2714五悠『バキ』『ドガ』『ボス』
ある路地裏から、何かを殴っている音が聞こえた。普通ならば関わりたくないので、サッサっとその場から立ち去るのが懸命だろう。そんな誰もが明らかに避けてその道を歩いている中、包帯をした長身の白髪の男性はピタリとそこで立ち止まって、じっとその路地裏に繋がる道を見ていた。周囲の人間より、1つ2つも頭が出ている彼に誰もが1度は視線を向けるが、彼の容姿を見るとサッと視線を逸らす。しかし、男性はそんな周囲を気にすることなく
「今日はここに…あの子はいるのか…」
ポツリと小さな声で呟くと、男性はスタスタとその路地裏に入っていたのであった。どこか嬉しそうにしながら。
男性が足を進めていくと、比例するかのように殴る音はどんどん大きくなっていく。普通の人ならば、この音を聞いては、この場所は危険と察知して逃げるのが正しいのだろう。しかし、男性はそんな音を聞いては、やはり自分の予想は当たっていたのだと満足そうにして頷いて足を進めた。途中、ちらほら気を失って倒れているガラの悪い中学生、高校生を無視しながら。
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