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    oburuta14

    オブルタの絵の練習置き場

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    oburuta14

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    カイアサすごろく会で話していた、アーサー宛てのラブレターを燃やすカインの話。
    オズ様視点のカイアサです。

    #カイアサ

    ラブレターを燃やす話精霊が喜んでいるのをオズは感じていた。
    目に見えているわけではないが、肌に纏わりつくように精霊が喜び踊っている。
    中央の国の精霊らしく、中央の町の復興を手伝った魔法使いたちに喜んで力を貸し与え、もっと使役して欲しいと騒いでいるのだ。
    「――――………ん」
    瓦礫にしたことは幾千あれど、壊れたものを復元することなどかつての私にはなかったが、アーサーに魔法を教えるようになってからは幾度となく使用した。
    箒の練習で部屋のあらゆる所に飛んで行き、窓が閉まっていることなどお構いなしに外に飛び出す。治癒を魔法を人に使うのもアーサーが初めてなようにも思える。
    「―――すみません!!」
    声に反応してオズはゆったりと目線を下げた。
    アーサーと同い年ぐらいの人間が目の前に立っている。
    リケと同じ色の瞳と髪色を持つ人間の女だ。
    何故私の前に立つのか?
    幼い頃のアーサーもこうして私の前に立っては両手を広げてギュっと抱き着いてきたり、森で拾ったどんぐりを見せに来ていた。
    「あのっ、すいません」
    先ほどよりも抑えめな声で見上げてくる。
    「………私に何か用か」
    「あのっ、これをあの方にお渡しください!!」
    オズに物怖じすることもなく一通の手紙を押し付ける。
    それをオズはやはり幼い頃のアーサーを思い出させ受け取っていた。
    少女は手紙を押し付けると走り去り、遠巻きに二人を見ていた少女たちの輪の中に紛れ遠ざかっていった。
    「オズ、どうしたんだ?」
    名前を呼ばれオズは振り返る。
    カインが立っている。軽く手をあげ私に笑顔を浮かべながら。
    「手紙を預かった」
    「預かったってことは、あんた宛てじゃないのか?」
    「私宛てではない」
    「見てもいいか?」
    カインに手紙を渡すと、オズは当初の目的でもあるアーサーとリケが休んでいる町の広場へと向かう。小さな村を歩きながらオズはふと、アーサーとカインが『付き合っている』と報告しに来た時の事を思い出していた。

    魔法舎の私の部屋で大事な話がありますと訪れた二人は私を前にして『付き合って』いるのだと話始めた。相手のどこが好きなのか話す姿は幼い頃と変わらず「うさぎをは白くてふわふわしていて好きです。オズ様も触って下さいと」好きなものをよく私に話していた。
    アーサーに言われなければオズはうさぎに触れることなどこれから先もなかっただろう。
    相手のどこが好きなのか、これからのことなどを一通り話終えた二人が真っすぐにこちらを見つめてくるので、オズは二人の頭を撫でることにした。昔そうしていたように。
    「オズ様!?」
    「オズ?」
    「己を守れるほどに強くなることだ、そうでなければ大事なものを守れない。弱いだけの群れに意味はない」
    「この剣に誓ってアーサーを守り、一人にさせたりはしない」
    「はい、オズ様。これからもどうかご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」

     小さい町であるので、すぐにアーサーとリケの元に辿り着く。
    「オズ、カインと一緒ではないのですか?」
    リケが見上げてくる。つい先ほど同じような光景を見たばかりだとオズは思った。
    「カインにオズを迎えに行くようにお願いしたのですが、何故一緒に戻ってこないのですか?」
    オズは返事をするよりも前にカインの魔力を探る。
    カインともう1つ魔力を感じる。ざわざわと精霊たちが騒ぎだす。カインが魔法を使っている。
    中央の国の精霊たちがカインにばかり力を貸すのはここが中央の国であることは勿論だがどうやらカインが対峙している相手を精霊は嫌っているようである。
    (精霊が魔法を使っているカインの気に引っ張られている)
    「オズ、僕の話を聞いていますか?」
    「聞いている」
    「もう、それならちゃんと返事をしてください」
     怒るリケの隣にアーサーが並んだ。
    「オズ様、リケ、皆でカインを迎えにいきませんか?」
    「はい、アーサー様。オズ、今度はオズがカインを迎えにいきますよ」
     魔力の気配はカインだけのものになっていた。

    カインはすぐに見つかった。リケにどこに行っていたのかと怒られながら、リケの頭を撫で回し更に怒られている。つい先ほどと変わらないようにも見えるが周囲の精霊が騒がしい。
    「………」
    「オズ、いい酒を貰ったんだ帰ったら一緒に飲まないか?」
     私に酒を誘うのはかつてはフィガロぐらいであったが、今ではカインと酒を飲む回数の方が多くなった。
    「オズとカインばかりずるいです」
    「ならば私たちはココアを飲むのはどうだろうか?」
    「やった!」
    「では帰ったらオズ様の部屋に皆で伺いますね」
    「………好きにするといい」

    魔法舎に戻り、私の部屋に一番に訪れたのはカインであった。
    持ってきた酒瓶をテーブルの上に置き、それから手紙を取り出した。
    「この手紙アーサー宛てだから俺に渡したのか?」
    「アーサー宛てだったのか?」
    「アーサー宛てだった」
    「アーサーに渡すのか?」
    「アーサーに渡す必要はない」
    断言する鋭い口調にオズはフィガロを思い出していた。
    アーサーに関することとなると、この中央の国の魔法使いを体現したような男も時に北の国の魔法使いのような顔を見せる。
    カインは暖炉に近づくと手紙を燃やす。オズの魔法で出来た炎は手紙を一瞬にして灰にした。
    その灰をカインは冷たい目で見ていた。
    「何が書かれていた」
    オズは己の口から無意識に零れ落ちた言葉に自分自身で驚いていた。手紙を押し付けられた時は何一つ興味がなかったと言うのに。
    カインが灰から顔をあげ、視線をオズに向ける。
    「ラブレター」
    「………」
    「さ、もう少ししたらアーサーとリケも来るだろう。俺たちはお菓子でも準備して待ってようぜ」
    カインが笑顔を浮かべ、オズの部屋の書き物机の引き出しをあける。
    オズの部屋の唯一の棚とも言える書き物机の引き出しは、いつの間にかアーサーたちとお茶会をする時の引き出しとなっていた。
    市場で買ったお揃いのカップ、スプーン、お気に入りの茶葉などが収納されている。
    アーサーは自らお湯を沸かし魔法を使わずお茶を準備するのを好んでいるからだ。
    オズは暖炉を見ていた。それから灰を炎ごと煮え立つ溶岩の中へと魔法で転移させ新たな火をつけたのだった。


    end






    別の日、授業内容について話していたファウストにラブレターとは質問をし、ファウストを困惑させるオズがいたとかいなかったとか
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    oburuta14

    DONE純粋で、純真無垢な王子様の話
    純真無垢な王子様 私とカインは両想いだ。
     お互いに「好き」と気持ちを伝えあって、手を繋いで、それだけで私は満足だった。
     けれど、満足していたのは私だけだったようだ。
     そう思ったのは、城から魔法舎へと戻る夜空からカインが私以外の誰かと腕を組んでどこかの建物の扉へと消えたのを見てしまったときだ。
     魔法使いか否かは魔力でわかる。空から見下ろした城下街、親しみ慣れたカインの気配を感じ飛ぶ高度を降ろせばカインが知らない人物と街を歩いていた。金の髪が美しい人だ。カインが私の知らない人と歩き、私の知らない建物へと消えた。頭がその事実を認識した途端に箒から落ちてしまいそうなほどに心臓が痛み、涙が零れていた。
     カインが私以外の誰かと一緒にいることがこんなにも胸が痛む。私の好きとカインの好きは違ったのかもしれない。本当に好きだったのは私だけなのかもしれない。そもそも、好きだと伝えあっただけで私たちの関係はそれ以上でもそれ以下でもなく、今までと変わらない、中央の国の王子と中央の国の騎士、同じ賢者の魔法使いで、それだけだ。私とカインの関係が変わらないからこそ今こうしてカインは私以外の人と一緒の夜を過ごすのだ。カインは優しいから私を傷つけまいと私の言葉にあわせてくれただけなのかもしれない。私は中央の国の王子で、カインが中央の国の騎士だから。
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