ななみに部屋を片付けられる話 床に座り込む彼女をソファに引きずり上げ、七海はその隣に座る。
「いいですか」
「床が綺麗になったね」
そうではなくて、と言いかけた時に爪先にロボット掃除機が当たり、七海は足を持ち上げる。
「床に物を置かない」
「はい」
「本は積まずに出したら戻す」
「……はい」
「しかし、私と共通する蔵書が多いので今度からは買う前に相談してください」
「……え?」
「管理できないなら私が管理します。……一緒に住むなら二冊もいらないでしょう」
え、ともう一度彼女から声が上がる。痛いほど自分の頬に視線が刺さるのがわかるが、七海は真っ直ぐそちらを向くことができないでいた。音を立てながらロボット掃除機は自分達の足元を行き交い、時折ソファの足にぶつかっては振動を伝えてくる。足を下ろすタイミングを掴めないまま七海は決断的に左側の彼女の方を向く。やはり彼女は自分を見上げたままポカンと口を開けていた。
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