さてどうしたものか、と思案する。
「何をしている公子殿。冷めてしまっては勿体ないぞそれに箸も使わんと上手くならないだろう」
全くどうして羨ましい。こんなに幸せそうに物を食べるなんて。そんなことはさておいて、とても気になることが一つ。問いただそうと思っている。
「えタルタリヤって鍾離とご飯食べてるのかいいないいなおれも行きたいぞ」――蛍とパイモンに質問した時だった。ただ俺は、他に誰と飯に行ってるのかと思って聞いただけだった。…ちょっとした嫉妬心だ。でもそれは違ったようで「そんな岩王帝君と食事だなんて畏れ多いです」なんて甘雨ちゃんには言われたくらいにして。
そう、モラクス、岩神、岩王帝君、そんな仰々しい名前で呼ばれるようなこの自称凡人が、俺なんかと飯を食っている。――まぁそんなヤツに淡い恋心持ってるヤツもどうにかしてるけど――なんて心で苦笑う。
「ねぇ、何で俺としか飯食わないの」と思いきって聞いてみると、「何故だろうな」と箸を咥えたままさらりと答える。「え」「ん」とお互い頭に疑問符が。
「ほら、蛍ちゃんとかさ。誘えばいいのにって。」頭のなかで頭を抱える。そんな言い方したら嫌がってるみたいじゃん。
「…皆忙しいからな」「俺も忙しいんですけど」
今日も討伐終わり次第走ってきましたけど
「でも、お前は来てくれるだろう」
「そ、れは、さぁ…」
ずるいなぁ。全て見透かしたように笑うんだから。
「ふむ、しかしそう言われると確かに不思議だな」そう少し考えたように見せて、ふとイタズラな笑みを浮かべ「公子殿と話していても何も得る物は無いのだがな」なんて宣う。
「ちょっ酷くない俺傷付くよ傷付いたよ」
はははと笑われて心底不愉快だ。それなのに「楽しいんだ、お前といるのが。」なんて、すぐご機嫌にされるんだ
ねぇ、先生と、ふと顔を見上げると先程とはうって変わって真面目に何かを思案している表情だ。
なんて、整った顔をしているんだろう。なーんて見とれていたのもつかの間
「すまない公子殿。今日は、御開きにしよう」
「んぇ何だよ急にさぁ」
「…すまない」
そう言って足早に過ぎ去る顔が、少し赤らんでいたような気がして、
「…んだよ急に凡人くさい顔しやがって。」
俺の顔も赤くなる
一人残された部屋で天井を仰ぐ
「あー、またモラ払ってないじゃないかー。俺は財布かっての」
そんな悪態を付きながらも、どこか限りなくゼロであったはずの可能性に光が見えたような気がして、
「次は奢ってもーらお」
次に会うのが楽しみだ、なんて
そんな贅沢な気持ちになってしまったんだ