【冰九】嫉妬冰哥と×社畜沈九 冬。寒い。帰宅直後の九はひたすら疲れていた。今すぐ寝たいが、風呂にも入りたい。そこばかりは譲れん。だが、腹立たしいことに、この睡魔は強敵すぎる。ついでに視界に入ったムートンラグ。あいつのふわふわでフカフカな長毛があまりに魅力的だ。思わぬ援護射撃についに降参。
少しだけ休んでから風呂入って寝ることにした。絶対起きれる自信はある。特に根拠もないが。
暖房のきいたリビングで、愛用の電気毛布を引っかけて長毛ラグの上に寝転がれば、一瞬で意識が飛んでいった。
「ちょっともう、どこで寝てるんですか?!!」
深夜。リビングに残っていた九を見て、もしかして帰宅を待って(寝落ち)てくれたりしたのか?!なんて一瞬期待したが、床に転々と落とされていったスーツから、いやこれは行き倒れていったのだ、と正しく推理する哥。ほぼ正解。
「風邪ひきますよ!」
低く唸りながら九は眉を顰める。夢うつつでラグの深い毛並みの中に片耳を埋めていく。ついでに毛布を頭のてっぺんまで被った。
うるさい奴が早足に近づいてくる。年中無休でうるさい奴だ。
「ちょ、しかもこれ、コンセント刺さってないじゃないですか!!」
毛布越しに矢継ぎ早に小言をぶつけくる。いらん世話だ。本当によく回る口だ。
寝ている人には気を遣えと教わらなかったのか?
この絶妙なラグへの埋もれ具合と毛布のかかり具合に、九は身体を起こすはおろか、目を開くのすら億劫で仕方がない。
「起きて下さいって!!ベッドで寝ましょう!?」
「う゛」
哥にしては珍しい、文字通りの意味の“ベッドで寝よう”だというのに、それもすげなく一蹴される。九は丸まった姿勢で毛布から髪の先だけ出して、顔すら見えない。
肌触りの良いものを好む九を思って、意気揚々と買ったのだというのに、ぎゅうと抱きしめられる毛布も、頬を押し続けられるラグも、哥にはなんだか面白くない。
ずるい。ずるいな。
ふわふわの中に蕩けてる九と、ラグと電気毛布に対して、また意味の分からない嫉妬と村々する話。長毛ラグはクリーニングに出せたし、電気毛布は洗濯機対応だったから、2回目も多分ある。