝しただけです!」
    「若、どこか痛いところはありませんか?身体がベタベタしてるとかないですか?」
    ベタベタしてるって何だよ!!!!
    「え?だ、大丈夫…何も…ないと思う…」
    「とりあえずシャワーを浴びましょう。身体にも異常がないか見せてください。
    添い寝しただけであっても、悪い菌が付いている可能性もありますから」
    悪い菌て……カシラは俺のことバイ菌か何かだと思っているのだろうか。
    「イチ、てめぇはさっさとリビングの机の上を片付けろ。朝食の用意もしとけよ。
    それが終わったらさっさと帰れ!」
    「へ、ヘイ!」
    「さ、行きましょう若。もう大丈夫ですから」

    若はカシラに抱っこされて、バスルームへと消えていった。
    俺はこのあと無事でいられるのだろうか…。
    若が少しはフォローしてくれればいいけど。
    とりあえずカシラと2人きりになることだけは避けなければ。

    …暗殺されかねない。
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