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    oburuta14

    オブルタの絵の練習置き場

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    oburuta14

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    純粋で、純真無垢な王子様の話

    純真無垢な王子様 私とカインは両想いだ。
     お互いに「好き」と気持ちを伝えあって、手を繋いで、それだけで私は満足だった。
     けれど、満足していたのは私だけだったようだ。
     そう思ったのは、城から魔法舎へと戻る夜空からカインが私以外の誰かと腕を組んでどこかの建物の扉へと消えたのを見てしまったときだ。
     魔法使いか否かは魔力でわかる。空から見下ろした城下街、親しみ慣れたカインの気配を感じ飛ぶ高度を降ろせばカインが知らない人物と街を歩いていた。金の髪が美しい人だ。カインが私の知らない人と歩き、私の知らない建物へと消えた。頭がその事実を認識した途端に箒から落ちてしまいそうなほどに心臓が痛み、涙が零れていた。
     カインが私以外の誰かと一緒にいることがこんなにも胸が痛む。私の好きとカインの好きは違ったのかもしれない。本当に好きだったのは私だけなのかもしれない。そもそも、好きだと伝えあっただけで私たちの関係はそれ以上でもそれ以下でもなく、今までと変わらない、中央の国の王子と中央の国の騎士、同じ賢者の魔法使いで、それだけだ。私とカインの関係が変わらないからこそ今こうしてカインは私以外の人と一緒の夜を過ごすのだ。カインは優しいから私を傷つけまいと私の言葉にあわせてくれただけなのかもしれない。私は中央の国の王子で、カインが中央の国の騎士だから。
     この日私は、カインが誰かと一夜を過ごすことに嫉妬したのだ。
    「私は、アーサー・グランヴェルは、カイン・ナイトレイの事が好きだ」
     嘘を付けない心が今まで抱いたことのないような感情を教えてくれた。
     その後どうやって魔法舎に帰ってきたのかは自分でもよく覚えてないが、私は魔法舎の自分の部屋に戻り、寝間着に着替えベッドで横になっており、気が付けば朝になっていた。

     性欲と言うものが私にはよくわからなかった。
     オズ様の城にいた頃はフィガロ様やスノウ様ホワイト様に頭を撫でられるのが好きだった。手を繋ぐ、腕を組む、抱きしめる。そう言った触れ合いは好きだ。頑張ったね。よくできました。気を付けて。と親しい相手を慈しむための触れ合いは心が弾むように嬉しくなり優しさで満たされる。
     だが、性欲は未だによくわからない。
     男の人は私ぐらいの年ごろになると性欲が盛んになるのだという。それは人間の限りある短い生の中で次の子孫を残すための必要なことだと教わった。私は魔法使いで長寿の生き物だからか、その性欲と言うものがまだきていないのか、私は好きな人と一緒にいられるだけで幸せで、手を繋ぐだけで満足だった。
     魔法舎の自分の部屋のベッドで目を覚ました。寝たはずなのに、あまり寝た気がしない。寝不足の時の会議は好きではないけれど今日は会議は入っていない、城に戻れば目を通さなければならない書類が溜まっているだろうが、城に戻るまでには時間がある。ベッドを降り、スリッパを履いてカーテンを開ける。眩い光に目が眩む、雲一つない晴れ渡った空、今日は洗濯日和だと思った。洗濯を手伝って、私のお気に入りの冒険小説を探しに市場に買いに行くのもいいかもしれないと頭の中で今日の予定を組み立てるが、どれもこれも到底そんな気にはなれなかった。
     ネロが作った美味しい朝食を食べ、ミチルやリケたちと洗濯ものを手伝い、カインの部屋を訪ねても部屋の主は不在で、昨日私が見たのが間違えではないのだと教えてくれた。その足で私はオズ様の部屋を尋ねた。
     オズ様の部屋は北の国のオズ様の城を思い出させる。薪がパチパチと燃える暖炉の前にオズ様が一人掛けのソファに座る。幼い頃の私はその膝の上に乗ったり、オズ様の隣で同じようにソファに腰かけ本を読んでいたりもした。今は向かい合う形でソファに座る。
    「オズ様は誰かと情を交わしたくなる夜などございましたか?」
    「……………」
     わからないことは何でもオズ様とともに調べてきた。空の色も、星の輝きも、雨の切れ目も、風の行き先も、私のどんな些細な質問もオズ様はいつだって受け止めてくださった。
    「あっ、いえ、突然あまりにも個人的なことを聞いてしまい申し訳ございません。本当にご質問したいことは別なことなのです………」
    「…………………」
    「あのっ、オズ様は男性同士での性交の仕方をご存じでしょうか?」
     カインが私以外を見るのは嫌だ、私だってカインに愛されたい。私もあの人と同じように腕を組んで街を歩いて、それから、カインにもし性欲があるのならば私が受け止めたい。けれど、私は男同士での性交の仕方を知らない。ならば、学ぶしかないのだ。魔女化した姿で抱かれるのは嫌だった。ありのままの私を受け入れて欲しい。ずっと私の隣にいて欲しい、どこにいくにも一緒に居て、知らない景色を一緒にみたい。それが叶わない願いならば私は諦めよう。けれど、まだカインにこの気持ちを伝えてもいないのに諦めるわけにはいかない。
     欲ばかりが膨らんで、欲張りな自分自身に笑いたくもなったし、泣きたくもなった。
    「アーサー」
    「…はい、オズ様」
     俯いていた顔をあげると、オズ様が困った顔をしてこちらを見ていた。幼い頃私があれが見たい、これが見たいと図鑑を持ってオズ様に強請った時と同じ顔をしている。
     困らせたいわけではなく、一緒に悩んで考えて欲しかっただけなのにと申し訳ないと同時に、いまだに幼い頃と変わらずオズ様の優しさに甘え困らせてしまった自分を恥じた。
    「………………………………」
     オズ様はきっと今言葉を一生懸命に探しておられる。
     私はそれを静かに待ちながら、もうそろそろカインは帰ってきただろうかと窓を見た。朝あんなに青空が広がっていたと言うのに、今にも雨が降り出しそうな灰色の空をしている。そうして暫くするとポツ、ポツと雨が降ってきた
    「洗濯物!オズ様私から相談しておりながら大変申し訳ございません。今にも雨が降り出しそうなので洗濯物を取り込んで参ります」
    「アーサー」
    「私も私なりに調べてみますので、わかりましたらオズ様にもお伝えしますね!」
    「アーサー!」
     オズ様の部屋を出ると、5階から1階へと階段を駆け下り、中庭へと降りる。
     雨ははっきりと目に見えるほど強く線を描くように降り始めた。
    「ファウスト!レノックス!」
     洗濯物を魔法で濡れない場所へとファウストが移動させていた。なにせ21人が生活しているのタオルやその他諸々なので洗濯ものは毎日多く白いシーツが中庭一面に広がる日だってある。
    「洗濯物を取り込んでくれてありがとう」
    「別に、たまたま近くにいただけだ」
    「洗濯物はあまり濡れていないと思う」
     レノックスが急な雨で濡れてしまった羊たちを優しくタオルで拭いていた。白い羊が白いタオルに包まれている姿が愛らしくて笑みが零れる。
    「今日は晴れると思っていたのだが、それにしても急な雨だったな」
    「精霊たちが騒がしい、大方北の魔法使いの誰かがオズの機嫌を損ねたのではないか?」
    「オズ様ならつい先ほどまで私と一緒にいたのだが?」
    「「………」」
     ファウストとレノックスは互いに視線を見合わせたかと思うと、灰色を通りこし黒に近い空を見上げ、ファウストが大きくため息をついた。
    「アーサー、オズと何を話していたか聞いてもいいか?」
    「オズ様と?いや、そんな大した話ではない。私の悩み事を聞いてもらっていたんだ。だがオズ様もご存じないようでまた困らせてしまったのだ…」
    「アーサー様、俺たちでよければ相談にのりますが」
    「気持ちはありがたいが大丈夫だ」
     二人に聞けば答えがわかるかもしれないが、まだ本で調べていない。調べてわからなければ二人にも相談させてもらおうと考えていると、ふらりとミスラが現れた。
    「ルチル知りませんか?あの人昨日からいないんですけど」
     ミスラの問いかけにレノックスが答える。
    「ルチルなら小説の挿絵が完成したから渡しに行ってくると昨日から出かけているが」
    「どこにですか?」
    「中央の市場だとは思うが」
    「はぁ、まったく面倒な人だな<アルシム>」
     ミスラは空間の扉を開けたかと思うと、どこか別の場所へと移動してしまった。
    「なんだったんだ?」
    「雨ですし、迎えにいったのではないでしょうか?」
    「ミスラは優しいのだな。二人とも洗濯物を取り込んでくれてありがとう。私は図書館で調べてくる」
    「おい!アーサー!」
     ファウストとレノックスと別れ図書館に来たのはいいもののどう調べればいいかわからなかった。
     魔法舎の図書室は広い。今までの賢者の魔法使いに選ばれたものたちが残していった本が置かれている。魔法に関するものは多くても恋愛に関する指導書などが置いてあるかもわからない。それでも調べてみなければ始まらないと、図書館の本棚の端からタイトルに目を通していく。途中私の大好きな冒険小説がまとめておかれており、つい探す手が止まる。この冒険小説は最初は中央の国の魔法使いの家を探検していたのだが、今では主人公とともに冒険する仲間も増え西に東に南に北へとあちこちの国を冒険するようになったのだ。その中に出てくる騎士がカインのようでかっこよく、ルチルのような絵描きもとても魅力的な人物で私の最近のお気に入りなのだ。
     私以外にも魔法舎の誰かが好きなのだろうか?それならばこの本について共に語りたいと思いながら、慌てて首を振り再び本を探し出す。自分でも何の本を探しているのかわからないが、それでも再び本を探しだす。時に気になるタイトルに目を通しながら、やっと本棚1つ分の上から下まで目を通し終った時ヒースクリフに声をかけられた。
    「アーサー様何か探している本があるなら、俺も手伝いましょうか?」
    「ありがとう、ヒースクリフ。けれど具体的に何の本を探しているか自分でもわからないのだ」
    「俺もそういう時があります。本を読みたいのに読みたい本がわからなくて、そういう時こうして背表紙に並ぶタイトルたちを見ているとこれだって言うのに出会える時があるんです」
     ヒースクリフが瞳をキラキラと輝かせながら本棚を眺める。その横顔はあまりにも綺麗だった。
    「……アーサー様?」
     どうしましたか?と問うヒースクリスの顔を、髪の色を見ていた。昨夜カインと腕を組んでいた人の顔など空からでは見えなかった。ただ街灯に照らされた金の美しい髪だけが鮮やかによく見えてくっきりとその残照が残っている。相手もヒースクリフのように美しい顔をしていたのだろうか。
    「ヒースクリフ、少し触れてもいいだろうか?」
    「えっ!えっと、どこにですか?」
    「そうだな、手と腕に」
    「それなら、どうぞ…」
     ヒースクリフが差し出してくれた手に触れる。
    「私と変わらないと思っていたんだが、大きいのだな、それに固い」
    「ブランシェット家の嫡男として一通りの武器は扱いますから。アーサー様は爪先まで花びらみたいに綺麗です」
    「お前はごつごつしている」
    「あの、俺も男ですから」
    「知っているよ。私も男だ」
     付け根から指先にそっと触れて撫でる。触れて何かわかるわけでもないけれど、ヒースクリフにこうして触れる機会なんて滅多にないものだからなんだか面白くなってきた。
    「あの、アーサー様?」
    「ありがとう、腕も触れてみていいだろうか?」
    「えっと、どうぞ」
    「ふふふ、ありがとう。あぁ、そうだヒースクリフ知っていたら教えて欲しいのだが、ここの冒険小説は誰が置いてくれたのだ?」 
     腕を組んだままお気に入りの冒険小説が並べられている棚を示す。
    「この冒険小説ならカインです。俺も運ぶのを手伝いましたからよく覚えていますよ。アーサー様のお気にいりなんですよね?」
    「カインが揃えてくれたのか!?」
     カインは私の誕生日の時にも私が気になっていたり、欲しいなと思っていたものをプレゼントしてくれた。カインは優しい。
     やはり男同士での性交の仕方を調べなければと思った。カインは優しくカッコいいから、性欲が溜まった時に解放するのを手伝ってくれる人は沢山いるかもしれないが、その欲を私にも見せて欲しい。私はカインのことが好きで、カインも私のことが好きならば、その相手は私だっていいはずだ。その為にも男同士での性交の仕方を知る必要がある。
     パッとヒースクリフの腕を離した。
    「ヒースクリフありがとう。もう少し探してみることにするよ。私も少しでもカインの力になりたいのだ」
    「カインのですか?」
    「あぁ!」
    「あのっ、俺に手伝えることがあったら言ってください。俺も手伝いますから」
    「ありがとう。その時は頼りにさせてもらうよ」
     雨は強く激しくなり、雷も鳴り始めたが、それは私にとっては頑張れと応援されているような力強く元気がでるものだった。

     結局図書館では本は見つけきれず私は一度部屋に戻ろうと図書室を出た。
     濡れないように屋根の下へと動かした洗濯物をリケとミチルが魔法で風を出して乾かそうとしているので、私もそれを手伝った。途中クロエとラスティカもきて歌い踊りながらシーツを乾かすのはとても楽しかった。真っ白なシーツと手を取り合い踊るのだ。激しい雨音がワルツの音楽でリケとミチルがラスティカの魔法でくるくると回る姿が愛らしかった。
     歌い踊り小腹が空いた私たちは食堂へ向かい夕食の下準備を手伝いながら、ネロがつくるおやつを待った。甘めのポップコーンはコーンが弾ける音が賑やかで、そして美味しかった。
     そうして私は結局男同士での性交の仕方がわからないまま城に戻らなければならない時間が近づいてきた。夜から城での会食があるのでそれまでには戻らなければならない。今日は雨が強いので箒ではなく塔のエレベーターを使った方がいいかもしれない。それなら少し早めに戻って城の図書室で探してと、頭の中でこの後の予定を組み立てていると自室がノックされた。
    「アーサーいるか?」
     カインの声に私の心臓が口から飛び出すかと思った。まだ何も準備が出来ていない。
    「あっ、あぁ」
    「ちょっといいか?」
    「どうぞ」
     片手に本を持った練習着姿のカインが部屋に入ってくる。今日初めて私に会うのでカインには私の姿が見えていないはずなのに真っすぐにこちらを見てくる。
    「アーサー、手を」
     ダンスを誘うように手を差し出され、私はそっとその手に重ねる。私よりも大きくて、剣を握るが故のごつごつしと固くて、そして温かい手だ。
    「今日やっとあんたに会えたのにもう城に戻るのか?」
    「カインは昨日から魔法舎にいなかった」
    「あぁ、そうだ。これをあんたにプレゼントしたくて来たんだ」
     カインは持っていた本を私に差し出した。それは私の大好きな冒険小説で、初めてみる題名だった。
    「ルチルと市場に行った時たまたまこの作者と出会ってさ、その縁で今回ルチルが挿絵を描いたんだ。本当は昨日完成してたんだけど完成祝いにルチルたちと酒を飲んで遅くなってしまって、そのせいで今日あんたに会うのが遅くなった。もっと早く帰りつもりだったんだけど雨が酷くてさ、この本も濡らしたくないしって困ってたらミスラが丁度来てくれて―――」
     本を受け取るでもなく私はぎゅつとカインに抱き着いた。歓びが溢れでる。
    「アーサー?嬉しいけどどうしたんだ?何かあったのか?」
    「すまない。私はてっきり昨日カインが誰かと情を交わしたと思っていた」
    「情を交わす?俺が?誰と?」
    「昨夜お前が金の髪の誰かと腕を組んで歩いているのをみて、男には性欲が我慢できない時があると教わったから、カインも誰かと情を交わしたのかと思ったのだ」
    「金の髪ってルチルじゃないか?確かに腕を組んで酒場を移動していたから」
    「お前の魔力の気配しかわからなかった」
     勘違いしたのを恥じるように、言い訳するようにカインの胸元にぐりぐりと頭を押し付ける。
    「嫉妬してくれたのか?」
    「あぁ、嫉妬した」
    「っ………」
    「どうして私が相手ではいけないのかと思って、今日一日男同士での性交の仕方を調べていた」
    「アーサー!?」
     今日はよく驚きとともに名前を呼ばれる日だ。
    「誰かに聞いたりしたか?」
    「オズ様にはお尋ねしたが、その前に本で調べようと思って図書室で調べてみたのだがまだ見つけられていないのだ」
    「あぁ、どおりで雨が降りやまないわけだ」
    「ん?」
     どうしてそこで雨と繋がるのかわからず、顔を上げる。そこには困ったような、複雑な表情を浮かべたカインの顔がすぐ近くにあった。
    「アーサー、俺はあんたが好きだ。あなただけを愛している」
    「私だってカインの事が好きだ」
     私の正直な気持ちを伝えたはずなのにカインはやはりどこか困った顔をしていて。それから私の背中に手をまわし、強く抱きしめる。カインの温もりが感じられて嬉しい。
    「カイン?何かポケットに入れているのか?固くて熱いのが私の腹部に当たっているのだが」
     カインは溜息こそつかなかったが、何かを我慢するようなとても重たい息を吐き出した。
    「あんたが、これが何かわかった上でそれでも男同士での性交の仕方が知りたいと思えたら、俺が教えるから、だから、どうか、他の誰かに聞いたりしないでくれ」
    「??わかった。だが、調べるのは構わないだろうか?」
    「それくらいなら」
     何があるのか観察しようと、抱き着くのをやめ離れようとするのだがカインの腕がそれを許さない。
    「明日また魔法舎に戻ってこれるか?」
    「あぁ、遅くなるかもしれないが」
    「もし、明日も雨が降っていたらなるべく早く魔法舎へ戻ってきてほしい」
    「わかった。何かあるのか?」
    「一緒にオズに会いにいこう」
    「オズ様にか?わかった」
     城に戻るためにカインが塔まで見送ってくれた。魔法石を入れエレベーターの到着を待つ。普段はこのあまり早くないエレベーターが好きではなかったが、今日だけはゆっくり来てくれるのが嬉しかった。
    「カイン。遅くなったがおかえりなさい。そして素敵なプレゼントをありがとう」
    「こちらこそ帰りが遅くなり申し訳ございません。ただいま戻りました。貴方に喜んでいただけましたらこれ以上嬉しいことはございません。どうかお気をつけて」
    「あぁ、行ってきます」

     エレベーターが閉まり動き出す。
     カインが男同士での性交の仕方を教えてくれると言ったがそれでも自分でもう一度調べてみようと思った。情を交わすの別の言い方が性交だと本には書いてあったが、そもそも私は性交が何をすることなのかもわかっていないのだ。まずはそこから辞書を引いてみよう。
     少しだけ前進したことがこんなにも喜ばしい、今ならこの後の政務にも力を入れて頑張れそうだった。
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    oburuta14

    DONE純粋で、純真無垢な王子様の話
    純真無垢な王子様 私とカインは両想いだ。
     お互いに「好き」と気持ちを伝えあって、手を繋いで、それだけで私は満足だった。
     けれど、満足していたのは私だけだったようだ。
     そう思ったのは、城から魔法舎へと戻る夜空からカインが私以外の誰かと腕を組んでどこかの建物の扉へと消えたのを見てしまったときだ。
     魔法使いか否かは魔力でわかる。空から見下ろした城下街、親しみ慣れたカインの気配を感じ飛ぶ高度を降ろせばカインが知らない人物と街を歩いていた。金の髪が美しい人だ。カインが私の知らない人と歩き、私の知らない建物へと消えた。頭がその事実を認識した途端に箒から落ちてしまいそうなほどに心臓が痛み、涙が零れていた。
     カインが私以外の誰かと一緒にいることがこんなにも胸が痛む。私の好きとカインの好きは違ったのかもしれない。本当に好きだったのは私だけなのかもしれない。そもそも、好きだと伝えあっただけで私たちの関係はそれ以上でもそれ以下でもなく、今までと変わらない、中央の国の王子と中央の国の騎士、同じ賢者の魔法使いで、それだけだ。私とカインの関係が変わらないからこそ今こうしてカインは私以外の人と一緒の夜を過ごすのだ。カインは優しいから私を傷つけまいと私の言葉にあわせてくれただけなのかもしれない。私は中央の国の王子で、カインが中央の国の騎士だから。
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